初日は目標より1ストローク悪い71であった。尾崎はスコアボードを見ながら「あかんわ」とひと言呟いた。視線は杉本英世の67という数字に向けられている。

だが“あかんわ”の意味は杉本に離され過ぎたという意味ではないことがすぐ判った。「明日も70が目標」と言ったからである。

“あかんわ”と言ったのは、最終ホールで1メートルくらいのなんでもないパットを外したため目標の70にならなかったことを言ったのである。胸の中ではあれさえ入れておけばと、何度となく思ったことだろう。

しかし皮肉なもので失ったこの1ストロークが、逆に尾崎初優勝に大きな役割を果たしたのである。

画像: 尾崎将司と健闘を称え合う島田幸作(右)

尾崎将司と健闘を称え合う島田幸作(右)

最終日は36ホールで決勝ラウンドが争われた。トップグループは河野高明、杉本英世、日吉定雄。尾崎は2アンダーの島田幸作、増田光彦と組んだ。島田、増田ともけっして楽な相手ではないが、河野、杉本と組むよりは、メンタル的に随分楽である。

もしあと1ストローク縮めていたら、当然河野、杉本、尾崎という組み合わせになっていただろう。

画像: 尾崎将司。初優勝の舞台裏!@1971年日本プロ【Vol.4】
大きな役割を果たした「初日に失った1打!」

尾崎にとってもうひとつ幸運だったことは、上位5人くらいで最後まで混戦になると予想されたのが、意外に早く脱落者が出て、残り9ホールで相手は杉本唯一人になったことである。

好位から差す馬にとって、目標馬が少なければ少ないほど有利である。まして一頭となると、その馬さえマークしてチャンス到来となれば一気にスパートをかければいいのである。尾崎にとっては願ってもないレース展開になったのである。

(月刊ゴルフダイジェスト1971年11月号)

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