53歳ウェストウッドが示す「引き算」のコースマネジメント

「290ヤード先のフェアウェイ真ん中に置ければ勝ち負けできる」と話す53歳のリー・ウェストウッド
「私はもう、若手のように340ヤードを飛ばすような選手ではない。だが、290ヤード先のフェアウェイの真ん中に置くことができれば、十分に戦えるチャンスはある」
単独2位につけるウェストウッドの言葉には、自らの限界を客観視したプロの凄みが宿る。
今大会の舞台ベッドミンスターは全長7651ヤードと、リーグで2番目に長いモンスターコースだ。さらに前回(2023年)大会から一部ホールに新ティーが設置され、総距離が125ヤード以上も延長されている。ティーショットをラフに入れれば「坂道で水を押し上げているような絶望感」を味わうこのセッティングに対し、彼は「コースを細かく切り分けて考える」という老獪なマネジメントで挑んでいる。
さらに、このタフなラウンドを支えているのが、第2ラウンド終了時点でフィールド1位に立つストロークス・ゲインド(SG)「パッティング」の驚異的な冴えだ。
長年パットに苦しんできた印象のある彼だが、その裏には地道な努力があった。「自宅に滑らかなサーフェスのパッティングスタジオを新設し、冬の間にコーチのアンディ・ペイズリーと猛練習を重ねた成果が出ている」と胸を張る。
ニュージャージーを襲う連日の酷暑についても、「53歳にもなると、体をほぐすのにこれくらいの暑さが必要なんだ。寒いよりずっといいよ。苦しそうに見えるかもしれないが、実は結構楽しんでいるんだ」と笑い飛ばす余裕すらある。
ガルシアが実戦投入した新相棒「ブルームスティック」と、錆びつかぬアイアン精度
単独3位に浮上したセルヒオ・ガルシアの躍進の裏には、新たな「相棒」との劇的な出合いがあった。
今週、彼はツアーで急遽「ブルームスティック(長尺)パター」を実戦投入している。先週、テキサス州オースティンでのプライベートなラウンドで友人たちと試し、感触が極めて良かったことから採用を決断したという。
「狙ったラインに正しくボールを打ち出せているという安心感がある。それさえできれば、あとはラインを読んでスピードを合わせるだけだ」
グリーン上での迷いを断ち切ったガルシアは、本来の持ち味である「世界屈指のショットメーカー」としての輝きを完全に取り戻した。第2ラウンドを終えて、SG「アプローチ」部門では全体2位(+6.10)というショット精度を記録している。
「15、16回のパーオンに成功すれば、パット数が27でもスコアはまとまる 」
錆びつかない極上のアイアンと新たな相棒が噛み合い、完璧な上昇気流に乗っている。
【動画】セルヒオ・ガルシア、これぞ熟練の技!? あっちこっちいってもパー!【LIVゴルフ公式X】
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リーダーボードの上位をベテランが埋め尽くしているこの状況は、決して偶然のフロックではない。ガルシアは力強く語る。
「若い選手たちは信じられないほどボールを遠くまで飛ばすし、準備も完璧だ 。彼らが本領を発揮すれば驚異的なプレーをする。だが、だからといって、我々のような経験豊富な『少しばかり年季の入った』選手がプレーできないわけではないんだ。自分のベストを尽くし、前向きにコースに向き合うだけさ」
その言葉を証明するように、2日目にノーボギーの「64」を叩き出した53歳のリチャード・ブランドも、「すべてが良かった。特に上がり数ホールの絶対に落とせない場面で、見事な『寄せワン』を決めて凌ぐことができた」と、熟練のショートゲームが光ったラウンドに充実感を漂わせる。
ゴルフというスポーツの奥深さは、パワーと飛距離だけでは測れない。
自分の距離を熟知した緻密なマネジメント、血のにじむような冬の反復練習、貪欲に新しい道具を取り入れる柔軟性、そして何よりも、プレッシャーのかかる場面でこそ真価を発揮する「経験」という名の強力な武器。
これらすべての知恵を総動員して若き大本命に立ち向かうベテランたちの背中は、すべてのゴルフファンに深い感動と勇気を与えてくれる。
首位を走るニーマンとの差は5打。決して容易な数字ではない。しかし、週末のサバイバルに向け、失うもののない百戦錬磨の男たちがどのような反撃のシナリオを描くのか。円熟味を増した彼らのプレーに注目したい。
写真/LIVゴルフ提供
