開きやすいボーケイと激スピンのフォーティーン
今世紀初めは、後にロングセラーとなるモデルがいくつか誕生している。ゼクシオが00年に生まれ、翌年から圧倒的な人気を維持してきたし、パターでは2ボールが生まれている。ウェッジではフォーティーンのMT-28があった。
これ以前は日本のプロたちもボーケイやクリーブランド、あるいは契約メーカーのウェッジを使っていた。とりわけこの頃人気があったのがボーケイの200シリーズである。タイガーウッズが使ったことなどもあり、ツアーには深く浸透しつつあった。
200シリーズは基本的にはティアドロップ型だが、一般的なティアドロップに比べると、トップラインのヒール側がネックの高い位置からつながっていたので、構えると感覚的にはシャフトが右から入っているように見えた。
そのためフェースを開いて構えるとちょうど真っすぐに見える。言い換えるならボーケイは、フェースを開いて使うことを前提に設計したわけで、プロたちも感覚的にその良さが分かっていたので使ったのだろう。ライ角度がアップライト気味だったり、ヒール側のバウンスが落としてあったりと、他の要素もすべて開きやすさを追求した仕様になっていた。
日本のツアーでも200シリーズが使用率を伸ばしていたころ、開きやすさに加えて驚きのスピン性能を売りにしていたのがMT-28である。02年の国内ツアーではウェッジ部門で10週以上にわたり使用率1位を続けたが、これはもちろん国内メーカーのモデルとしては初めてだった。
なぜスピン性能で他のモデルを上回っていたのか。第1には、スコアラインを機械彫刻で入れたため、エッジがシャープだったことだ。当時まだわずかに使われていたバラタカバーのボールなどは数発でささくれだってしまうものだった。ヘッドの素材にも特徴があって、プロが好んで使うウェッジといえば軟鉄鍛造製が常識だったが、MT-28は初代からニッケルクロムモリブデン鋼だった。強度に優れているため溝のエッジがタレにくく、スピン性能を長く保つことができた。
これ以降、プロたちも「軟鉄鍛造じゃないと」と言わなくなった。代わって、プロやあるいは他のメーカーが注目したのは、道具によってスピンはこんなに変わるのか、ということだった。またMT-28はフェースの平面精度が高く、ボールとしっかりコンタクトすること、ソールのデザインやバウンスの微妙な形状によって抜けがいいこともスピン性が優れていた要因だった。このスピン性能があったからこそ"開きやすさ"が強みのボーケイに対抗することできたのだ。
こうして見ると、フェースの開きやすさではボーケイ200シリーズ、スピン性能ではMT-28に軍配が上がるけれど、決して勝負は決着したわけではなく、今もそれぞれの最新モデルによる戦いが続いている。日米の両者が切磋琢磨し、進化はとどまらない。
文/近藤廣
(月刊ゴルフダイジェスト2015年4月号より抜粋)