PGAツアーのレギュラーシーズンもいよいよ大詰めを迎える中、「ロケットクラシック」の舞台となるデトロイトゴルフクラブ(ノースコース)。過去1年間、実に1610万ドル(約24億円)という巨費を投じて行われた大規模な修復工事により、コースは劇的な変貌を遂げた。伝説的設計家ドナルド・ロスの本来のビジョンを復元することを目的としたこの改修で、従来の「パー72」から「パー70」へと引き下げられ、これまでスコアを伸ばす絶好のチャンスだった7番と17番のパー5が、距離の長いパー4へと変更された。2019年の第1回大会以降、歴代の優勝者7人全員が「パー5のスコア」で全体トップ10に入るほど「パー5でいかに稼ぐか」が絶対条件の大会で、スコアの稼ぎ頭だった2つのホールが過酷なパー4に変わったことは、「バーディ合戦」から「タフなサバイバル」へと完全に変わったことを意味する。

トッププロたちの証言と「パー4巧者」の自信

画像: 全英オープンでは最終日に伸ばし、単独2位に入ったキャメロン・ヤング

全英オープンでは最終日に伸ばし、単独2位に入ったキャメロン・ヤング

開幕前の練習ラウンドを終えたトッププロたちの口からは、美しく生まれ変わったコースへの賛辞とともに、確かな「警戒心」が漏れ聞こえてくる。

直近の「全英オープン」で単独2位に入り、現在フェデックスカップランキング3位につけるキャメロン・ヤングは、「視覚的に以前よりはるかにドラマチックになった。昔ながらの北東部のゴルフ場の雰囲気で、とても気に入っている」と語る。

しかし、難化したコースレイアウト、特にパー4へと姿を変えた17番については表情を引き締めた。

「ティーショットはターゲットが絞りづらく、視覚的にプレッシャーがかかる。完璧なティーショットを打っても、セカンドで5番アイアンを持たされるような、まさに『モンスターホール(beast of a hole)』だ。あの2つのパー5がパー4になったことで、大会全体のスコアは確実に落ちるだろうね」

その一方で、ヤングは今大会の出場選手のなかで、パー4でのストロークゲインドがトップという「パー4巧者」でもある。「自分はツアーで一番飛ばすわけではないが、トータルドライビング(飛距離と方向性の総合)が良い。長いパー4でポジションを外さないことが最大のアドバンテージになる」と自己分析しており、ただ警戒しているだけでなく、密かに自信を覗かせている。

シャウフェレの「初陣キラー」属性

画像: 「初陣キラー」のザンダー・シャウフェレがロケットクラシックも制すか

「初陣キラー」のザンダー・シャウフェレがロケットクラシックも制すか

今大会が初出場となるメジャー2勝のザンダー・シャウフェレも、コースの変貌を鋭く分析する。

「フェスキュー草とバンカーのコントラストが本当に美しい」と景観を称えつつも、「過去の大会をテレビで見ていて『ロースコアの戦い』という印象を持っていたが、今年はあの時のような戦いにはならないだろう。向かい風になるタフなホールもいくつかあり、素晴らしいチャレンジになる」と、よりシビアなマネジメントが要求されることを示唆した。

今季、スコッティ・シェフラーと共にメジャー全4大会すべてでトップ20入りを果たしたわずか2人のうちの1人であるシャウフェレ。さらに彼には、PGAツアーにおいて「自身初出場の大会」で過去に3度も優勝(直近は2022年ジェネシス・スコットランドオープン)しているという不気味なジンクスがある。初めてのコースに対する異常なまでの適応力の高さは、他の選手にとって大きな脅威となるはずだ。

飛ばし屋有利か? 前回覇者の余裕

画像: 圧倒的な飛距離のアドバンテージを誇るディフェンディングチャンピオンのアルドリック・ポトギーター。連覇なるか

圧倒的な飛距離のアドバンテージを誇るディフェンディングチャンピオンのアルドリック・ポトギーター。連覇なるか

コースが牙を剥き、多くの選手がスコアメイクに頭を悩ませる中、この“超難化”を誰よりも歓迎している男がいる。ディフェンディングチャンピオンである21歳の怪物、アルドリック・ポトギーターだ。

今季のPGAツアーで平均330.0ヤードという、歴代トップの驚異的な飛距離を誇る彼は、改修後のコースについて自信に満ちた笑顔を見せた。

「距離がかなり長くなったね。500ヤード近いパー4が多くなり、良いスコアを出すためには何度も完璧なドライバーショットを打たなければならなくなった。でも、距離が伸びたことは自分にはさらに合っていると思う」

飛距離という絶対的なアドバンテージを持つポトギーターにとって、パー4の長距離化は、他の選手にプレッシャーを与える絶好の舞台装置となる。長距離砲のアドバンテージが、昨年以上に大きくスコアに直結する可能性が高いのだ。

神業小技で難局を制す松山英樹

画像: ショットの精度はもちろん、スタッツが松山英樹の「グリーン周り」の上手さを示している

ショットの精度はもちろん、スタッツが松山英樹の「グリーン周り」の上手さを示している

ヤングの総合力、シャウフェレの適応力、ポトギーターの圧倒的パワーに続く第4の軸として見逃せないのが、「究極のショートゲームと安定感」を武器とする日本のエース、松山英樹の存在だ。

松山は現在、PGAツアーで最も長い29試合連続予選通過という驚異的な記録を継続している。さらに、前週の「3Mオープン」では3位タイの好成績を収め、フェデックスカップランキングを37位から26位へと急浮上させて今大会に乗り込んできた。

距離が伸び、グリーンを捉えるのが難しくなったモンスターホールでは、グリーン周りの技術がスコアに直結する。松山は2024年以降、「アラウンド・ザ・グリーン(グリーン周り)」のストロークゲインドでトップ10に入った回数がツアー最多の20回に上る。パワーでねじ伏せるポトギーターとは対極の、卓越したリカバリー技術でタフなコースを攻略する松山も、優勝候補の一角として不気味な存在感を放っている。

新たな顔を見せるコースの攻略者は誰か

画像: 左からザンダー・シャウフェレ、松山英樹、キャメロン・ヤング、アルドリック・ポトギーター

左からザンダー・シャウフェレ、松山英樹、キャメロン・ヤング、アルドリック・ポトギーター

かつてはバーディを量産しなければ勝てなかったロケットクラシックは、1610万ドルの大改修を経て、真のショットメーカーと圧倒的な飛ばし屋、そしてショートゲームの達人の力量が試される「タフなテスト」へと姿を変えた。

ヤングやシャウフェレのような精密なコースマネジメントで難局を切り抜けるか。ポトギーターのように新コースを力でねじ伏せるか。それとも松山のように魔法のアプローチで凌ぎ切るか。美しくも過酷に生まれ変わったデトロイトGCをいち早く攻略し、新時代の勝者として名を刻むのは誰か。タフなサバイバルレースの幕開けが、かつてないほど待ち遠しい。

写真/26年全英オープン、R&A提供


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