「5回の2位」の悔しさと、飾らない素顔
今季、ハルは絶対女王ネリー・コルダと幾度となく熱い優勝争いを演じ、そのライバル関係がファンの間で大きな話題となっている。しかし、会見でそのことについて問われると、彼女は真っすぐな瞳で素直な本音を吐露した。
「今はまだ、ライバル関係だとは思っていないわ。だって、彼女はメジャーをいくつも勝っているけれど、私はゼロだから。メジャーで5回も2位になっているのは、本当に痛いのよ」
昨年、2位に入ったAIG女子オープンで、優勝者の歓喜の顔を見つめながら「ああ、あれが自分だったら」と唇を噛んだ。誰よりも負けず嫌いな勝負師は、周囲が騒ぎ立てるライバル対決よりも、まずは自身の「メジャー初戴冠」のみに強烈なフォーカスを当てている。
そして、彼女の率直で飾り気のない性格は、プロとしてのモチベーションを語る場面でも遺憾なく発揮される。今年のAIG女子オープンは賞金総額が1000万ドル(約15億円)に増額されたが、ハルは「私はお金のためにプレーするのが好きなの。嘘はつかないわ。だからメジャーで良いプレーができるんだと思う。たくさんバーディを獲って、追加のドルを稼ぎたいの」と大っぴらに語り、会場の記者たちを笑わせた。この人間味あふれる率直さもまた、彼女が多くのファンを引きつける大きな魅力だ。
「昔のゴルフはアートだった」 プレースタイルへの誇り
最新のテクノロジーによって飛距離が伸び続ける現代ゴルフにおいて、ボールの飛びすぎを制限する「ロールバック」の議論が熱を帯びている。この問題に対し、ハルは彼女らしい独自の美学を口にした。
「私は、1970年代や80年代のゴルフを見るのが好きなの。当時のゴルフはもっとクリエイティブで、一種の『アート(芸術)』だった。ピンが右奥にあれば、高いフェードを打ってボールを切り込ませる必要があった。でも今は、ただピンに向かって真っすぐ打つだけになっている」

「かつてのゴルフはアート」と話すチャーリー・ハルは女子プロにしては珍しく「ブレードタイプ」のアイアンを使用している
彼女は今でも、操作性の高い伝統的な「ブレードアイアン」を愛用している。「純粋なボールストライカーとして、良いショットを打った時に報われる挑戦が好きなの」と語る通り、自らの手で弾道をコントロールすることに誇りを持っている。
ごまかしの効かない海風と深いポットバンカーが待ち受ける伝統的なリンクスコースは、そんな彼女にとって最高のキャンバスと言える。ハル自身も「バンカーに入れば(1打罰の)ペナルティエリアのようなもの。ティーショットでラインを決めて信じるか、スマートに手前にレイアップするかの決断が必要」と警戒を怠らない。自然と対話し、技でねじ伏せる「アート」なゴルフを愛する彼女だからこそ、このタフな舞台で真価を発揮するはずだ。
キャディへの「10万ドル」爆笑ドッキリ
メジャータイトルへの渇望と、伝統的なプレースタイルへの強い誇り。そんなシリアスで孤高の勝負師としての顔を持つ一方で、ハルのもう一つの魅力は、思わず吹き出してしまうようなコミカルでお茶目な素顔にある。
最近、彼女は10歳からの親友であるライアン・エバンズとともに、YouTubeチャンネルを開設して話題を呼んでいる。お金のためではなく「ただ楽しいから」と始めたこのチャンネルの撮影の裏側で、彼女は現在のキャディであるアダム・ウッドワードにとんでもないイタズラを仕掛けた。
「イタズラグッズの店で、偽物のスクラッチカードを買ったの。『10万ドル当たった!』って思い込ませてね」
結果は大成功。ウッドワードは帽子とメガネを放り投げ、「10万ドル当たった! 今日は休みだ!」と絶叫しながらプレーヤーズラウンジを走り回った。
「彼、汗だくで震えていたわ。後で偽物だって教えたら、危うく仕事を辞められそうになったの(笑)」
最高峰の舞台の裏側でこんなドッキリを仕掛ける無邪気さこそが、彼女が世界中のファンや選手から愛される理由なのだろう。
【英語動画】チャーリー・ハル、キャディに仕掛けたドッキリ【YouTube「Sweet Spot Golf」】
Charley pranks Adam
youtube.com地元での悲願達成へ、自然体で挑む

会見に臨むチャーリー・ハル
地元イングランドの大観衆が、彼女の悲願達成を今か今かと待ちわびている。そのすさまじい重圧を前にしても、ハルの歩みは軽やかだ。
「自分に『これは単なる一つのゴルフイベントだ』と言い聞かせて、できるだけリラックスして臨むだけよ」
メジャー覇者のハナ・グリーン、ブルック・ヘンダーソンと同組となる初日は、現地時間の13時26分にティーオフを迎える。
リンクスを愛する誇り高きボールストライカーであり、イタズラ好きの愛すべき28歳。シリアスとコミカルの絶妙なギャップでファンを魅了するチャーリー・ハルが、思い出のロイヤルリザムでついに悲願のメジャー初制覇を成し遂げるのか。彼女が解き放つ“アート”から、一瞬たりとも目が離せない。
写真/R&A提供

