「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

ティーショットで使うとなると5番ウッドでは物足りない

GD 今日はPRGRの2026年モデル「RSフェアウェイウッド」を試打していただきました。YouTubeなどの試打動画でも「とにかく飛ぶ!」とかなり好評だったので、これは実際に打って、その性能を確かめておかなければと思いました。
 
そこで気になるのがセッティングです。今の5番ウッドは、飛距離性能がすごく上がっています。そうなると、「もう3番ウッドはいらないんじゃないか」という話になってくるわけですが、実際に3番ウッドを抜いているアマチュアが増えている一方で、ドライバーと5番ウッドの間がポッカリと空いているようにも思うんです。今日は「今の5番ウッドは3番ウッドの代わりになり得るのか」という点も含めて、お話しいただけますか。

長谷部 そうですね、個人的にはもう長く3番ウッドを抜いていて、代わりに4番ウッドを色々試しているんです。というのも、4番ウッドと5番ウッドの大きな違いは「球の高さ」にあります。5番ウッドは圧倒的に球が高く上がりますが、4番ウッドなら上がりすぎず、強い低い球が打てる。それでいて、3番ウッドほど難しくないのが魅力なんです。
 
最近は海外メーカーを中心に「HL(ハイロフト)」や4番ウッドのラインナップが増えてきましたが、日本のメーカーはまだ少ないです。ただ、今の5番ウッドは高性能化が著しいので、カチャカチャ(可変スリーブ)でロフト18度を1度立てて17度にすれば、十分に4番ウッドの代わりを作れます。そう考えると、今は5番ウッドを主軸にしてセッティングを考えるのが一番現実的だと思います。

GD 日本のメーカーは完全に「3番・5番・7番」の3本構成で9番ウッドはほぼない状態ですが、外ブラは「3・5・7」を軸にその間も細かく揃えています。特にキャロウェイなどは。

長谷部 細かくありますし、9番ウッドや11番ウッドなど下の番手も作っています。キャロウェイはフェアウェイウッドに強いメーカーの元祖なので、その重要性を十分認識しているのだと思います。

GD 海外ブランドが奇数番手(3・5・7番)主流になったことで、日本メーカーも4番ウッドを作らなくなりました。それによって「3番=15度、5番=18度、7番=21度」というロフト体系が定着した気がします。

長谷部 その通りです。4番ウッドがあった頃の「長さとロフトの階段」が崩れ、日本メーカーも海外ブランドのスペックに引っ張られてしまった背景があります。
 
ただ、平均的な日本人のヘッドスピードや芝から打つ難しさを考えると、もともと3番ウッドはアマチュアが使いこなせるクラブではなかったのかもしれません。上級者やツアープロならティーショットなどで上手く駆使できますが、一般のアマチュアにとっては、どうしても“お飾り”になってしまいがちでしたからね。

GD ですが、4番ウッドのあった頃の5番ウッドは、「やさしいお助けクラブ」で飛ばない印象が強かったです。それに比べると、最近の5番ウッドはやたら飛ぶ気がするのですがどうでしょう。

長谷部 昔の5番ウッドは、前重心にも低重心にもなりきっていないモデルが多く、どうしても球が高く上がりすぎていたんです。結果的に200ヤード飛ばすのが精一杯で、あと10ヤード伸ばしたくてチタンヘッドを試しても、上に上がる力が強くて前に行ってくれない。だからこそ私は4番ウッドを探していたんです。
 
でも、わざわざ4番を探さなくても「ちゃんと飛ばせる重心設計の5番ウッド」が出てくれれば、アマチュアにとってはそれが一番ありがたいわけです。今回のPRGR「RSフェアウェイウッド」はまさにそれに近くて、球が吹け上がらずに強い弾道で前に飛んでくれました。

GD 最近のフェアウェイウッドは、操作性と引き換えにとにかく飛ぶようになっています。クラブの進化によって「何かを得ると、別の番手が不要になる」という現象が起きますが、いま3番ウッドが消えつつあるのも、結局は5番ウッドの飛距離性能が伸びて追いついてきたからでしょうか。

長谷部 それもありますが、前提として3番ウッドは「長くてロフトが立っている」という、アマチュアには圧倒的に難しいスペックだったからです。
 
一方で5番ウッドは、長さもロフトもやさしくてしっかり振り切れる。これまでは「やさしい=飛ばない」だったのが、反発性能の向上やここ5年で進んだ低重心化によるロースピン性能が進んだことで、「やさしくて飛ぶクラブ」へと進化しました。その結果、わざわざ難しい3番ウッドを入れる理由が完全になくなってしまった、というのが本質だと思います。

GD アイアンのストロングロフト化は、実際のロフト角に対して刻まれる数字が変わっていく「番手ずらし」だと言われています。一方のフェアウェイウッドは、ウェッジと同じように「何番」という数字よりも、「何度」というロフト角そのものが重視されてきている気がします。
 
今の5番ウッドや7番ウッドが、昔の3番ウッドや4番ウッドの役割に置き換わっているのは、アイアンのような番手ずらしとはまた違う現象でしょうか。

長谷部 違いますね。アイアンのような表記上のずれではなく、FWはより実質的な「ロフト角本位」で選ぶ時代になってきているんだと思います。
 
極端な話をすれば、ショートウッドも含めたフェアウェイウッドは、すべて同じシャフト長さにしてもいいとすら思っているんです。そうなると、ウェッジと同じように純粋な「ロフト角の違い」だけで飛距離の階段を作ることになります。
 
ヘッドの進化で球さえ上がるなら、15度(3番ウッドのロフト)であっても42インチのような短めの長さで設計できます。キャロウェイの「ミニバフィー」や「スピナー」のように、少し短い長さでロフトを活かして打っていくスタイルは、新しい機軸としてもっと評価されていいと思います。

GD 仮にドライバーの次が5番ウッドだとすると、ティーショットでレイアップしたいときに5番ウッドでは物足りないからと、「ティーショット専用」として3番ウッドを入れる人もいます。出番は少ないけど、もしもの時に必要だという考えが根強く残っている気がします。

長谷部 「曲げたくないからドライバーじゃなく3番ウッドで刻む」という選択をする人をよく見かけますが、実は上手くいっていないケースが多いんですよね。3番ウッドはドライバーより吹け上がりやすく曲がるリスクもあるので、単に「シャフトが短くて当てやすい」というアシストでしかありません。直進性や方向安定性の機能は圧倒的にドライバーのほうが上なんです。
 
だからこそ、ミニドライバーや43インチ程度に短尺化したドライバーが注目されているわけです。もし14本の中に「ティーショット用ギア」を2本入れるなら、わざわざ難しい3番ウッドを選ぶより、短尺ドライバーを入れることをアマチュアには断然おすすめしたいですね。

GD アマチュアはどうしてもプロのように「1・3・5・UT……」と綺麗に番手を並べたくなる人も多いと思います。

長谷部 バッグの中身の見た目や体裁も含めて、美しく揃えたいという憧れはあると思います。ただ、本気でスコアを作りに行くなら固定観念にとらわれる必要はありません。ティーショット用クラブを2本入れてもいいですし、極端な話、ロングパット用とショートパット用で「パターを2本入れる」のだってアリなわけですから。
 
そもそも、フェアウェイから打つから「フェアウェイウッド」なんです。ティーショットの安心感は短尺ドライバーなどの専用ギアに任せて、5番ウッドには「芝からしっかり飛ばせる性能」を求める。そのほうがセッティングとして遥かに理にかなっていると思いますよ。

GD 振り返ってみると、テーラーメイドの「SIM」や「ステルス」が登場した2019〜2020年あたりが1つの境界線だった気がします。異素材を組み合わせた複合ヘッドによって飛距離性能が一気に向上し、単なる「やさしさ」から「飛ぶクラブ」へと大きく舵を切りましたよね。この時期こそが、3番ウッドから5番ウッドへ主役がシフトしたターニングポイントなのでしょうか。

長谷部 そうですね。あの頃からテーラーメイドのスライドウェイト搭載モデルやチタンヘッドなど、飛距離に特化したモデルが話題になり始めました。ただ、当時のツアー系チタンモデルはヘッドが小さく、アマチュアには少し難しかったんですよね。「もっと大型ヘッドでウェイト調整もできればいいのに」と思ったものです。
 
一方でキャロウェイなども含め、「反発性能と低重心で飛ばすチタンモデル」と、「ステンレスでやさしく球が拾える標準モデル」という2つの路線が並行してラインナップされるようになったのが、まさにその時期でした。そうした複合素材化と飛距離性能の向上が、「5番ウッドでも十分飛ばせる」という潮流を作ったのは間違いないと思います。

GD フェアウェイウッドに飛距離性能が強く求められるようになったのは、「300ヤードスプーン」が話題になった時期からでしょうか?

長谷部 まさに2012年に登場したテーラーメイドの「ロケットボールズ(RBZ)」ですね。あそこからフェアウェイウッドの「飛び」の概念が一気に変わりました。

GD あの頃から「FWでも飛ぶ」と言われ始めましたが、アマチュアがその進化を本当に実感できるようになったのは最近のモデルのような気がします。

長谷部 そうなんです。当時の「ロケットボールズ」は浅重心化による「低スピンの強いライナー弾道」で伸ばす発想だったので、ヘッドスピードがないと球が上がらず、アマチュアには少し難しかったんです。
 
それが現代のモデルでは、低スピンを維持しながら「高弾道でまっすぐ飛ばせる」テクノロジーへと進化しました。ヘッドの寛容性が上がり、長さやバランスを自分に合わせれば、アマチュアでも十分にその飛距離を体感できます。
 
ただ、市販モデルは今でも「3番は43インチ、5番は42.5インチ」といった長めの標準スペックで組まれています。長さが伸びるとそれだけ難易度も上がるため、ウェッジのように「純粋にロフト角の違いだけで番手を選ぶ」というわけにはいかないのが、今のフェアウェイウッドの難しさであり課題ですね。

GD 今日実際にPRGR「RSフェアウェイウッド」を試打していただきましたが、飛距離性能はここにきてさらに一段上がったと感じますか?

長谷部 明らかに上がっていますね。特に印象的だったのは「球の強さ」です。今回の「RSフェアウェイウッド」は5番ウッドはもちろん、7番ウッドも吹け上がらず、風に負けない力強い弾道で前に飛んでくれました。
 
これだけ「やさしくてボールが上がり、なおかつしっかり距離が出る」フェアウェイウッドが登場してくると、アマチュアが3番ウッドを手放して「5番・7番をメインにするセッティング」へ完全に切り替わる大きなきっかけになると思います。

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