フェデックスカップ・プレーオフの初戦、「フェデックスセントジュード選手権」。世界中が注目したローリー・マキロイの成績は、通算8オーバーの66位タイという、誰もが予想しなかった惨敗だった。「準備不足で挑み、スウィングの迷子になってしまった」。大会中、マキロイは自身の現状をそう分析し、ショットよりもスウィングの動きに意識が囚われる「ターゲット喪失」という深刻な罠に陥っていた。トッププロであっても一度狂った歯車を修正するのは至難の業だ。しかし、この絶望的な4日間の中で、マキロイは最終日のバックナインに「ある変化」を見せていた。その変化こそが、次戦へのわずかな、しかし確かな光明となっている。

苦闘の4日間と見出した感覚

最終日のマキロイは、1番でダブルボギー、3番でボギー、さらに5番、6番で連続ボギーを叩き、最初の6ホールを終えた段階で「5オーバー(+5)」という、王者のプライドを打ち砕かれるような地獄にいた。前半を「39」で終え、絶望の淵に沈んでいるように見えたマキロイ。

しかし、インコースに入る直前の9番(パー4)でこの日最初のバーディを奪うと、突如としてそのプレーに生気が戻り始めた。10番、11番と怒涛の連続バーディで息を吹き返すと、後半のインコースを「33(2アンダー)」で駆け抜け、結果的に残りの12ホールを「5バーディ・2ボギー(3アンダー)」で回り切った。この「崩壊の危機から、一瞬にして別人のように息を吹き返したカムバック」は、彼のスウィングがいかに一瞬でシンク(同調)を取り戻せる爆発力を持っているかの証明となった。

ホールアウト後、疲労の色を滲ませながらも、マキロイの口からは前向きな言葉がこぼれた。

「明らかに十分な実戦練習を積まずにここへ来てしまった。週が進むにつれて、自分のスウィングにどんどん迷いを感じるようになっていたんだ」

そう苦悩を語りつつも、彼は最終日の終盤についてこう続けた。

「でも、今日の最後の数ホールで、少しだけ感覚を掴めたと思う。コースで通用するかもしれない感触を見つけられたんだ。最後の10ホールで5つのバーディを奪えたことは、間違いなく前向きな兆候だと言える」

絶不調の中で、無理やりにでもコース上で戦い抜いたからこそ得られた感覚。それは練習場では決して掴めない、実戦の中での「気付き」だった。

次戦・BMW選手権への悲壮な覚悟

しかし、最後の数ホールで見せたわずかな光明だけでは、次戦を勝ち抜くことはできないということをマキロイ自身が一番よく分かっている。

「今の自分の状態は、勝負できるレベルからはほど遠い」と現状を厳しく評価した上で、彼は次週の第2戦「BMW選手権(会場:ベルリーブCC)」に向けた悲壮なまでの覚悟を口にした。

「家に帰って、マイケル・バノン(コーチ)やハリー・ダイヤモンド(キャディ)と一緒に取り組むよ。スウィングを何とかもっと良いシンク(同調)とフロー(流れ)に戻さなければならない。そして火曜日にベルリーブへ行き、あのコースに向けた準備をする」

そして、世界トップスターとしてのプライドをかなぐり捨てるような、泥臭い決意を語った。

「来週、少しでもチャンスがあると感じられる状態にするためには、これから木曜日まで、ただ頭を下げて必死に練習(グラインド)し続けなければならないんだ」

どん底から這い上がる王者の逆襲

画像: 初戦は66位と不調だったが、「12ラウンドで1つの試合」と考えればまだ1/3が終わったばかり。マキロイの爆発に期待したい(写真は26年全英オープン)

初戦は66位と不調だったが、「12ラウンドで1つの試合」と考えればまだ1/3が終わったばかり。マキロイの爆発に期待したい(写真は26年全英オープン)

マキロイは今大会を前に「プレーオフは3連戦・12ラウンドに及ぶひとつの長大な戦いだ」とペース配分を意識していた。しかし、初戦でスウィングを見失い大惨敗した今、次のベルリーブで文字通り「白紙」に戻してゼロから完全に仕切り直せるこのプレーオフの構造こそが、傷だらけの王者にとって唯一最大の救いとなる。

歴史を振り返れば、マキロイが年間王者を戴冠したシーズンは、初戦で大苦戦(2016年は31位タイ、2022年は予選落ち)を喫している。彼にとって、プレーオフ初戦の大惨敗はシーズンの終わりなどではなく、むしろ最強のエンジンに火を入れるための通過儀礼に過ぎないのかもしれない。

2018年全米プロゴルフ選手権以来、8年ぶりの再訪となるベルリーブCCへ向かうマキロイ。準備不足とスウィングの迷走というどん底を味わい、最終日の最後に掴んだわずかな感覚を頼りに、彼は泥臭くスウィングを立て直そうとしている。傷だらけの王者が、次週どのような逆襲を見せてくれるのか。その泥臭い足掻きにこそ、プロゴルファーの真の凄みが宿っている。

写真/R&A提供


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