ジャンボモデルのイメージを決定的にするものに、クラウン部が内側(手前)に入り込んでいる点が挙げられる。
クラウンというのはトウからトップブレードにかけての曲線部頂点のことだが、この部分が内側に入り込んでいると顔全体が引き締まって見える。さらにアップライトに感じる。
ブリヂストンスポーツ、ゴルフクラブ開発部アイアン担当チーフエンジニアの後藤勝廣氏は言う。
「クラウンが手前にくるほどアップライトに見える。さらにジャンボモデルではトウからリーディングエッジにかけての接点部を削り落しているので、これでさらにアップライトに感じるようになっている」
しかしアップライトに感じるのはあくまでも見た目の印象であり、実際のライ角は相当にフラットなのだそうだ。
ライ角は、フラットなほどボールが右に行きやすい。その一方でリーディングエッジが3.5ミリ遅れた強めのグースネックになっているので、ボールは左に行きやすい。右に行きやすいライ角と、左に行きやすいネックという相反する特徴を併せ持ったクラブということになる。
この2つの特徴が両者で相殺し合い、その結果クラブとしてのバランスがとれているのだという。
もうひとつ、スコアリングがサンドウェッジだけ変わっている。他の番手はエッジがシャープに切り込まれているが、サンドウェッジに限ってエッジに丸みが持たせてある。
「その方が止めやすい」(後藤氏)
これもジャンボの要望である。ただしこれは、ジャンボ個人が使用するものに限ってのこと。市販のジャンボモデルは他の番手と同じ溝になっている。グースの度合いもジャンボ使用のものは強い。
ジャンボモデルは、上級者向けとなっているが、ジャンボ本人にいわせれば「シャフトを換えれば、誰でも使えるクラブ」と、そのやさしさを強調する。しかしスウィートスポットの位置がヒール寄りの高めにあるとくれば、なかなかアベレージクラスでは使いこなせないように思われる。
それはそれとして、後藤氏はアイアンヘッドを削り始めて5~6年しか経っていない。それ以前はスポルディングの組み立てを行っていた。それがレクスターLT‐100モデル(中部銀次郎氏が使用クラブ)の設計を契機にしてジャンボ尾崎のクラブ作るまでに至った。
「ジャンボの自宅で、いろいろ叱られたこともあった」とわずか数年前を振り返るが、そう語る表情には、何かしら余裕のようなものが感じられる。ジャンボもクラブには満足しているし・・・・・・それが後藤氏に余裕をもたらしているのかもしれない。
(1989年チョイスVol.48 ザ・アイアンカタログ)
その①の記事はこちら↓↓
ジャンボMTNⅢプロモデル「伝説の名器」知られざる秘密①