2年前の悪夢を払拭できるか?首位発進が巻き起こす「天国と地獄」
プレーオフ進出ラインであるトップ70にホスラーが滑り込むために、PGAツアーから提示された最低条件は今大会での「優勝」のみ。わずかな望みを残して背水の陣で挑んだ大一番で、彼は見事にリーダーボードの頂点に躍り出た。
しかし、この首位発進は同時に強烈な「ジンクス」との戦いの幕開けでもある。ホスラーがPGAツアーで初日首位(タイ含む)に立つのはこれがキャリア6回目だが、過去5回はすべて優勝を逃し敗れ去っている(0勝5敗)。しかも、その直近の苦い記憶こそが、まさに2年前(2024年)のこのウィンダム選手権なのだ。当時、彼は初日に自己ベスト「60」を叩き出して首位に立ちながら、後半に失速して12位タイに終わっている。
2年前、同じ舞台で首位から散った悪夢。そして過去5回の首位発進で一度も勝てていないという宿命。今度こそこのトラウマを水に流せるかどうかが、今週末の最大の焦点となる。
さらに、初日のライブランキング試算によれば、ホスラーが122位から一気に「52位」までジャンプアップしてプレーオフ圏内に滑り込む裏で、現在当落線上(70位)の瀬戸際にいる21歳の怪物ジャクソン・コイヴンがちょうど「71位」へ押し出されて圏外に転落するという、まさにリアルタイムの残酷なサバイバルが早くも始まっている。
「勝てない男」ランキング第3位と、迫り来る不気味な追撃者たち
この爆発的なスコアの裏側で、ホスラーの肩にはもう1つの重い数字がのしかかっている。

PGAツアー252戦目となるボー・ホスラー。初優勝なるか(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ)
PGAツアーが今大会に向けて発表した公式ノートの中に、「未勝利の現役選手における最多出場数」という、選手にとってはなんとも複雑なリストがある。ホスラーは今大会でキャリア「252戦目」を迎えるが、これはパトリック・ロジャース(333戦)、マーク・ハバード(282戦)に次ぐ「第3位」の記録なのだ。
プロスポーツの世界において、世界最高峰のPGAツアーに長年定着し、250戦以上も出場し続けられること自体が、彼がトップクラスの実力と安定感を持っている何よりの証明である。これは間違いなく名誉なことだ。しかし同時に、それは幾度となく優勝争いに絡みながらも、あと一歩のところで勝利の女神に見放され続けてきた歴史でもある。喉から手が出るほど欲しい「ツアー初勝利」の壁が、彼の目の前に高くそびえ立っている。
しかも、首位ホスラーのすぐ背後には、わずか1打差(62・8アンダー)でとてつもないプレーを見せた2人の追撃者がピッタリと張り付いている。
1人は、PGAツアー通算500ラウンド目の節目を迎えたサヒス・ティーガラ。フロント9でハーフ「28」を叩き出すなど、9ホールでパーが1つもない(8バーディ・1ボギー)怒涛のゴルフで猛追している。そしてもう1人が、PGAツアーユニバーシティ・ランキング1位で2026年6月の「RBCカナディアンオープン」でプロデビューした超新星、ベン・ジェームスだ。ルーキーながら初日に15番を含む2つのイーグルを奪う大爆発を見せ、リーダーボードを揺るがしている。
雑念を捨てる「ゴルフ」への回帰
122位からの奇跡のプレーオフ進出、252戦目での悲願の初勝利、そして迫り来る強力な追撃者たち。周囲がどれほど劇的なストーリーを期待し、プレッシャーをかけようとも、当のホスラー自身のメンタルは驚くほど静かで冷静だった。
初日のラウンド後、プレーオフ進出への重圧について問われた彼は、落ち着いた口調でこう語った。
「毎回の試合のパフォーマンスが、来年以降のキャリアに影響を与えるのは当然のことだ。でも、その重圧に心を支配されてしまうのは非常に危険なことなんだよ」
「結局のところ、これはただのゴルフなんだ。私はコースに出て、素晴らしいゴルフをして、カードがどう落ちるか(結果がどうなるか)を見るだけさ」
長年のツアー生活で培われたタフな精神力。雑念を捨て、目の前の「ゴルフ」というゲームそのものに深く集中する境地こそが、極限状態でのビッグスコアを生み出した最大の原動力なのだ。
15番の奇跡的イーグル、悲願の初Vと大逆転劇へ
初日は悪天候(雷雨)の影響により日没サスペンデッドとなったが、ホスラーのプレーは疑う余地なく完璧だった。データを見ても、「ティー・トゥ・グリーン(ティーショットからグリーンに乗せるまでのスコア貢献度)」と「アプローチ」のストロークゲインドにおいて堂々の全体1位を記録している。
本人も「キャリア最高のアイアンショットが打てた」と手応えを口にし、とりわけ圧巻だった15番(パー5)のイーグルをこう振り返る。
「15番は今日、ティーイングエリアが前に出ていて追い風だった。残り211ヤードから6番アイアンで打ったショットが、グリーンの奥のフリンジにギリギリで乗ってくれたんだ。そこからかなりトリッキーなパットが残って、正直、距離を合わせてパーでもしょうがないと守りに入って打ったら、運良くそのままカップに吸い込まれてくれたんだよ」
不名誉な「未勝利記録」と「0勝5敗のトラウマ」に終止符を打ち、フェデックスカップランキング122位からの「優勝」という最高の下克上を果たすことができるのか。悲願の初Vとプレーオフへの切符を同時に掴み取ろうとするボー・ホスラーの逆襲劇から、目を離せない。
写真/岩本芳弘
