「異次元の精度」で寄せまくった
本調子ではなくても、ライバルたちが苦しむ難コースを攻略できる。こんな日本人プレーヤーは今までいたでしょうか。松山は7バーディ、ノーボギーのトータル8アンダーで2日目を終えて首位タイに浮上しました。
「フェアウェイは捉えていましたが、ティショットの感触が悪くて疲れました」
結果だけを見れば完璧なゴルフかと思われますが、本人はラウンド内容に満足している様子ではありませんでした。12番、16番、18番のティショットでは手を離すなど不本意なショットが多かったようです。
実際に16番ティショットを右サイドの木に当て、ギャラリー施設手前までボールが転がるトラブルもありました。
「今日はショートゲームで助けられました」
松山が語るように、ラウンド全体で23パットとアプローチとパターが冴えわたります。とくに7番(543ヤード、パー5)ではグリーン左の左足下がりの難しいライからアプローチを寄せてバーディとしました。ピンが手前でグリーンにダイレクトに乗せると転がってしまう状況で、PSで手前の傾斜にワンクッション入れる絶妙なアプローチで難なく約1メートルに寄せました。
雷雨中断再開後の15番(575ヤード、パー5)ではグリーン右30ヤードから、上ってからすぐ下ったところにあるピンに難なく1メートルに寄せバーディ。雨でラフが重くなり、グリーンの速さも変わる中、タッチが非常に難しいアプローチでしたが、コックを早めに入れてテークバックし、ラフごとゾーンでボールを運ぶ完璧なアプローチで距離感を合わせていました。
寄せることが困難な状況から、いとも簡単に寄せてくる松山のアプローチの精度は異次元でした。
パッティングだけで「4.5アンダー」を稼ぎ出している
初日に3回ほど外していた1メートル前後の短いパットは改善されていました。この日のStrokes Gaind:Putting(パッティングがどれだけ貢献したかの指数)は1位。前日の53位(0.711)から1位(4.555)と大幅にパッティングが改善しています。
このStrokes Gaindはコロンビア大学ビジネススクール教授のマーク・ブローディーが開発し、PGAではショットリンクというシステムとして導入されています。松山の初日と2日目の例で簡単に説明すると、初日は0.711打しかパッティングで打数を稼げなかったところが、2日目は4.555打稼げたということになります。ちょっとよくわからないという方は、ざっくりですが「パッティングで4.5アンダー出した」と考えてもいいでしょう。
松山本人は納得してないようですが、Strokes Gaind:Tee to Green(ショットがどれだけ貢献したかの指数)は前日より少し改善して17位から4位になっています。これでショットが本調子になったらどんなスコアが出るんでしょうね。松山が求めているレベルの高さに驚かされるばかりです。アイアンショットは方向性、距離感とも好調を維持しているので、このままパットの調子を維持してほしいですね。
もう一人の首位は地元期待のキスナー。3日目“アウェイ”に!?
首位タイは両親がシャーロット出身、親戚が創立メンバーで何度もクエイルホロークラブをラウンドしているというケビン・キスナー。なんとなく地味なイメージですが、2017年はディーン&デルーカ招待を制し、プレジデンツカップ(アメリカ選抜と世界選抜の対抗戦)アメリカ代表もほぼ確定している実力派です。
キスナーはコーチのジョン・テリーとコンビを組んで再現性の高いスウィングを構築しています。切り返しのタメが深く、クラブの反動を上手く使ってスウィングをする選手です。飛距離は出るほうではありませんが、正確なショットでゲームを組み立てます。
ほぼ地元のキスナーの応援もあり、ちょっとアウェイ感は出ると思いますが、松山自身メジャーで初めて3日目最終組となる明日のプレーに期待したいと思います。