目標に向かって真っすぐ進む“武士” 三宅竜一郎さん
週刊ゴルフダイジェスト8月4日号に掲載されている2人の片麻痺ゴルファー。自分らしく“ゴルフを愉しむ”日々を送っているスーパーシニアですが、そのためにどのような生活を送っているかを聞きました。
まずは、毎週末の朝練を欠かさず行う“練習の虫”こと、三宅竜一郎さん。脳出血で倒れて今年の11月で丸4年になり、同月には60歳の誕生日を迎えます。病気をする前から勤めてきた食品会社も、ちょうど定年の節目を迎えるといいます。
「今も雇ってもらっているのですが、この体でできることって限られているし、無理やり仕事を作ってもらっているような面もあるので、ここで一区切りつけようと思います」
こういう人物はきっと、企業にとっては貴重な戦力なのだろうと思います。
「年金と障害保険で慎ましく暮らしていこうかと。でもゴルフは続けていきたいですね。ずいぶん昔は、ゴルフよりパチンコのほうがいいと思っていたけれど、ゴルフを始めたら、そちらにお金をかけたほうがいい、道具を買ったほうがいいと思うようになりました。もったいないお金の使い方をしていたんだなあと思いますよ。今、僕がお金を使うことは、ゴルフ関係か音楽関係です」
三宅さんにはゴルフ以外にも趣味があります。学生時代から忌野清志郎が好きで、ライブも好き。
「忌野清志郎の周りにいた人たちのライブツアーをブッキングするボランティアをやっています。ザ・ニーサンズというバンドです。ドラムの大嶋健司さん、わかりますか? 名古屋でやるときにライブハウスみたいな場所を探したり。大変だけど好きでやっています。音楽を聴くのが好きなんです。ギターも少し弾いていたんですよ。そのギターは、弾き語りが好きな長男の嫁に全部あげました」

三宅竜一郎さん。目標に向かってコツコツ真っすぐ進む姿は、“武士”を彷彿とさせます
さて、日々の生活に関して、どんなところに気をつけているのでしょうか。
「好き嫌いがないので特に気をつけていることはありませんが、たばこは止めて、お酒はお医者さんとも話して決めた月曜日の休肝日を守っています。火・水・木は350mlのビール1缶だけ。大好きな焼酎は週末しか飲まないようにしています。21時には寝室に行き、22時から朝4時まで6~7時間の睡眠はしっかりと取ります」
ゴルフに一生懸命に取り組む三宅さんは、クラブも好きで、自分に合う安いクラブを探したりすることも楽しみの1つだそう。
「一番悔しかったのは、病気になる半年くらい前にそろえた三浦技研のいいアイアンが使えなくなったこと。だんだんいい感じに打ててきていたのですよ……。でも、今の自分には難しくなって、家にあります。高かったですけれどね。次男坊が、本当にゴルフを好きになって、『ほしい』と言ったらあげようかなと。自分がもう一度使える日がくるかもしれないですしね」

家族やクラブを大事にする三宅さん。「本当に感謝しています」。周りは、三宅さんの真摯な姿勢を見て応援してくれるのでしょう
今は、試打をして自分にマッチしたブリヂストンのBX2HTを使っています。
「定年したら一式買おうと思っていたんだけど、昨年の秋に1年早く買っちゃった。僕の場合は、“軽・硬”系が合います。こんな体になっちゃったけど、ゴルフは本当に好きですね。全然飽きません」
今の自分を受け入れ、自分に合うものを探し、合わせる努力を“愉しむ”。ゴルフ上級者としての要素が詰まっている日々なのです。
自分の行動で引き寄せる“グリーン上の哲学者” 櫻田新児さん
さて、常に周りを笑わせようとするサービス精神旺盛な櫻田新児さん。8年前の5月、63歳になる2日前に脳梗塞で倒れました。
ままならぬ日々。それでもいつも明るいのは元来の性格か聞くと、「僕は他者とあまり関わりたくないほうで、小さい頃から家の中で静かにコーヒーを飲んでいたいタイプなんです。自己顕示欲なども一切なかったんですよ」と意外な答えが返ってきました。

櫻田新児さん。好奇心を持ち、柔軟に思考し、冒険する。まさにグリーン上の哲学者です
「兄貴が昨年糖尿病で足を切断しましたが、僕よりあっけらかんとしてくよくよしてない。櫻田家のDNAはレジリエンス(回復力)が非常に高いのかな。おふくろも裕福でないのにネガティブではなかったし、96歳まで生きた祖母も伊達藩のお嬢様だったけれど、あっけらかんとしているタイプだったし」と質問の答えにもいつも多くの情報を入れてくれる櫻田さんなのです。
自動車部品会社で広報誌の編集・制作を長くやってきただけあり“アイデアマン”。仕事を通しても人を楽しませる気持ちが培われてきたのだとわかります。
「興味が発火点となって、どんどんそちらに動いていくのです。会社に入ってすぐ、わけもわからず社内報をやれと言われて、印刷屋のおばちゃんにいろいろと教えてもらいながら従業員の人たちを取材していると、モノづくりしている会社にはいろいろな背景を持った人がいて、1つのモノを作り上げていっていることがわかった。なかなか面白いじゃん! と。それに、読んでいる人たちから反響が届くんですけど結局、社長など偉い人の話よりも、もっと身近な話、社員食堂のおかずがまずかったとか、今月のクイズは面白いとか、隣の部署のAさんが結婚したとかのほうが興味深いんだとわかってきた。そこからは、会社の方針を三分の一、身近なニュースを三分の一、残りは娯楽、そういうボリュームでつくるようにしました。自分の人生もそのように考えて歩むといいと思っています」
確かに、櫻田さんのゴルフを見ていると、試合に真剣に向き合い、自分のゴルフ上達のための発見と努力を怠らず、当日は同伴競技者やキャディとの会話を楽しむ、こういったバランスで取り組んでいることがわかります。
リハビリにも積極的。磁気治療を年に2回しっかり行います。
「リハビリ難民になるから、先生に聞いて探したんです。何とかよくしたいというのが根底にあるかもしれないけど、ほとんど興味本位ですよ。興味がなけりゃ生きてる価値がない」
さて、日々の生活で気をつけていることを聞きましょう。
「6時間半は睡眠を取り、3食バランスのよい食事を、特に朝になるべくいろいろなものを食べます。たばこは吸わない、お酒は週に1度350缶ビール1本程度です。食事の内容は、白米ではなく麦を入れたり、なるべく魚や野菜を多く食べる。特にトマトとブロッコリーは体にいいし、血液サラサラになるのは玉ねぎですよ。やはり昔は血圧が高かったですからね」
こちらも自分で情報をいろいろと調べて行動しています。
「胃腸を大切にするためには夜にヨーグルトを食べるといい。便通がよくなります。毎日便通と薬を飲んだかどうかをカレンダーにチェックする。そして、手帳には年間計画や預貯金管理などのデータを記録しています」
週1回、作業療法士さんが家に来てストレッチなどを行い、週3回のインドアゴルフの練習が終わった後は必ずマッサージをしてもらいに行っているのだとか。自分でしっかり組み立てて生活しているのです。

ワールドカップにて。人生を精力的に楽しめるのは、興味と準備と実行力があるからこそ。その集大成として、本も出版しました!
気になる“お金面”は、「障害年金、企業年金、個人年金、投資活動、産業カウンセリングのアルバイト料で、今のような生活は十分にできます。ゴルフも無理なくやっていますよ」
先日は、サラリーマン時代に通った大学院のキャリアカウンセリングの仲間と、ワールドカップの日本対スウェーデン戦をアメリカに見に行ったそうです。
「面白かった。『ダラスの熱い日』。ですよ(笑)。そこで偶然、紀伊国屋ロサンゼルス店の方にお会いして、僕の本をお店に置いてもらうお願いもしたんですよ。まさに、クランボルツ先生が言う“計画的偶発性理論”です」
キャリアの約8割は予想しない偶然によって決まる。しかし、その偶然はただ待つのではなく、自らの行動で引き寄せること――まさに櫻田さんの人生そのものです。
「行動ありき!」の櫻田さんですが、必ずしもプラン通りには運ばないそうです。
「到達目標が100としたら、50、60でOKみたいな感じですよ。でも人間って欲張りだから、ちょっとできると、もっとできたんじゃないかと思うでしょ。ゴルフも同じ。グリーンに乗ればOKなのに、もうちょっと寄せられたなんて思いますから」
櫻田さんの日々を愉しむ“計画的偶発性”を見習ってもいいかもしれません。
PHOTO/Yasuo Masuda、本人提供


