ダウンブローではなく「円」で振る
練習場で球を打つ安田プロ。とても74歳とは思えないインパクト音、生き生きとした弾道。8番アイアンくらいだろうか。大きく右から回したかと思えば、今度は左から、さらには地を這うような低弾道ボール……まるで漫画「オーイ! とんぼ」のリアル版を見ているかのよう。
足元に目をやると、ボールの置かれた位置より10センチも先からターフが削られている。これは、相当ダウンブローに打っているということなのだろう。そのことを聞いてみると。
「ダウンブロー? そんな意識はないよ。糸巻きの時代は上からつぶすように打ってはいたけど、今のボールはその必要はない。ただクラブヘッドが円を描くように振ればいいんだ」(安田、以下同)
では、なぜこんな見事なターフが取れるのか?
「ヘッドがアドレスと同じ位置に戻ってきたらターフは取れない。でも、インパクトのひざの位置を見ると分かるように、切り返しで下半身はわずかに左に動き、同時に体が少しだけ沈みこむ。そうすると円の中心が左下に移動するから、自然とボールの先が最下点になる。ダウンブローに見えるかもしれないが、実際には円で振っているだけなんだよ」

アドレス時(写真左)よりもインパクトではひざの位置が左になり、体が沈み込む。その分クラブヘッドが描く円が左下に移動し、結果的にターフがとれる
右ひじが体に密着していることが円を描くように振るコツ
では、円を描くように振るためには、どこを意識すればいいのか?
「大事なのは、右ひじが体に密着していること。インパクトでは、右ひじが若干曲がっていなくてはいけない。インパクト前に右ひじが伸びきってしまうと、ヘッドが遠回りして、ボールより手前を叩いてしまう。つまりダフリだね。ヘッドが円の軌道を外れないためには、右ひじがわずかに曲がった状態を保たなければいけないんだ」

ダウンで右ひじを右わき腹にくっつけるように下ろし、その状態を保ったまま一気に腰を切る
「アドレスで手の力を抜いて肩をリラックスさせ、切り返しからダウンにかけてスッと右ひじを右わき腹にくっつけるように下ろしたら、そこから一気に腰を切っていく。インパクトまで右ひじが体に密着した形を保てれば、ヘッドの遠心力に負けず、歪みのないきれいな円弧を描けるはずさ」

「球を上げよう、飛ばそうとすると、手に力が入りやすい。手に力が入ると、肩にも力が入り、正しい軌道を描けなくなる。握る強さは10段階でいうと6くらい」
ダウンブローを意識しすぎてダフっている人は、特に実践すべき教えと言えそうだ。
安田春雄(やすだ・はるお)1943年生まれ。国内15勝、海外3勝を挙げる。河野高明、杉本英世とともに「和製ビッグスリー」として活躍
写真/有原裕晶
(週刊ゴルフダイジェスト2015年7/21号より抜粋)