フィル・ミケルソンとタイガー・ウッズ。不仲騒動の真相は?
米チームキャプテンのスティーブ・ストリッカーの推薦で米国対インターナショナルのチーム戦への出場が決定したミケルソン。一方のタイガーもストリッカーたっての希望で副キャプテンに就任している。
20年以上ライバル関係にある2人だが年齢的なこともあり、ライダーカップ(欧米対抗戦)も含めチーム戦を一緒に戦うのはこれが最後になるかもしれない。そう思うと少し寂しい。
ところで1996年にタイガーがプロデビューして以来、2人の間には常にピリピリとした緊張感が張り詰めていた。王道のミスター・アメリカ的存在感を持つミケルソンに対し、褐色の肌を保つタイガーは周囲をすべてなぎ倒すような破壊力であっという間に世界ナンバー1に上り詰めた。
そのあおりをくった形のミケルソンは万年2位。遂に世界ランク1位に就くことはなかった。本心は計り知れないが、2人は当初から一生交わることのない水と油のような存在なのだ。
15年ほど前にはミケルソンが使用するドライバーがルールに反するほど高反発ではないか、という疑いを持たれたことがある。それに対してタイガーは名指しこそしなかったが「高反発かそうではないかはプロなら自分自身が一番よくわかるはず」と暗にライバルを非難したこともあり、2人の関係はさらに悪化したといわれている。
2008年トリーパインズで行われた全米オープンでは予選ラウンドでタイガー、ミケルソン、アダム・スコットの3選手が同組になった。案の定ティグランドで2人は目も合わせず、タイガーもミケルソンもスコットとしか会話しようとしなかった。間に挟まったスコットがなんだか少し気の毒に思えたものだ。
だが丸山茂樹のバッグを担ぎ、全盛期のタイガーやミケルソンを目の前で見てきたプロキャディの杉澤信章氏(現在はゴルフネットワークのコメンテーターなどを務める)は「目こそ合わせませんが、ちゃんと相手のナイスショットには小さな声で“グッドショット!”といい合っていましたよ」。そこは紳士のスポーツ。もしかしたら2人は不仲を演じていた部分もあるのかもしれない。
雪解けは意外なことがきっかけだった。翌2009年にミケルソンの愛妻エイミーさんの乳がんが発覚。ツアー出場を見合わせ妻を献身的に看病していたミケルソンの元にタイガーから「エイミーの体調を心配している。自分にできることがあればなんでもする」とメールが届いたのだ。
もちろんこれで2人が劇的に親しくなったわけではない。だが不仲だった頃のひりつくような空気が霧散したのは確かだった。
それでもライダーカップやプレジデンツカップなどのチーム戦で2人がタッグを組むことはほとんどなかった。キャプテンたちが気を遣い、ミケルソンにはキーガン・ブラッドリーやデビッド・トムズ、タイガーにはストリッカーといった具合に気の合う選手を組み合わせチームの雰囲気が悪くならない采配をしていたからだ。
さて9月末に開幕するプレジデンツカップで2人はどんな表情を見せるのだろう? 松山英樹もインターナショナルチームのエースとして登場するので是非チェックしていただきたい。
写真/岩井基剛