15歳の成長株、赤穂未来さんと指導にあたる父・勇介さん。前回は勇介さんの異色の経歴とプロの世界を知るからこその子育て論をお届けした。第2回では「ゴルフダイジェスト・ジュニアカップ」で世代を跨いだ2連覇、昨年はプロの舞台「スタンレーレディス」で15位タイ、「日本女子オープンゴルフ選手権」にも出場するなど、成長著しい未来さんの強さの秘密に触れる。これだけの成績を収めているが、実は155cmと小柄な彼女。成長速度的には同世代とは約2年ぶんの差がついているという。そんなハンディは、ツアーレップの父・勇介さんと二人三脚で編み出した、圧倒的な「精度」を生み出す独自の練習法で覆してきた。
画像: 「ゴルフダイジェスト・ジュニアカップ」での2連覇や「スタンレーレディスホンダ」15位タイという強さの根底にあるのは、練習の5割を占めるという“アプローチ練習”だった!

「ゴルフダイジェスト・ジュニアカップ」での2連覇や「スタンレーレディスホンダ」15位タイという強さの根底にあるのは、練習の5割を占めるという“アプローチ練習”だった!

前回のお話はこちら↓

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50ヤードの差。立ちはだかった飛距離の壁

画像: 【左】4年前【右】現在。「今は同級生たちとの身長差は縮まってきて、飛距離も225Y飛ばせるようになりました。それでも体重にはまだ差が残っているので、ハンバーグひと口に対してご飯はふた口など、たくさん食べるようにしています(笑)」(未来さん)

【左】4年前【右】現在。「今は同級生たちとの身長差は縮まってきて、飛距離も225Y飛ばせるようになりました。それでも体重にはまだ差が残っているので、ハンバーグひと口に対してご飯はふた口など、たくさん食べるようにしています(笑)」(未来さん)

未来さんが最も大きな壁にぶつかったのは、小学5〜6年の頃だ。当時の身長は約135cm。周囲が210ヤードほど飛ばすなか、彼女は160ヤードしか飛ばせなかった。「想像を絶するくらい飛ばなかった。だってみんなが点に見えるんやから(笑)」と父・勇介さん。未来さんは「周りの人は2打目をアイアンで打つのに自分は3WやUTばかり持っていた。グリーンを外すことも多かった」と悔しさを語る。

活路はアプローチだった。

「フルスウィングばかりじゃなくハーフショットの練習をしっかりやる。父から教わったことです」(未来さん)

その精度を支える土台は、磨き上げられた感覚にある。幼少期からパターはあえて操作性が求められるピン型に近いもの、そしてウェッジはジュニアにしてはローバウンスのものを使ってきた。

「ティアドロップ形状のウェッジを7~8年間使い続けています。重量は軽めで、遊べて球が拾えるので、“フェースを開く感覚”が養えたと思います。パターもウェッジもやさしいものより、感性が磨けるクラブを選んできました」(父・勇介さん)

全ショットの土台を作る“地味練”と「アプローチ」

画像: 練習場について一番最初に振るのは“バット”

練習場について一番最初に振るのは“バット”

赤穂親子が大事にしている“感覚”。この感覚は、手元だけでなく、目で測る距離感にも反映されている。

「体格差に悩んでいた頃は、ちょうどコロナ禍だったんです。なので実は“ゴルフ”の練習というより、“キャッチボール”とか家の前でもできることをやっていたんです。キャッチボールやゴミをゴミ箱に入れる動作は、ハンド・アイ・コーディネーション(目と手の協調運動)を鍛えられます。ゴルフも結局はここだと思うんです」(勇介さん)

キャッチボールのほかに取り組んでいたのは、“バットの素振り”。高校生になった今でも、練習で一番最初に持つのはバットだ。

「自分はあまりバックスウィングが大きいほうではないので、体を回せるようにストレッチだと思って取り組みますね。左右の素振りを行うのですが、特に左向きの素振りでフィニッシュを大きくとるように意識しています」(未来さん)

このストレッチは、体のバランスを整える、という意味でも理にかなっているという。

そして、練習の5割を占めるというのが“アプローチ”だ。

「まず58度でハーフショットをして、その後は5Y、10Y、15Y……低い球や高めの球などランダムで打ち分けます」と未来さん。勇介さんは「アプローチは言わばミニチュアスウィング。ゴルフ場に行けばハーフショットよりも小さい“ちょん”という打ち方もするので、スウィングの違いを確認し手元の整え方を練習します」と、これが全ショットの土台になると断言する。「ドライバーは僕が『5球くらい打て』って言うからMAXで5球打つくらい。普段は3球くらいしか打っていないと思う」(勇介さん)と話すほど、徹底して精度に特化した練習を行っている。

画像: 練習の5割は“アプローチ”を練習している。スウィング時に意識することは、未来さんの場合「グリップと体の距離を変えないこと」だという

練習の5割は“アプローチ”を練習している。スウィング時に意識することは、未来さんの場合「グリップと体の距離を変えないこと」だという

調子が悪いときは、どうしてる?
「私は、“バックスウィング”を確認します!」(未来さん)

「調子が悪いときは、たいていテークバックでいつもと違う場所にクラブを上げてしまっているんです。なので、動画を撮影して確認しながら練習します」と未来さん。「『ここさえ綺麗にスウィングできていたら真っすぐ飛ぶ』という基準を持つといいかもしれないです」とのことだ。

環境を選ばず適応する! 実力を底上げする「打席選び」

画像: 右端の打席から練習するので、自然とスライスが得意になった

右端の打席から練習するので、自然とスライスが得意になった

打席選びにも未来さんの強さの秘密が隠されていた。それは「右端の打席」で練習に励むことだ。

「いつも練習している打席は一番右端にあるんです。ここからだと自然と右ドッグレッグの打ち上げのコースのようなイメージで打つことになります。自然と左を向くので練習で打つ球は真っすぐではなく、ややスライス気味だと思うんです。コースに出ても、その場所なりの打ち方を練習してきました」(勇介さん)

練習打席の位置によって、自然と左を向いて打つことに慣れていった未来さん。スライスのほうが得意です!」と本人も笑顔で語る。また、2連覇を達成した「ゴルフダイジェスト・ジュニアカップ」の会場・東名カントリークラブは、上り下りの傾斜への対応力が問われるコース。これについても、「よく行く兵庫カンツリー倶楽部は東名CCよりコースの幅が半分くらい狭いホールもあります。そのぶんショットの正確さやコースマネジメントが求められる戦略性のあるコースなので、そこで培った経験を生かせたと思います」と語る。

理想の練習環境を追い求めるのではなく、環境を選ばず、むしろその状況に柔軟に適応して練習することが、実力を底上げするのかもしれない。

修正よりも「成功体験」。実戦での強さを生む哲学

圧倒的な精度と対応力を生み出すこれらの練習の根底には、勇介さんの確固たる哲学がある。指導する際に意識していることを尋ねると「大事なのは、成功に導く練習」との答えが返ってきた。

「パッティングの練習で、レールの練習器具を使ったら、失敗のほうが多くなるでしょ? それやったら50cmのOKパットを何回も打ったほうがいい。失敗のイメージがついてしまって、そこを修正することに意識が向くと『怖い』と恐れることが増えてしまう。だから『修正点を直す練習』というよりは『成功の回数を増やす練習』が僕の理想ですね」(勇介さん)

失敗を直そうとするのではなく、「成功体験の反復」によって実戦でのブレない強さを育んでいる。この独自の哲学に基づく“地味練”の積み重ねこそが、大舞台になればなるほど強くなる、未来さんの堂々とした精神力を作り上げていたのだ。

どうしても飛距離アップやスウィングの修正ばかりに目を向けてしまいがちなのが、我々アマチュアゴルファー。「大人はストレス解消の目的もあると思うし、それでいいと思います。でも、逆に『ドライバーを打たない日があってもいいんじゃないか』とも思いますね(勇介さん)」。“地味練”を徹底し、精度の高いプレーを求める赤穂親子。そのなかでも“楽しみながらやる”ために見失わないのが、取材時にも垣間見えた“余白”だった。「練習してもちっとも上手くならない」と落ち込んだ時には、赤穂親子の『成功体験を増やす』という哲学を思い出してみてはいかがだろうか。


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