世界最高峰の舞台、PGAツアー。中継に映るトッププロたちのスウィングは、常に洗練され、完璧な軌道を描いているように見える。しかし、その華麗なショットの裏側には、アマチュアゴルファーと同じように「悪癖」に苦しみ、泥臭い微調整を繰り返す彼らの生々しい姿がある。「BMW選手権」(ベルリーブCC)の開幕前、会見場に現れた名手たちが明かした「スウィングの迷宮」と、そこから抜け出すための試行錯誤のリアルをお届けする。

マキロイとスコットの「スウィング修正法」

画像: スウィングに悪癖がついたと語るマキロイ。「FLAT CATグリップ」による修正で復活できるか(写真は26年全英オープン)

スウィングに悪癖がついたと語るマキロイ。「FLAT CATグリップ」による修正で復活できるか(写真は26年全英オープン)

「この数カ月、スウィングに悪い癖がついてしまった」

そう赤裸々に告白したのは、現代最高のボールストライカーであるローリー・マキロイだ。

「試合が続くと、スウィングのことよりもショットを打つこと(結果)ばかりに意識がいき、視覚的・直感的になりすぎる。そうすると悪い癖が戻ってきてしまうんだ」

画像: パター用の「FLAT CAT」グリップ。これを45度の角度にさしてボールを打つとマキロイは話す

パター用の「FLAT CAT」グリップ。これを45度の角度にさしてボールを打つとマキロイは話す

この悪癖を修正するため、マキロイが目をつけたのは「FLAT CAT」という特殊な形状のパターグリップだ。これを通常のクラブに45度の角度で装着し、ハーフバックの際に右手が正しい位置(グリップの平らな部分)に乗る感覚を身体に叩き込んでいるという。

「この感覚を定着させるために、ただひたすら何百球もボールを打たなければならないんだ」

2024年末に数週間の休みをとって敢行したスウィング改造により、2025年開幕直後は3勝とロケットスタートを切ったマキロイ。しかし、過密日程の中で結果を求めるうちに、知らず知らず悪癖が顔を出していたのだ。彼は今週月曜日もフロリダの自宅でコーチのマイケル・バノンらと付きっきりでこの「Flat Cat」の特訓を行ってから、ここベルリーブCCへ入ってきた。天才と称される男でさえ、泥臭く己のスウィングと向き合い続けている。

画像: アイアンをキャロウェイの「Apex MB Tour Ra w」に替えてからショットがさらに向上したとアダム・スコット(写真は26年全英オープン)

アイアンをキャロウェイの「Apex MB Tour Ra​​w」に替えてからショットがさらに向上したとアダム・スコット(写真は26年全英オープン)

一方、不惑を過ぎても美しいスウィングを維持し続けるアダム・スコットのアプローチは、より微細なものだ。彼は「技術的な変更にはリスクが伴う」と語りつつも、今年の前半に「左膝の動き」を少しだけ修正したことを明かした。

「今はもうあまり意識していないが、その修正のテーマが今年1年を通じて良い結果をもたらしていると思う」

さらにスコットは、好調の要因として「クラブの固定」を挙げた。

「何年か色々なアイアンを試したが、12カ月前にやっと気に入ったセットを見つけた。一つのものに固執した一貫性が、アイアンショットの向上に役立っている」

不惑を過ぎたスコットにとって、今週の舞台であるベルリーブCCは「最も悔しく、かつ最も自信を宿す場所」でもある。ここで開催された2018年の全米プロゴルフ選手権で、彼は「70-65-65-67」の単独3位に入り、最終日まで熾烈な優勝争いを演じた。あれから時を経て、12カ月間固定し続けた頼れるアイアンを手に、相性の良い思い出の地で最終戦進出を狙う。

フィッツパトリックとホブランの「試行錯誤」

画像: いまやマット・フィッツパトリックの代名詞ともいえるクロスハンドアプローチ(写真/Getty Images)

いまやマット・フィッツパトリックの代名詞ともいえるクロスハンドアプローチ(写真/Getty Images)

マキロイやスコットがスウィングの修正に取り組む一方で、マット・フィッツパトリックはショートゲームに劇的な変化をもたらした。「クロスハンド(逆オーバーラップ)」でのチッピングの導入である。

「2022年の初めに自分のスタッツを見て、フェアウェイからのアプローチが十分ではないと判断したんだ」

元々はフルスウィングの軌道を良くするための練習ドリルとしてクロスハンドを取り入れていたが、それを実戦のチッピングに昇華させた。

「フェアウェイからは本当に素晴らしい。コンタクトの安定感が増したよ」

一見風変わりに見えるこのクロスハンドチッピングだが、その効果は数字が如実に証明している。実は、プレーオフ史上(2007年〜)のスクランブリング(寄せワン率)において、彼は「68.05%」というツアー歴代1位の驚異的な数字を叩き出しているのだ。さらに「5フィート(約1.5メートル)以内のパット成功率」も「98.54%(686回中676回成功)」で、こちらも歴代1位。この緻密な選択こそが、彼をプレーオフ史上最強のスクランブラーに仕立て上げている。

しかし、彼はその弱点も隠さない。

「ラフからだと手首の角度が作れないから難しい。ロブショットのようにボールを上げることもできないんだ」

明確な弱点を受け入れてでも、フェアウェイからの確実性を取る。これもまた、プロのシビアな選択である。

画像: ロングゲームが足を引っ張っていると話すビクトール・ホブラン(写真は26年全英オープン)

ロングゲームが足を引っ張っていると話すビクトール・ホブラン(写真は26年全英オープン)

そして今、最も深いスウィングの迷宮でもがいているのが、ビクトール・ホブランだろう。

「かつてはショートゲームが弱点で、そこは大きく改善された。でも今は、自分の最大の武器だったはずのロングゲーム(ドライバー)が足を引っ張っている」

彼の悩みは「右へスッポ抜けるスライス」だ。彼が「力みのないスウィングを取り戻したい」と語る2023年、まさにこのBMW選手権最終日に「61」をマークして逆転優勝を果たし、そのままフェデックスカップ王者に輝いた。当時のSG: Tee-to-Greenは「+1.882」とフィールドを圧巻していたが、本人が「この数年はボールストライキングが劇的に悪化した」と認めるほど、現在の葛藤は深い。

「左に打ち出して右に曲げるフェードを打ちたいのに、右に飛び出してさらに右に曲がってしまう球が出る。これが一番厄介なんだ」

ホブランは自身の現状を客観的に分析する。

「プレッシャーがかかった時に『絶対にこう動く』という予測可能なショットが、今は打てない。だから苦労しているんだ。でも、なぜそのミスが出るのか原因は分かっている。あとは解決策を見つけるだけだ」

スウィングの迷宮に挑むトッププロたち

どんなに輝かしい実績を持つトッププロであっても、スウィングの悩みやギアへの探求が終わることはない。

特殊なグリップで何百球も打ち込むマキロイ、独自のチッピングスタイルを貫くフィッツパトリック、そして失われた「自分の球筋」を取り戻そうともがくホブラン。スウィングの迷宮で泥臭く足掻きながらも進化を止めない彼らの姿を知れば、週末のトーナメント中継はさらに味わい深いものになるはずだ。

写真/R&A提供


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