今季すでにメジャー2勝を挙げ、圧倒的な強さで世界ランキング1位に君臨するネリー・コルダ。今季最後のメジャー「AIG女子オープン」の開幕を前に公式会見に臨んだ彼女の口から語られたのは、過酷なリンクスコースに対する緻密な戦略と、ゴルフというスポーツの「不条理」に立ち向かうトッププロの深い思考だった。

「4番アイアン」投入と徹底したバンカー回避戦略

今年の舞台であるロイヤルリザム&セントアンズは、コース内に無数に口を開ける深いポットバンカーが最大の特徴だ。この罠を警戒するコルダは、ティーショットの戦略を明かした。

「ティーショットでドライバーを使うことはあまりないでしょう。おそらく、多くても4〜5ホール程度です」

さらに彼女は、リンクス特有の風と硬い地面に対応するため、新たな武器をバッグに加えている。

画像: ティーショット用として4番アイアンをバッグに入れたと話すネリー・コルダ

ティーショット用として4番アイアンをバッグに入れたと話すネリー・コルダ

「今週は4番アイアンをセッティングに入れました。弾道が少し低めなのでこれまではハイブリッドを使っていて、AIG女子オープンで4番アイアンを入れたことはなかったと思います。でも、KPMG(全米女子プロ)でテストしてみて非常に気に入ったので、今週投入することにしました」

ドライバーを封印し、信頼できるアイアンで確実にフェアウェイに刻む。無用なリスクを徹底して排除する、世界1位の冷徹なコースマネジメントである。

リンクスとの「愛憎関係」と「コントロール」の真意

完璧なマネジメントを心がけても、自然は時に牙を剥く。コルダはリンクスゴルフとの関係性を「愛憎関係(love/hate relationship)」と表現した。

「素晴らしいショットを打ったと感じても、不運なバウンドによってポットバンカーに入ってしまい、残念ながら横や後ろに出すだけ(ピッチアウト)でパーを拾わなければならないことがあります」

特にメジャー大会が凝縮された過密スケジュールの終盤戦。疲労が蓄積している状態では、こうした不条理なバウンドに対して「気持ちが逆立ってしまう」と、彼女は等身大の本音を隠さずに明かした。

だからこそ、今週の彼女が自らに課した最大のテーマは「自分がコントロールできることだけに集中する」という徹底した精神の自己管理だ。

「正しく準備できたか? 十分な休息は取れたか? 体が必要としているケアを与えられているか? もし私が自分のクラフト(ゴルフの技術)と身体にすべてを捧げているなら、最終的にどんなバウンドをするかは自分の手から離れたものなのです」と語り、結果への執着を手放すメンタルコントロールの神髄を示した。

「世界1位の重圧」を癒やす家族の存在

過酷な自己管理が求められる中、彼女のバッテリーを充電してくれるのは家族や友人の存在だ。実は会見前日の火曜日(7月28日)は、コルダの誕生日だった。

「9ホールだけプレーして、あとは親友たちと静かにディナーをして過ごしました」と笑顔で語る。また、世界1位としてのすさまじい重圧と過密スケジュールの中で戦う彼女に対し、「両親はいつも『もっと休みなさい』と言ってくれる」と、心温まるエピソードも明かしている。プレッシャーから離れ、安らげる時間があるからこそ、彼女は再び厳しい戦いの場へと戻ることができるのだ。

「無敵ではない」現実と、引き出されるクリエイティビティ

直前のメジャー「アムンディ・エビアン選手権」ではまさかの予選落ちを喫したが、そのショックを引きずる様子は微塵もない。「すぐに切り替えました」と語気を強める。

「調子が良いからといって自分が無敵なわけではないし、毎週トップ10に入れるわけでもありません。ゴルフではそういう週もあるというのが現実です。大事なのは、そこからどう立ち直るかなのです」

世界1位の称号は、決してミスをしないからではなく、ミスや敗北から誰よりも早く立ち直れるからこそ維持できるのだと教えてくれる。

そして、理不尽な風やバウンドと戦うリンクスゴルフの過酷さについて、彼女はこうも明かしている。

「地面が硬いので、手首が間違いなく痛くなりますし、身体に少しダメージを受けます。さらに、あらゆる選択肢を考えながらプレーするので、ラウンド後は本当にクタクタになります」

それでも、コルダはその魅力を「クリエイティビティ(想像力・創造性)」という言葉で表現する。

「これまで知っているセオリーをすべて窓から投げ捨てるような、クリエイティブな面が大好きです。例えば、『バンカーがプレーに絡むからフェアウェイには打たず、グリーンへのラインが良いラフを狙う』なんて、普通のゴルフでは絶対に言わないですよね。それがリンクスのユニークで楽しいところです」

グリーン周りのアプローチでも無数の選択肢から想像力を巡らせる楽しさを語る彼女の目は、純粋なゴルフ愛に満ちていた。

決意のティーオフへ

不条理なバウンドを受け入れる覚悟を持ち、豊かな想像力でリンクスの罠をくぐり抜ける。自身の技術と身体にすべてを捧げ、心身ともに万全の準備を整えた世界1位のネリー・コルダ。

初日は午前8時42分にティーオフ。2024年覇者のリディア・コー、そして今季メジャー2勝のユ・ヘランと同組という、今大会屈指の最注目ペアリングでスタートを切る。

画像: キャリアグランドスラムへ王手をかけているネリー・コルダ

キャリアグランドスラムへ王手をかけているネリー・コルダ

今季メジャー3勝目、そしてキャリアグランドスラム(女子は5大メジャーのうち4大会で勝利。彼女は今大会で優勝すれば達成する)という歴史的偉業へ向けて、彼女の静かで熱い戦いがいよいよ幕を開ける。

写真/R&A提供


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