王者シェフラーの「静かなる自信」
後続に大差をつけて迎えた前週の最終日、シェフラーのプレーに慢心や隙は一切なかった。「リードが大きくなっても、特にトラブルが絡むようなホールでは保守的なラインをとる。どんなにクッション(リード)があっても、相手は世界最高峰の選手たちだからね」と、最後まで攻撃と守備のバランスを研ぎ澄ませていた。
そして、今の彼をさらに無敵にしているのが「ギアとの対話」だ。

BMW選手権の練習日にはもちろん「Qi4D ドライバー」で挑んでいるスコッティ・シェフラー(写真/Getty Images)
前週、彼は新しいドライバー(Qi4D)を実戦投入した。「テストでスピン量が安定し、スピードも出て、何より真っすぐ飛んだ」と手応えを語り、難コースでのアドバンテージに変えた。
さらにアイアンショットのキレを取り戻したことについて、彼は「クラブヘッドを感じられるようになったこと」を理由に挙げた。
「自分の手がクラブヘッドの場所を感じられれば、球筋を操れる。少し感覚がズレていた時期もあったが、自宅での練習でその感覚が戻ったんだ」
世界最高のショットメーカーが、文字通り「手足のように」クラブを操るゾーンに入っている。
ライバルたちが語る「無敵の証明」
この完全無欠の王者を前に、同業のトッププロたちは畏敬の念と対抗心を交錯させている。

フェデックスセントジュード選手権でいいところがなかったローリー・マキロイ(写真は26年全英オープン)
ローリー・マキロイは、シェフラーの圧勝劇を半ば呆れ気味に称賛した。
「もし彼がグリーン上で9ストロークも得点(SG:Putting)したら、僕らは全員終わりだ」
マキロイがそこまで言うのには理由がある。ショットの凄まじさを示す指標(SG: Tee-to-Green)において、シェフラーは「+1.60」とあのタイガー・ウッズ(+1.43)を抜き去り、プレーオフ史上歴代1位に君臨しているのだ。弱点とされていたパッティングまで完璧になった王者に対し、ライバルたちが白旗をあげるのも無理はない。

ポイントランキング2位につけるマット・フィッツパトリック(写真は26年全英オープン)
また、今季3勝を挙げてポイントランキング2位につける最大のライバル、マット・フィッツパトリックも「1年間を通じて最高のプレーをした選手こそが評価されるべきで、今は間違いなく彼だ」と称賛を惜しまない。自身もここ2シーズンでアイアンの精度を世界トップまで磨き上げたフィッツパトリックだからこそ、その言葉には最高峰のボールストライカーとしての深い共感と敬意が宿っている。

シェフラーより若いが、プロ入り直後から期待され、プロ2年目で初優勝を遂げたビクトール・ホブラン。23年のような状態を取り戻せればシェフラーを脅かす存在になるのは間違いない(写真は26年全英オープン)
一方で、ビクトール・ホブランは「ラフが極めて深く、ティーショットを外すとノーチャンスになる『ビッグボーイズのコース』だ」とベルリーブを警戒しつつ、「彼は本当に安定していて弱点がない。17アンダーを叩き出したのもさすがだ。でも……」と前置きし、闘争心を覗かせた。
「僕自身が2023年のような状態を取り戻して、彼をもっと焦らせたいんだ」
達観する者、意地を見せる者。ライバルたちの声が、逆説的にシェフラーの凄まじさを証明している。
連覇へ挑む絶対王者と追撃組の意地
クラブヘッドを完全に掌握し、パッティングの不安すら消し去ったスコッティ・シェフラー。
昨年のBMW選手権覇者(ディフェンディングチャンピオン)として挑む今週。ホブランが評する「ティショットの正確性が勝負を分けるコース」は、実はプレーオフのティショット勝負で同業プロを上回った確率が「83.78%」(歴代1位)を誇るシェフラーに最も有利な舞台でもある。大会史上10人目の「連覇」へ向けて隙はない。
圧倒的な強者に挑むライバルたちがどのような包囲網を敷くのか。絶対王者の歩みと、追撃組の意地のぶつかり合いから目が離せない。
写真/R&A提供
