マキロイ「人生の中でこんな経験は滅多にできないよ」
大統領サイドからゴルフの誘いがあったのは直前のことだった。政治問題を抱える北アイルランド出身のマキロイにとって“ポリティックス(政治)”はタブーでもある。だがそのとき、マキロイは“大統領のゴルフ”への純粋な興味から「ポリティックスのことは脇に置いて一緒にプレーすることを決めた」。
Big battle today at Trump International with Clear CEO Garry Singer @McIlroyRory @PaulONeillYES @realDonaldTrump Drain the putt... pic.twitter.com/AZJqEVtlBT
— ClearSports (@ClearSportsLLC) 2017年2月19日
実際フロリダ州ウェストパームビーチのトランプ・インターナショナルGCに出向いてみて驚いた。
「シークレットサービス(警護要員)が30人、警察官が30人、それにスナイパー30人が林の中に潜んでいたんだ。そりゃあ、人生でこんな経験したくてもできないよ!」(マキロイ)
ラウンド中の会話はほぼすべてゴルフ。「外交問題を語り合ったわけじゃない。大統領にとってゴルフの話題が一番嬉しそうだった」と振り返る。
しかしケガの療養中に何かと批判されることが多い大統領とゴルフをしたことから、その後マキロイは多くの非難を浴びることに。「そうだね、随分叩かれたよ(苦笑)。でもあれは単純にゴルフの1ラウンドにすぎなかった」。
「『ノー』という選択肢は僕にはなかった」
トランプ大統領によってアメリカが分断されたという人は多い。北アイルランドのプロテスタント教徒が多い地区で、少数派のカトリック教徒として育ったマキロイは「分断された地域の問題の複雑さ」を幼い頃から思い知らされてきた。
2013年にマキロイが来日したとき、マネージャーサイドから「オリンピックの質問はしないで欲しい」という注文があった。
そのときはなぜオリンピックがマキロイにとってデリケートな問題なのかに思い至らず、その話題を流したが、北アイルランド代表という選択肢がない現状に際し、アイルランド代表でオリンピックに出場するくらいなら、イングランド代表の方がまだしっくりくるという思いがあったという。だが表立ってそれを表明することはできない。
分断された社会に心を痛めてきたマキロイが、分断を広げたといわれるトランプ大統領とゴルフをしたことに反感を抱く人がいるのもわかる。
だが27歳の若者は「大統領からゴルフを誘われて『ノー』という選択肢は僕にはなかった。怒らせてしまった人には申し訳ないけれど、大統領とのゴルフは楽しかったし、あれこれ批判をする前に行動して、そこからスタートすれば良いんじゃないかな」。
復帰戦のWGCメキシコ選手権で好スタートを切ったマキロイ。外野の声に惑わされることなく世界No.1奪還を模索中だ。