今季「マイヤー LPGAクラシック」と「CPKC女子オープン」で2勝をマークし、日本人最速となる42試合での米ツアー4勝到達という偉業を成し遂げた山下美夢有。とくに「CPKC女子オープン」では、2位に9打差をつける圧勝劇でツアー最少ストロークタイ記録(23アンダー)を樹立した。米ツアーでの4勝をすべて「異なる4カ国(ウェールズ、マレーシア、アメリカ、カナダ)」で達成している山下は、卓越した環境適応力を証明し、現在世界ランク5位とキャリア最高潮の充実期を迎えている。そんな彼女は今週、ハワイのオアフ島にあるホアカレイカントリークラブ(6530ヤード・パー72)で「ロッテ選手権」に挑む。開幕を直前に控えた現地は、あいにくの雨模様。そして、この雨がもたらしたコースコンディションの変化と南国特有の自然環境が、今大会の行方を大きく左右する要因となりそうだ。

13ホールで水が絡む「ホアカレイCC」の罠と重い海風

画像: 初日は西郷真央、アレクサ・パノと1番ティーから現地時間の午後12時3分(日本時間の10月2日朝7時3分)スタートの山下美夢有(写真は26年ソニー日本女子プロ、撮影/姉崎正)

初日は西郷真央、アレクサ・パノと1番ティーから現地時間の午後12時3分(日本時間の10月2日朝7時3分)スタートの山下美夢有(写真は26年ソニー日本女子プロ、撮影/姉崎正)

プロアマ戦を終え、山下の口から出たのは、この難コースに対する率直な警戒の言葉だった。

「今日は雨が降っていたので、グリーンは柔らかくボールはよく止まってくれます。でも、コース自体は非常に難しいと感じています」

山下を警戒させる最大の要因は、ハワイ特有の重い海風だ。

「海から様々な方向の風が吹いてくるので、今週はそれをどうマネジメントするかが鍵になります」

特に彼女が難所として挙げるのが、15番から18番ホールにかけての上がり4ホールだ。中でも最終18番(パー5)は右側全体に池が重なり、前年大会での2オン成功率がわずか2.7%にとどまった屈指の難関ホール。

コース全体としても13ホールで水ハザードが絡み、112個の砂バンカーが配置された米ツアー最大級の広さを誇るパスパラム芝グリーンが待ち受ける。「風を読むのが本当に難しい」と語るように、目まぐるしく変わる海風をいかに読み解き、無傷で切り抜けるかが上位進出への絶対条件となる。

ライバルが警戒する難天候を「楽しむ」圧倒的フィーリング

では、この読みにくい複雑な風に対し、彼女はどのようなアプローチで挑むのか。ここからが、“世界トップクラス”たる山下の真骨頂だ。

「もちろん風は読みます。でも、最終的には自分のフィーリング(感覚)を信じようと思っています。その感覚に従って、どのクラブで打つかを決めるつもりです」

緻密な計算やヤーデージブックの数字にとらわれすぎず、その場で肌に感じる「感覚」を最優先する決断。この研ぎ澄まされたメンタルコントロールこそが、今の彼女を支えている。

その揺るぎないプレースタイルを裏付けるのが、今季ツアー1位を誇る「67.79%」という驚異的なリカバリー率(Scrambling)と、ツアー3位(69.74)につける平均ストロークの安定感だ。風に翻弄されグリーンを外したとしても、そこから粘り強くパーを拾い切る確かな技術。その根底にある「感覚への絶対的な信頼」が、難攻不落のホアカレイCCで最大の武器となる。

同日の会見で、世界ランク2位のジーノ・ティティクルが「強風と大雨でプレーが非常に難しくなる」とハワイの過酷な天候へ強い警戒感を露わにする一方、前年の雪辱(23位タイ)を誓う山下に気負いはない。

「これほどの風の中でプレーするのは珍しいことですが、この風を楽しみながら、次戦のアジアシリーズに向けてしっかりと準備を整えたいです」

過酷な自然環境すらも「楽しむ」精神的余裕を見せる世界ランク5位のプレーメーカー。計算を超越した彼女の“感性ゴルフ”が、ハワイの風を切り裂き、どのようなドラマを生み出すのか。開幕のティーショットから目が離せない。


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