フェデックスカップ・プレーオフ第1戦「フェデックス・セントジュード選手権」は、いよいよ最終日を迎える。第3ラウンド(R3)で「67」をマークした日本の松山英樹は、通算7アンダーの6位タイへと順位を上げた。しかし、リーダーボードの頂点には通算13アンダーまでスコアを伸ばした世界ランキング1位、スコッティ・シェフラーが君臨している。その差は「6打」。決して小さくないこのビハインドだが、プレーオフ第1戦の歴史(2007年以降)において、最終日の最大打数差逆転優勝は「6打差(2013年のアダム・スコット)」。松山がこの差をひっくり返して勝てば、大会史上最大タイ記録という歴史的快挙となる。TPCサウスウィンドの公式データ(ShotLink)を紐解き、奇跡を起こすための勝利のシナリオを探る。

データが示す「魔の上がり2ホール」

逆転への最大の障壁となるのは、トッププロたちを絶望の淵に突き落としているTPCサウスウィンドの「上がり2ホール」だ。

R3の全18ホールの難易度データ(平均スコア)を見ると、17番(パー4)が「4.279」で単独1位、続く18番(パー4)が「4.176」で同2位タイと、コース終盤が極めて過酷な設定になっていることが分かる。優勝争いの極限のプレッシャーの中で、この2ホールを無傷で切り抜けることは至難の業だ。

しかし、松山のスコア推移を見ると、この難所に対する確かな適応力が窺える。第2ラウンド(R2)では17番でボギーを叩いたものの18番はパー、R3に至ってはこの最難関の2ホールを両方ともパーセーブして崩れなかった。終盤のディフェンス力が高まっていることは、最終日を戦う上で非常にポジティブな要素と言える。

何より、この2ホールは松山にとって恐怖の対象ではない。2年前の2024年、彼がこのサウスウィンドを制した際、最終日の緊迫した優勝争いの中で、まさにこの最難関の17番、18番で連続バーディを奪い返し、劇的な2打差優勝を飾っている。全員が恐れる地獄の上がり2ホールこそ、松山英樹が最も美しく、最も強いイメージを刻み込んだ約束の地なのだ。

ついに揃ったアライメントと、逆転への「爆発力」

だが、シェフラーを6打差から逆転するためには、上がり2ホールを「守る」だけでは絶対に届かない。どこかで猛烈なチャージをかけ、首位にプレッシャーを与える「爆発力」が必要不可欠だ。

画像: R3はパッティングの調子が良くバーディを奪取した松山英樹。すべてが嚙み合った最終日を期待したい(写真は26年マスターズ)

R3はパッティングの調子が良くバーディを奪取した松山英樹。すべてが嚙み合った最終日を期待したい(写真は26年マスターズ)

そしてデータは、今の松山にその爆発力が完璧に備わっていることを明確に証明している。初日(SG: Putting -0.185/41位)、2日目(-1.674/59位)と足を引っ張っていたパッティングだが、R3ではついに「+0.879(19位)」とプラスに転じた。ショット貢献度(SG: Approach +1.055)やティーショット(SG: Off The Tee +1.021)も含めて全てのスタッツがプラスを記録し、完璧な調和を見せ始めたのだ。

第1ラウンド(R1)では後半インコースで怒濤のバーディラッシュを見せて「30」を叩き出し、R3では前半アウトコースで4つのバーディを奪う猛チャージで「32」をマークした。一度波に乗った際のスコアメイク能力は、首位のシェフラーにも全く引けを取らない。

つまり、松山の逆転シナリオはこうだ。前半から中盤にかけて、R1やR3で見せたような「爆発力(ハーフ30〜32ペース)」を発揮して一気に首位との差を詰める。そして、スコアを落としやすい「魔の17番・18番」を迎える前にプレッシャーをかけ、最後は高まってきた「ディフェンス力」で最難関ホールをパーで凌ぎ切る。これがデータから導き出される、唯一にして最大の勝ち筋である。

安全圏の先にある頂点へ。コースとの圧倒的な磁場

ポイントランキング20位で今週を迎えた松山にとって、次戦「BMW選手権(上位50名)」の進出や来季全シグネチャーイベント出場権の獲得といった安全圏は、すでに確定的な通過点に過ぎない。

彼が見据えるのはそんな安住ではなく、最終戦「ツアー選手権(上位30名)」への自力進出、そして何より王者シェフラーへの挑戦である。

PGAツアーの公式記録によれば、TPCサウスウィンドで3回以上出場した全選手の中で、「2022年以降、一度もトップ20から外れたことがないのは松山英樹ただ一人」である。24年覇者として、この難関コースとの間に流れる「絶対的な相性の良さ」は、大逆転への最大の心の拠り所となるはずだ。

データが証明する「圧倒的な爆発力」と、難関ホールを凌ぐ「強靭なディフェンス力」が完璧に噛み合った時、猛暑のメンフィスで大会史に残る奇跡の逆転劇が生まれるかもしれない。完全無欠の王者シェフラーに挑む、松山英樹のサンデーバックナインから目が離せない。

写真/岩本芳弘


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