
今年のWMフェニックスオープン3日目の最終組で一緒にラウンドした松山英樹と久常涼。いまの日本人最強コンビにはブラント・スネデカーも警戒する
「リョウ・ヒサツネ(久常涼)は若く有望な選手だ。ツアーで彼のことを少し知るようになったが、彼のゲームには大きな敬意を持っている。彼とヒデキ(松山英樹)はタフなペアリングになるだろうね」
松山英樹と久常涼。敵将であるスネデカーが彼らの実力を高く評価し、ペアとしての潜在的な脅威を認めている背景には、23歳の久常が見せる著しい躍進がある。今季のPGAツアーでは「ファーマーズインシュランスオープン」での単独2位をはじめトップ10入りを5回記録し、フェデックスカップ・ポイントランク47位でプレーオフに進出。オギルビー主将も「リーダーボードに名を連ねることでアメリカのファンも彼を知り、質の高いパフォーマンスとチャーミングな人柄が彼を勝者にしている」と大絶賛を贈っている。日本のファンにとっても、これ以上ない頼もしいニュースと言えるだろう。
米国チームの選考哲学「直感と若き血」
では、スネデカー主将率いる米国チームは、どのような基準で12名の精鋭を選び抜いたのか。会見の中で彼は、ジャック・ニクラスら歴代の名キャプテンたちから受けたアドバイスを明かしている。
「全員が口を揃えて『自分の直感を信じろ』と言った。だから私は直感を信じたんだ」
その直感の象徴とも言えるのが、21歳のジャクソン・コイブンの大抜擢である。2015年のジョーダン・スピース以来となる最年少米国選抜となったコイブンは、プロ転向わずか3戦目の「3Mオープン」で世界ランク1位のスコッティ・シェフラーを抑えて初優勝を果たし、PGAツアーの72ホール最少スコア記録(25アンダー、259ストローク)を樹立した。スネデカーはこう絶賛する。
「バックナインでスコッティ・シェフラーを見据えながら、全く瞬きすらしなかった。あれは本当に印象的だった。それに、彼のゲームには穴がない」
さらに今季3勝(ソニーオープン・イン・ハワイ、WMフェニックスオープン、ジョンディアクラシック)を挙げ、プレーオフ2大会を連続トップ5で終えた27歳のクリス・ゴッタラップも選出。強心臓と完成された技術を持つ若手を引き上げ、直感を信じてチームに勢いのある「若き血」を注入することこそが、スネデカーの描く戦略の核なのだ。
インターナショナルチームの選考哲学「データとシールドの結束」
対照的に、ジェフ・オギルビー主将率いるインターナショナルチームは、「データとチームの融和」という明確なロジックに基づいて選考を行っていた。
その顕著な例が、南アフリカのクリスティアン・ベゾイデンハウトの選出だ。オギルビーは語る。
「公式世界ランクは彼のスキルを反映していない。ストローク・ゲインドなどのデータで見れば、彼は余裕でトップ12に入る。さらに、彼はチームルームに素晴らしいエネルギーをもたらしてくれるんだ」
ベゾイデンハウトは過去2大会のプレジデンツカップで「3勝1敗1分け(勝率7割)」、シングルス戦では「2戦2勝」と無敗を誇る最強のマッチプレーヤーでもある。
そのデータ重視の姿勢は、時に冷徹な決断をもたらす。かつての世界ランク1位でありメジャー王者の大看板、ジェイソン・デイの落選がその象徴だ。オギルビー主将は、全米オープン頃から腰のケガに苦しんでいたデイと全英オープン後に何度も対話を重ねた。4日間の過酷なマッチプレーを戦い抜くためにリハビリを急がせるのは「リスクが高すぎる」と判断。名前や実績ではなく、「4日間を戦い抜ける確実なコンディション」というロジックを最優先したのだ。
インターナショナルチームにとって、もう一つの重要な哲学が「結束力」だ。自国カナダで開催された前回2024年大会で選考漏れとなり悔し涙をのんだニック・テーラーは、パリオリンピックでも共に戦った同郷のコリー・コナーズとの「家族ぐるみの絆」を武器に悲願の初出場を掴み取った。オギルビーは、アーニー・エルスが持ち込んだ「シールド(盾)」のロゴの重要性を強調する。
「私たちは一つのアイデンティティを持ったユニットになった。どこから来たかは関係ない。シールドの下で、私たちは一つにまとまっている」
さらに、インターナショナルチームには強力な「隠し味」が存在する。実は、開催地メダイナCC・コースNo.3の大規模改修(リデザイン)を手掛けたのは、オギルビー主将自身が共同設立したゴルフ場設計会社「OCM(Ogilvy Cocking Mead)」なのだ。敵地の完全アウェイに乗り込むチームでありながら、「自らコースをデザインした頭脳」が指揮官として采配を振るう。データに裏付けられた実力と、コースを熟知する頭脳、そして強固な結束力。それが彼らの誇る武器なのだ。
「直感」の米国 vs 「ロジック」の国際選抜、歴史的激突へ
「直感」を信じ、強烈な個の力と若き才能を融合させようとするスネデカー率いる米国チーム。一方、「データと結束力」を武器に、自ら設計した舞台でシールドの旗の下に一枚岩となって立ち向かうオギルビー率いるインターナショナルチーム。全く異なるアプローチで構築された両軍の激突は、個人戦では決して見られない奥深いドラマを生み出すに違いない。そして、米国主将が名指しで警戒する「ヒデキとリョウ」が、その重圧の中でどのような輝きを放つのか。決戦の日は、もう間もなくやってくる。
写真/岩本芳弘
