
解説/佐藤信人
さとう・のぶひと。週刊ゴルフダイジェストの人気連載「うの目、たかの目、さとうの目」でもおなじみ。PGAツアーのあれこれを、マニアックな目線で徹底的に調査し、ゴルファーに伝えている
スピース、JT、ファウラー……
「プロ入り10年、ここから第二章が始まるはずです」(佐藤)
“さとうの目”は大会前の選手のSNSチェックから始まる。「ミンウー・リーがポケモンパークに行った楽しそうな写真をアップしていました。せっかくの機会なので、皆に日本食や日本文化を気に入ってほしいですね」。
本大会は練習日もギャラリーの観戦が可能。解説者としても人気がある佐藤プロにはあちこちで声がかかる。昨年から開催コースとなった横浜CCを1カ月前にラウンドしたという佐藤プロ。
「長雨があってコースの方は苦労されたと思います。今年は18番のグリーンを手前に出して、奥にギャラリー用のスペースを作りましたがティーイングエリアも後ろに下げ距離は変わっていない。このコースは昨年プレーした選手たちの評価が高い。大規模改修をしたベン・クレンショーの雰囲気に加え、日本らしく松の木を配置したコースはなかなかない。また、クリス・リー(PGAツアーアジア太平洋社長)は、今年は18番を見やすくしたり、ライブや花火大会を行ったり、ギャラリーバスを東戸塚駅からも走らせるなど、観客により満足してもらえるように力を入れたと言っていましたね」
昨年の優勝者、ザンダー・シャウフェレは、「日本では1カ月以上の記録的な降水量があったと聞いています。雨が溜まって流れた場所などは少し土の部分がありますが、40日近く雨が降ればグリーンキーパーやコース管理の方も手が付けられないはず。そんな状況でもコースは良い状態だと思います」と言う。コース管理の方にとっては心に染みる言葉だろう。
選手たちは、コースと日本のギャラリーを絶賛。嬉しい限りだ。
さて、佐藤プロと練習ラウンドに帯同した。7年ぶりの出場となったJ・スピース、祖父が日本人のR・ファウラー、前身のZOZOチャンピオンシップ以来2年ぶりのJ・トーマス(JT)、いずれも大人気の“仲良し3人組”がラウンドしていた。
「この華やかな3人の組を見られるのは楽しいですよ。スピースは22年から勝利がありません。PGAツアーには調子が悪いとコーチを代える選手も多いけれど、彼は代えずにきている。メカニックなスウィング改造を続けていて、この過程はなかなか難しいもの。でもここ数年は次への準備期間だと思います。実は今年のスタッツを見ると内容はよい。ストロークゲインド(SG)の各部門がほぼプラスですし来季は期待できます」

GCクワッドを使って一打一打を確認しながらプレーするスピースを見て。「僕の時代にあったら100%使っています。クラブの入り方やスピン量、どのくらい飛んだか毎ショットわかる。自分の手応えと毎回答え合わせできることは大きい」(佐藤・以下同)
実績ある3人はここ数年、思うような成績が出ていない。スピースとJTは33歳、ファウラー37歳。若手の台頭に押されているのか。
「3人ともプロ入り10年くらいで、皆、家族ができて優先事項も変わる。奥さんが子どもの面倒を見るため試合についてこないことでモチベーションも変わる時期でもある。でも、3人とも実力はあるので必ずまた結果は出ますよ。今大会の最年長は、アダム・スコット46歳、(岩田)寛は早生まれの同学年で45歳、キーガン・ブラッドリーは40歳です」
佐藤は後ろの組でラウンドしていた松山英樹に目を向け、「そう考えると、松山くんがずっと活躍し続けていることのすごさがわかりますよね」としみじみ。「技術が高いのは当たり前ですが、人一倍負けず嫌いで内面が強く、妥協しない気持ちも失われていない。ウィンダム選手権の予選ラウンドで松山くんと(ジャクソン)コイブンが同組に。アメリカでは一番注目されている若手ですし、こういうときの松山くんは絶対負けないのではと思っていたら、やはり初日は65(コイブン67)でしっかり勝った。本人の意識はわかりませんが、きっと普段日本の若手には負けないと意識するように、『こういう若手にもしっかり見せておく』ことをしたのではないでしょうか。ここぞでスイッチが入る。長く上にいる理由の一つだと思います」
そして、松山のアプローチ練習に佐藤の目は向く。
「外してはダメなショートサイドやあえて難しいライ・状況で練習しています。簡単な場所からは練習しない。ちなみにマル(丸山茂樹)も『オレは1本でやるけど、難しいところからしか練習しない』と。松山くんは、今年の試合でもアプローチをとんでもないライから寄せ、アメリカの記者の質問に『普段からやっていますから』とあっさり話していた。簡単な状況では当たり前に寄せる自信があるから、失敗しそうな場所から練習することで改めて『ここに打っては絶対にダメ』という確認をしたり、技術を高めているのだと思います。こういう積み重ねが結果につながっていくんでしょうね」
日米の芝の違いは大丈夫?
日本の芝には自信があるというシャウフェレ
「グリーンはベント芝だと思いますがアメリカと少し違う部分がある。フェアウェイは、霞ヶ関もですが、ゾイシア芝で普段慣れている芝とは違うので打ち方を少し調整しなくてはいけない」

普段とは違う打ち方を調整するというシャウフェレ
松山英樹の凄み
「技術、妥協しない心で一流であり続ける」(佐藤)
「担当レップの方も、56度と60度を持って、60度でないと寄らないようなところからあえて56度で難しい状況を作って練習し、そのあと60度でやると少しやさしく感じるという手法でよく練習すると言っていました」

厳しい場所での“寄せ練”でスキルを高めていく
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日本のゴルフファンを熱狂させた「ベイカレントクラシック」。プロ入り10年を迎えた仲良しトリオ(スピース、JT、ファウラー)の現在地や、妥協なきアプローチ練習で世界を唸らせる松山英樹の凄みを佐藤信人プロが解説しました。
続く後編では、7年ぶりに来日したジョーダン・スピースと、46歳にして第一線を走り続けるアダム・スコットへの緊急インタビューをお届け!
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PHOTO/Hiroyuki Okazawa


