国内女子ツアーは後半戦を迎え、年間女王争いも佳境に入っていく。この華やかなプロの舞台へ上るための“切符”となるのが女子プロテスト合格だ。近年、これをつかみとるための熾烈な戦いが続いている。その戦いの合間、9月中旬に山梨県の小淵沢CCで、女子研修生を対象とした試合「IKIGAI CUP」が開催された。今年で5回目を数える本大会は、2025年12月に急逝した同クラブのオーナー・中村和男氏の「IKIGAI」に関する考え方とゴルフを融合させ、女子研修生を支援する大会として定着している。

甲府市出身で医薬品開発支援のシミックホールディングス創業者であり、会長を務めていた中村氏は、小淵沢という土地を「生きがい」の中心地にするため、美術館などの文化活動や、乗馬・ゴルフ場などのスポーツ・ウェルネスをテーマにした取り組みを展開してきた。

「IKIGAI(生きがい)」とは、社会との関わり(楽しい仲間との交流)、自分にとって興味のあること、少しでも対価が得られること、そして学びであると考えていた中村氏。ゴルフについては、仲間との交流を楽しみ、スコアで競い合うことでインセンティブが生まれ、好きなゴルフを続けたいと思うがゆえに体を鍛え、常にゴルフのことを考え、いつまでもプレーしたいと願うものだと捉えていた。ゴルフこそまさに「生きがい」であり、ゴルフを通じて健康長寿を保つことができると考えていたのだ。

「私たちは、ゴルフの素晴らしさを『IKIGAI』という観点で見直すと同時に、このゴルフの素晴らしさを世代を超えて推進していくリーダー養成を支援するために『IKIGAI CUP』を開催することにしたのです。次の世代のリーダーとしてゴルフだけでなく、広い視野と教養ある人間形成をしてもらうためにも、我々の用意する賞金はまさにプロゴルファーを目指す女子への奨学金です」(同クラブ代表・佐藤義信氏)

今年は、女子研修生はもちろん、歴代優勝者および本大会参加経験者でプロになった選手に特別参加枠を設け、次世代の選手たちにとって目標となる舞台を創出したという。

各自の「IKIGAI」を見出した1日

画像: 本大会のトップ3(左から渡邊詩織、園田結莉亜、岡田梨沙)。交流、挑戦、対価……ゴルフを通じた、それぞれの「IKIGAI」を改めて見出し、喜びや意義を感じた1日となったに違いない

本大会のトップ3(左から渡邊詩織、園田結莉亜、岡田梨沙)。交流、挑戦、対価……ゴルフを通じた、それぞれの「IKIGAI」を改めて見出し、喜びや意義を感じた1日となったに違いない

さて、優勝者は大分出身、東北福祉大を卒業した25歳の園田結莉亜。今回の勝因を「ドローヒッターなので、8番パー3では右のピンに対しちょっと気持ち悪いホールだと思いましたが、しっかりピンに向けて打っていけたのが大きかった」と語る。

今年初めて受けたプロテストで勝ち上がり、最終テストに残っている。

「最終テストに向けて悔いなく準備をすることを目標にし、4日間1打1打諦めずに集中して頑張って、結果がついてきたらいいなと思っています」

本大会の賞金は、今年から挑戦している台湾ツアーの遠征費に使う予定だ。

「素晴らしい大会を開催してくれたスポンサーの皆さん、ありがとうございます。この優勝を自信にして、最終テストに合格して来年はツアーに出られるように頑張るので、これからも応援をお願いします」

画像: 観客も入場無料で受け入れた。見ることも、見られることも、ゴルフを通じて"生きがい“を感じられる1つとなる

観客も入場無料で受け入れた。見ることも、見られることも、ゴルフを通じて"生きがい“を感じられる1つとなる

2位は愛知出身、中京大学を卒業した25歳の岡田梨沙。

「優勝できず残念でしたが、有観客で盛り上がってよかったと思います。私はドライバーが得意なので、それを生かしたゴルフをしたい。今年のプロテストは2次で落ちてしまったので、来年は合格するように頑張りたいです」

3位は宮崎出身、流通科学大学を卒業した27歳の渡邊詩織。本大会は今回で3回目の参加だ。

「前々回が3位で前回が4位、今年ももう少しでしたが相性がよい大会だと思います。どちらかと言えば飛距離で勝負するタイプですが、今日はプロテスト帰りで疲れていたので、逆にパターでリズムが作れました。プロテストファイナルに残っているので、それに合格して地元の宮崎で行われるリコーカップに優勝したいと思っています」

それぞれにとっての現在の「生きがい」の1つはプロテスト合格だ。ちなみに昨年の第4回大会出場者からも、2人のプロテスト合格者が誕生している。

名匠の情熱が宿るコース

画像: 八ヶ岳、南アルプス、富士山を望むことができる美しい景観を持つが、戦略性も高いコース。「よい空気が吸える」(渡邊)「ラフが長い、何よりグリーンが12フィートですごく難しい」(園田)

八ヶ岳、南アルプス、富士山を望むことができる美しい景観を持つが、戦略性も高いコース。「よい空気が吸える」(渡邊)「ラフが長い、何よりグリーンが12フィートですごく難しい」(園田)

また、参加者が「とにかく景観がきれい」と口をそろえる小淵沢CCは、2026年7月末に亡くなった川田太三氏の“遺作”となったコース。後半生において大きな情熱を持ち、成田GC、イーグルポイントGC、千葉CC、大利根CCなど数々のコース設計と改修に取り組んだ川田氏は、亡くなる直前まで小淵沢CCのことを気にかけていたという。まさに「生きがい」そのものだったのだろう。

さまざまな「生きがい」が交錯し、新しい「生きがい」が生まれてその先へつながっていく――そんな温かくも熱い大会となった。

写真/大会提供


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