1本の棒を持って、2本の腕で振り、ボールを飛ばすだけだ。難しいことは何もない。

なぜか?

人間というのはそれだけ精巧だからだ。LSI(高性能集積回路)を290万個集めたほどの能力がある。「目的」を与えただけで、体は動いてくれるのだ。ゴルフでいえば、クラブを「振る」ことだけを考える。それだけ考えていれば、肩も腕も腰も足も自然に動いてくれる。

考えてみれば当たり前のことだ。金づちでクギを打つときに、手首の返し方がどうのと考えるだろうか? 走る時に足首の角度を考えて走れるだろうか?

画像1: “自然流”の極意は当てにいかない、意識しない
ゴルフ伝道師 福井康雄【後編】

「アプローチの時にも『距離によってテークバックの大きさを調節する』といわれていますが、人間を安物の機械扱いしてはいけません。人間はもっと精巧です。『あそこに打とう』――その目的があれば、人間の体はその通りに動いてくれるんです」

倉本昌弘と初めて出会ったのは、彼が13歳の時だった。福井の教えを忠実に守ってきた一人である。アドレスとグリップを教えたあとはただ「振る」だけ。うまく当らなくても、当てにいってはいけないといい続けた。

画像2: “自然流”の極意は当てにいかない、意識しない
ゴルフ伝道師 福井康雄【後編】

倉本もガマン強く、振り続けた。そして2年後に広島GCのクラチャンとなる。15歳、史上最年少だった。

「構えたら3秒以内に打て!!」

「始めのうちは30分以上練習してはいけない。そのかわり、3日以上休んではいけない」

どれも、レッスンの中から得た結論である。しかし、「大脳生理学」「医学」「心理学」も学び始めると、自分の結論が学問の上からも正しいことが分かり、ますます自信を深める。ゴルフを通じ、レッスンを“臨床実験”とし、人間そのものにまでたどりついた。

そのうち、自分のゴルフ理論の集大成を出すのが夢だ。「大脳生理学」「医学」などの項目も並ぶはずだ。題名だけは決まっている。「ヒューマニティー・ゴルフ」。

「推薦文はベン・ホーガンからもらいたい。20年前に書いた私の本と『モダン・ゴルフ』が似ている。私の理論を理解してくれるのは彼しかいない」

画像3: “自然流”の極意は当てにいかない、意識しない
ゴルフ伝道師 福井康雄【後編】

スポーツ心理学は、ようやく日本でも認められつつある。福井の理論が正しく評価されるのも、もうすぐかもしれない。

ようやく“時代”が追いついてきたのだ。

(1989年チョイスVol.46)

前編の記事はこちら↓↓
倉本昌弘が実証した人間尊重主義メソッド ゴルフ伝道師 福井康雄【前編】

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