アイルランド西海岸のドンベッグに、割れんばかりの大歓声が響き渡った。地元アイルランドのファンが熱狂する中、シェーン・ローリーが「アムジェン アイルランドオープン」の栄冠を手にした。彼がこのナショナルオープンを制したのは、2009年に23歳のアマチュアとして成し遂げて以来、実に17年ぶりのことだ。ローリーは最終日もボギーフリーの「63(7アンダー)」を叩き出し、通算23アンダーをマーク。2位のホアキン・ニーマンやパトリック・リードらに「11打差」をつける歴史的な大圧勝劇を演じてみせた。「2019年の全英オープン(ポートラッシュ)での優勝が最高だと思っていたが、これも信じられない」。そう本人が語るほどの、特別で感情的な瞬間だった。マスターズ以降、不調や精神的な空虚感(「風が抜けたような状態」)に苛まれていたローリーは、PGAツアーのメンフィス戦終了後、コーチやトレーナーらチーム全員をフロリダの自宅に呼び寄せ、1週間の緊急ブートキャンプ(集中特訓)を実施。「ハードワークが報われることを証明できた」と目頭を熱くした復活劇でもあった。

「一緒に歩けて幸せだ」——相棒ダーモットとの再タッグ

プロゴルファーにとって、キャディは単なるバッグを運ぶ人間ではない。ローリーのこの優勝の裏には、再タッグを組んだキャディ、ダーモット・バーンとの熱い絆があった。

画像: 満面の笑みを浮かべるシェーン・ローリーと彼のキャディを務めたダーモット・バーン

満面の笑みを浮かべるシェーン・ローリーと彼のキャディを務めたダーモット・バーン

ダーモットは、ローリーのプロキャリアの最初の約10年を共に戦った相棒だった。しかし、二人は一度コンビを解消。その後、ローリーは別のキャディ(ボー)とともに2019年の全英オープンでメジャー制覇を果たすことになる。

「全英オープンを勝ってポートラッシュの18番を歩いている時、彼(ダーモット)が一緒にいなくて申し訳なく思っていたんだ」

ローリーは優勝会見で、かつての相棒への密かな思いを明かした。そして今シーズンの中盤、成績が低迷し「新鮮な空気」を必要としていた彼は、再びダーモットにバッグを託すことを決断した。

「今日、18番フェアウェイを一緒に歩けて、これ以上ないほど幸せだった。彼以外の誰かと歩くことは考えられなかったよ」

メジャー制覇の歓喜を分かち合えなかった無念を、17年ぶりの母国ナショナルオープン制覇という最高の舞台で晴らす。二人の熱き友情が、この優勝をさらに特別なものにしていた。

またローリーは会見で、前週に母国のクローク・パークで感動的な勝利を飾ったボクシング世界女王ケイティ・テイラーの試合を観ていたと明かした。「地元ファンの大声援を受けて戦う彼女の姿を観て、少し嫉妬を覚えていたんだ。今週、自分も母国ファンの前でそれを達成できて信じられない気分だよ」と語る通り、アイルランドの国民的英雄から受けた刺激が大きな背中押しとなっていた。

リードがあっても消えない恐怖:18番ティーのリアル

最終日、ローリーは後続を大きく引き離して独走していた。テレビで見ているファンからすれば「11打差の楽勝」に思えるが、当事者の心中は全く異なっていた。プロゴルフの世界の重圧は、それほどまでに過酷なのだ。

15番ホールでバーディパットを沈めたローリーは、キャディのダーモットに「どれくらいリードしている?」と尋ねた。ダーモットの答えは「十分だ」だった。しかし、16番でスコアボードを見たローリーは「10打差」もあることを知ると、逆にプレッシャーを感じ始めたという。

その恐怖のピークは、最終18番のティーグラウンドだった。「月曜日の練習ラウンドで、私は18番のティーショットで左に50ヤードも曲げてOBを打っていた。だから今週はずっと、あのティーショットのことが頭から離れなかったんだ」とローリーは告白する。

「10打差あっても、『早くこのティーショットを終わらせたい』としか考えられなかった。素晴らしいティーショットが打てて、ようやく心から解放されたよ」

どんなに大差がついていても、たった一打のミスが致命傷になるという恐怖が付き纏う。極限の重圧に苛まれながら戦うプロのリアルな心理が、そこにはあった。

【動画】S・ローリーが「恐怖を感じていた」と話す72ホール目のティーショットはこちら【DPワールドツアー公式X】

@DPWorldTour post on X

x.com

家族とファンへ捧ぐ勝利

すべての重圧と恐怖を乗り越え、母国のファンの前でトロフィーを掲げたローリー。会見では、フロリダで待つ妻と子供たちへの感謝を口にした。

「成績が出ない時、家でも辛かったと思う。でも妻は常にサポートしてくれた。娘がいつも『いつトロフィーを持って帰ってくるの?』と聞いていたから、早くこのトロフィーを持ち帰りたいよ」

会見の最後、会場を訪れていたトランプ米大統領が表彰式直前に「アイルランド産ウイスキーへの関税撤廃」を表明した件に話題が及ぶと、ローリーは「アイルランドのウイスキー業者は、俺に感謝の小切手を送ってくるべきだね(笑)」とお茶目なジョークを飛ばし、会場のメディアを大爆笑させた。

不調や自己不信を乗り越え、最高の相棒とともに手にした17年ぶりのナショナルオープン・タイトル。愛嬌と強さに満ちたシェーン・ローリーの勝利は、ドンベッグの歴史に深く刻み込まれた。

写真/Getty Images


This article is a sponsored article by
''.