絶対的な安定感と驚異のパーオン率

高いパーオン率を誇る山下美夢有
強風に多くの選手がスコアを落とす中、最終日の山下は前半9ホールをすべてパーで凌ぎ切り、この日のボギーをわずか1つ(10番)に抑え込んだ。さらに、最終18番(パー5)をきっちりバーディで締めくくって「71」を記録している。
予測不能な風と硬いフェアウェイは、今週多くの選手のスコアと平常心を乱した。山下自身も、グリーン上については「ちょっと読みとタッチが、噛み合わなかったですね」と素直に反省点を口にしたが、スコアメイクの要(かなめ)となるショット面に関しては、確かな手応えを掴んでスコットランドの地を歩いていた。
「コースは難しかったですけど、『こういう風の時はこういう感じで打ったほうがいいのかな』といったスピンのコントロールなどは、練習通りにプレーできたかなと思います」
この言葉を裏付けるのが、最終日の圧倒的なスタッツだ。
● 最終日パーオン率:18ホール中14ホール(約77.8%)
● 4日間パーオン率:53/72(約73.6%)
大会平均254.5ヤードという飛距離で力任せに攻めるのではなく、的確なアイアン技術とスピンコントロールで強風を攻略したことが、この客観的データから見事に証明されている。強風に煽られることなく弾道を低く抑え、スピン量を的確にコントロールしてピンを刺す。それを実戦の極限状態、しかもリンクスの強風下で「練習通りに」やってのける技術力こそが山下の真骨頂だ。
世界1位コルダとの鮮烈な対比
今週は、いよいよ今季の米女子メジャー最終戦「AIG女子オープン(全英女子)」が開幕する。世界ランキング1位に君臨するネリー・コルダは、スコットランド女子オープンでの経験を「(全英に向けた)最高の準備になった」と語る一方で、リンクス特有の技術について次のように明かしている。
「グリーンに向けて転がしていく低い球を打つよう努めている。普段はあまり打たないショットだから、練習すればするほど良い」
世界女王のコルダでさえ「これから練習を積まなければならない特別な技術」を、山下はすでに今週の過酷な実戦の中で「練習通りにスピンコントロールできた」と平然と語っているのだ。この鮮烈な対比が、山下の技術の凄みをより一層際立たせている。
王者としての重圧と、フラットな楽しみ
山下にとって次週のAIG女子オープンは、自身が「ディフェンディングチャンピオン」として迎える、キャリアにおいても極めて特別な一戦となる。
メジャータイトル防衛という途方もない重圧が両肩にのしかかるはずだが、大一番を目前にした彼女のメンタルは、驚くほどフラットで自然体だ。
「ディフェンディングチャンピオンとして迎える大会なので、すごい楽しみでもありますし、コースもすごい難しいとは思うんですけど、上位を目指して頑張りたいなっていうふうに思います」
そこには気負いや力みは一切感じられない。ただ純粋に、世界最高峰の難しいセッティングに己の技術で挑むことを楽しみにしている。チャレンジャーの無垢な心を忘れないその精神状態こそが、彼女が常に世界のトップで戦い続けられる理由なのだろう。
研ぎ澄まされた技術と、気負いのないフラットなメンタル。万全の準備を整えた若きディフェンディングチャンピオンが、再び世界の頂点に立つ瞬間への期待は、これ以上ないほどに高まっている。
写真/大会提供
