現在の日本ツアーを支えているといっても過言ではない外国勢の活躍も、そのルーツをたどると男子では陳清波、女子では涂阿玉 2人の台湾出身ゴルファーにつながる。今週の月金コラムは「台湾ゴルフのDNA」と題し、台湾ゴルフの黄金時代を作り上げた陳清波と涂阿玉の話からその歴史や強さの秘密を紹介する。

台湾のゴルフ史を紐解いていくうちに、この国のゴルフの木の幹は上から下まで強く一本に繋がっていることが分かってきた。

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今回は涂阿玉が、当時(2011年)世界ランキング1位だったヤニ・ツェンへ送ったアドバイスを紹介する。

画像: 涂阿玉 1954年、台湾出身 賞金女王7回 永久シード選手

涂阿玉
1954年、台湾出身
賞金女王7回
永久シード選手

画像: ヤニ・ツェン メジャー5勝を含む、海外LPGAツアー通算15勝

ヤニ・ツェン
メジャー5勝を含む、海外LPGAツアー通算15勝 

守りに入ったらヤニの将来はなくなるよ

涂阿玉 私はヤニから2回、相談を受けています。一つはアメリカで使うキャディのこと。迷っているのなら、向こうのツアーキャディにチェンジしてみればとアドバイスしました。もう一つは、ヤニがアメリカでいい結果を出して帰ってきたときです。周りから「ヤニ、ちょっと(アグレッシブに)やり過ぎてる。もう少し守るゴルフをしないと」と言われるけど、どうしたらいいかと聞いてきた。

当時の女子ゴルフ界はアニカが去り、オチョアが去り“絶対女王”が不在だった。世界ランキング1位だったヤニはその座に手を掛けようとしていた。しかし同時に、自らのゴルフに迷いが生じていた時期でもあったのだ。

涂阿玉 私は、守りに入ったらヤニの将来はなくなるよ。今アナタ、自信があるからチャレンジしているんでしょう。自信がないのに何かチャレンジできる?年月が経てば自然に守るようになるから、今はチャレンジしなさい。そう言ったんです。

涂は相談を受ける4年前(2007年)、台湾のTLPGA選手権でヤニと一緒にラウンドしている。その時と比べると、ヤニのスウィングは全く別物になっていたという。アメリカに渡ってからのヤニのスウィングはスムーズになり、かつパワフルだった。

画像: ヤニのアイアンショットはラフからでもスピンでグリーンに止められるほどパワフルだった

ヤニのアイアンショットはラフからでもスピンでグリーンに止められるほどパワフルだった

涂阿玉 だから基本は台湾で覚えて、アメリカに行って変わったんだと思う。彼女はいろんな先生に教えてもらったはず。一番最初は台北ゴルフ場の沈忠賢プロ。そして林口にいったときはのコーチは陳榮興プロ。そして最後はサンライズ。ここでの経験がヤニを強くしたんだと思う。台湾のアマチュアゴルフは、アジア大会に向けてすごく真剣に取り組んでいて、台湾ゴルフ協会のナショナルチームの合宿センターがサンライズにあるんです。

画像: 林口GC ここでジュニア時代のヤニは腕を磨いた 淡水GCとは川を挟んで反対側に位置し、起伏のある淡水GCとは対照的に広くフラットなコースになっている

林口GC
ここでジュニア時代のヤニは腕を磨いた
淡水GCとは川を挟んで反対側に位置し、起伏のある淡水GCとは対照的に広くフラットなコースになっている

ヤニはサンライズでレッスンやトレーニングを受けた。そしてこの時にアメリカや他の国の試合にも出場するようになり、その経験が今に生かされている。

ヤニの一番の持ち味は強気なパット

画像: 12年全米女子オープン

12年全米女子オープン

涂阿玉 彼女ねショットはすごく良いけれど、一番いいのはアプローチとパターですよ。彼女の打ち方は郭吉雄さんとすごく似ている。アレは先輩のいいところを見てて自然に出来るようになったのだと思います。アメリカの選手とは違っていて、上から打つ感じが青木功さんの打ち方に似ていますね。

ヤニのパットがよく入るのは、強気にしっかり打っているからだと涂は分析する。たとえカップを外しても、ショートはしない。ほぼすべてオーバーに打っているのだ。

涂阿玉 風に負けないパンチショットと同じです。上からしっかり打つ。サラッと打つ今時の打ち方では芝目に負けてしまいます。もちろん入らない日はあるよ。でも打ち方を変えなければ、勘が戻ったら問題ない。最後に彼女に言ったんです。一つ問題になるとしたら体の健康だよ、と。守りに入るんじゃなくチャレンジに行く時に、自分の体を管理しないとダメ、そう言いました。

「健康さえ気をつけていればヤニのゴルフは問題ない」。涂が自国の後輩ヤニ・ツェンへ絶大な信頼を寄せていることが伺える、そんな言葉だった。

「台湾ゴルフのDNA 」(vol.3)

※チョイス No.119より

「台湾ゴルフのDNA vol.4」では、台湾ゴルフ界もう一人の巨星・陳清波の話をご紹介します。

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