PGAツアーの年間王者を争うフェデックスカップ・プレーオフ第2戦「BMW選手権」は、ウィンダム・クラークの鮮やかな優勝で幕を閉じた。そしてこの結果をもって、次週の最終戦「ツアー選手権」へ進出する「トップ30」の顔ぶれが確定した。華やかなスコアと巨額の賞金が飛び交うリーダーボード。しかし、その裏側で、トッププロたちがどれほどの「肉体的な痛み」と「精神的な消耗」を抱えながら戦っていたか。大会終了後の会見で彼らが明かしたリアルな葛藤からは、棄権してもおかしくない極限状況の中で1打を紡ぎ出す、プロゴルファーの壮絶な生き様が浮かび上がってくる。

世界1位シェフラーを襲った「手足口病」と意地の完走

画像: 「フェデックスセントジュード選手権」からの2連勝、および「BMW選手権」2連覇を狙ったスコッティ・シェフラーだが、予期せぬ病魔の影響もあり12位タイでフィニッシュ(写真は26年全英オープン)

「フェデックスセントジュード選手権」からの2連勝、および「BMW選手権」2連覇を狙ったスコッティ・シェフラーだが、予期せぬ病魔の影響もあり12位タイでフィニッシュ(写真は26年全英オープン)

今季すでに2回の優勝を飾り、圧倒的な強さでフェデックスカップランキング1位を独走するスコッティ・シェフラー。今大会は通算7アンダーの12位タイに終わった。

どことなく本調子ではない様子だったが、その原因はスウィングの乱れでもプレッシャーでもなく、予期せぬ「病魔」だった。

「月曜日の夜に手足口病にかかってしまったんだ。手や足、それに喉にも水ぶくれができてしまった」

シェフラーは囲み取材でそう告白した。手足口病は大人が発症すると重症化しやすく、強い痛みを伴うことで知られている。「週の初めはクラブを握るだけでかなり痛く、練習やウォーミングアップすらまともにできない状態だった」という。周囲からは棄権を勧められたが、彼は頑として首を縦に振らなかった。

「自分が賢かったら棄権していたかもしれない。でも、僕はこれまで一度もトーナメントを途中で投げ出したことがないんだ。それが僕の強みでもあり、時に弱みでもある。ただ最後まで戦い抜きたかった」

そう語る彼の生来の強靭さが、激痛に耐えながら72ホール完走へと導いた。18番グリーンを終えた直後には、こんな微笑ましい一幕もあった。

「18番でうっかり同組のキャム(キャメロン・ヤング)と握手しそうになって、ハッと踏みとどまったんだ。感染させてしまったら本当に申し訳ないからね(笑)。危ないところだったよ」

極限状態の中でも周囲への気遣いとユーモアを忘れなかった点に、王者の素顔が滲む。

マッキンタイアとウッドランドの「痛みの乗り越え方」

画像: シェフラーが手足口病なら、マッキンタイアは右ひざの激痛に見舞われていた(写真は26年全英オープン)

シェフラーが手足口病なら、マッキンタイアは右ひざの激痛に見舞われていた(写真は26年全英オープン)

シェフラーが手足口病と闘っていた一方で、スコットランドのロバート・マッキンタイアは右ひざの激痛に顔を歪ませていた。

「右ひざの裏にベーカー嚢腫(のうしゅ)ができてしまってね。ラインを読むためにしゃがんだりすると、刺すような痛みが走るんだ」と明かす。この膝の不調はゴルフではなく、彼の故郷スコットランドの過激な伝統球技「シンティ」を若かりし頃にプレーしていた際の古傷が原因だという。彼は前週の大会を棄権し、今大会に賭けていた。
「ベーカー嚢腫」とは、ひざの裏側(膝窩部)に関節液がたまって袋状に腫れる良性の病気

そんな彼を救ったのは、キャディのマイケル・バローからの助言だった。マイケルはジャスティン・ローズの担当だったスポーツ心理学者に連絡を取って、ローズに伝授した「マニフェステーション(思考の現実化)」を教えてもらい、それをマッキンタイアに応用することを提案したのだ。

「毎晩家で『ルディ/涙のウイニング・ラン』などのポジティブなスポーツ映画を観て、できると信じ込んだ。どうやら効果があったようだね」

映画の主人公のようにポジティブな自己暗示をかけ続けたマッキンタイアは、見事に通算10アンダーの7位タイでフィニッシュ。ポイントランキングを36位から25位へと上げ、3年連続となる最終戦への切符を掴んだ。

画像: ポイントランク31位から18位にジャンプアップして最終戦の切符を手にしたゲーリー・ウッドランド(写真は26年全英オープン)

ポイントランク31位から18位にジャンプアップして最終戦の切符を手にしたゲーリー・ウッドランド(写真は26年全英オープン)

そしてもう一人、壮絶な戦いを終えた男がいる。昨年、脳病変の手術を経験したゲーリー・ウッドランドだ。

「昨日は本当にしんどかった。大歓声や頭上を飛ぶドローンの音が気になって、エネルギーを完全に奪われてしまったんだ」

脳への負担と戦う彼にとって、ギャラリーの大歓声すらも過酷な試練となる。それでも彼は最終日、「今日はすべてを受け入れて、自分を誇りに思おう」とマインドを切り替えた。

9番ではティーショットをトップして池に入れた際、コーチのランディは衝撃的なミスを「oops」と表現した。ウッドランド本人も「こんなミスショット、本当に、本当に長い間打ったことがなかったから、何より自分自身が一番ショックを受けたよ(笑)」と振り返る。

しかし、このホールはダブルボギーとしながらも崩れず、その後は泥臭くパーを拾い続けて通算12アンダー・4位タイでフィニッシュ。ポイントランキングを31位から18位へ跳ね上げ、全米オープンを制覇した2019年以来、実に「6年ぶり」となる夢の最終戦(イーストレイク)への切符を掴み取った。

【動画】ゲーリー・ウッドランド自身が「プロ入り後、自分史上最悪のティーショット」と話す【PGAツアー公式X】

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「今年、自分が何を乗り越え、何と戦ってきたかを考えれば、来週あの場所に立てるなんて、自分自身をこれ以上ないほど誇りに思うよ」

そう語る彼の目には、確かな充実感が宿っていた。

華やかな舞台裏で繰り広げられる「男たちのサバイバル」

完璧な体調とメンタルで戦っている選手など、このフィールドには一人もいないのかもしれない。手にできた水ぶくれの激痛に耐え、膝の痛みを映画で紛らわせ、消耗する脳を必死にコントロールする。

華やかなスコアと巨額の賞金の裏にある、世界最高峰の男たちの泥臭くも尊いサバイバル。次週の最終戦「ツアー選手権」で、限界を超えた彼らがどのようなドラマを見せてくれるのか、ますます目が離せない。

写真/R&A提供


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