重圧との戦い「数字を追うな」
誰もがランキングを意識せざるを得ないこの状況下で、選手たちはどのようにメンタルを保っているのか。現在25位につけ、自身初のツアー選手権進出を目指すライアン・フォックスが、その生々しい本音を吐露した。
「もちろん、イーストレイク(ツアー選手権)に行くことは今年の初めからの大きな目標だった。先週(フェデックスセントジュード選手権)で、もう少し良い成績を出して今週のプレッシャーを軽くしたかったけれどね」
ボーダーライン上にいるプレッシャーを認めつつも、彼はあえてランキングの話題から意識を遠ざけようとしている。
「もし自分が今週、何位でフィニッシュする必要があるかなど、細かい数字やポジションのことを気にし始めると、頭がおかしくなってしまうと思う。だから、ただコースに出て良いゴルフをすることだけに集中するよ。結果は後からついてくるものだからね」
「ただ良いゴルフをするだけ」と語るフォックスだが、実はこのベルリーブCCで開催された2018年の全米プロゴルフ選手権で「68-70-68-68」の安定したプレーを見せ、27位タイに入った好印象を持っている。もし今週彼が優勝を果たせば、アーノルド・パーマー、トム・ワトソン、ニック・プライス、スコッティ・シェフラーに続く「同一年に全英オープンとBMW選手権の両方を制した史上5人目の選手」という偉業を達成することになる。
人生が激変したメジャー覇者の悲喜こもごも

今年の全英オープン後のシュールな一面を語ったライアン・フォックス
フォックスにとって、この重圧はコース内だけのものではない。先月の「全英オープン」で劇的なメジャー初制覇を果たして以来、彼の日常は激変し、盤外での見えないストレスとも戦っている。
「ここ1カ月は本当にクレイジーだったよ。自分の世界が完全に変わってしまって、まだそれに慣れようとしているところだ。今週もホテルから夕食に行くだけで5回もサインを求められた。もう目立たずに過ごすことはできないんだ」
そんな多忙な日々を象徴するのが、全英オープン優勝直後のユーモラスなドタバタ劇だ。
「日曜日の夜、一睡もせずに空港に向かったんだ。バックパックにトラックマン、ゴルフクラブにスーツケース、それにクラレットジャグとレプリカが入った巨大な箱が2つ。チェックインカウンターの列に並び、『これは全英オープンのトロフィーなんだ、機内に持ち込めるか?』って係員に必死で説明してね」
そして、そのチェックインの列で最初のドラマが起きていた。
「僕のすぐ前に並んでいたのが、キャメロン・ヤングだったんだ。気まずいというか、『ああ、ごめん。ちょっと罪悪感を感じるよ』って言ったよ(笑)」
キャメロン・ヤングこそが先月の全英オープンでフォックスに次ぐ単独2位(準優勝)に終わった相手だ。激闘を繰り広げた翌朝、一睡もしていない勝者が、敗者の目の前に本物のトロフィーを2個も抱えて現れたのだから、ゴルフ界ならではのシュールで気まずい瞬間だったと言えるだろう。機内に乗り込んだ後も、巨大な2つの箱を頭上の収納棚に押し込むのに必死だったという。
トップ30のサバイバルを制するのは誰か
このボーダーラインを巡る争いは、まさに薄氷の差だ。30位のファウラーと、すぐ下の31位につけるゲーリー・ウッドランドの差は、わずか「1.238ポイント」。さらに29位のバド・コーリーと30位ファウラーの差も、たったの「0.115ポイント」しか存在しない。一打で人生が変わる死闘だ。しかも、31位から逆転を狙うウッドランドは2018年の全米プロで6位タイに入った実績があり、ファウラーにとっては最大の脅威として背後に迫っている。
一方で、27位につけるレジェンド、アダム・スコットも大きなアドバンテージを持つ。スコットは今回の出場選手の中で唯一、ベルリーブCCで行われた2008年BMW選手権と2018年全米プロの「両方に出場した経験を持つ唯一の選手」であり、2018年には単独3位に入っている。この豊富な経験値は、生き残りを賭けた戦いにおいて強力な武器となるはずだ。
選手たちが「ビッグボーイズ(強者)のコース」と評するベルリーブCC。22位のビクトール・ホブランは「実力者が報われるコース。飛距離が出て、アイアンショットが正確な選手が上に行く」と語る。実際、ベルリーブCCはパッティングの難易度が非常に高く、20フィート(約6メートル)以上のパット成功率はわずか6.41%とツアーでも極めて低い。過去の勝者(ブルックス・ケプカ等)もスコア貢献度のうち56.52%をアイアンショット(SG: Approach)で稼ぎ出しており、統計的にも「アイアン勝負のタフなコース」であることが裏付けられている。
全英王者としての多忙なスケジュールや、突如として浴びせられる世間の注目。そして、ポイントランキング25位という痺れるようなポジション。
今週のベルリーブCCで、誰が重圧とタフなコースをはねのけて「トップ30」の切符を掴み取り、誰が涙を呑むのか。リーダーボードの数値だけでは測れない、選手一人ひとりの人生を懸けた泥臭い人間ドラマから目が離せない。
写真/R&A提供
