獲得賞金ともっとも相関が強いスタッツはなに?
鈴木愛選手が最終戦を7位タイで終え日本勢では4年ぶりの賞金女王に輝いた。
ドライバーの平均飛距離が自分たちに近いことなどから、女子ツアーは男子ツアーよりもアマチュアゴルファーには参考になるところが多い。米男子(PGA)ツアーの膨大なデータに比べ、女子のデータはオフィシャルには少なく、男子ほどしっかりとした分析はできないのが正直なところだが、統計的データ分析で2017年の女子ツアーを紐解いてみることする。
ゴルフの実力を測る指標はやはり結果だ。この世界でそれは稼いだ賞金額と言えるだろう。賞金をより多く稼ぐには単純により良いスコアを出したほうが良く、アベレージスコアは賞金ランキングとの相関性は非常に高い。これは当たり前の話だ。賞金ランキングトップ10と平均スコアランキングトップ10は、ほぼ同じ顔ぶれが並ぶ。
スコアリングアベレージを高くすることは獲得賞金をより多く得るポイントということが言えるわけだが、ではスコアリングアベレージをよくするのに大事なことはなにか? というところをデータを用いて検証していく。
当然すべての要素が重要なわけだがそれでは答えになっていない。統計的データ分析で私がもっとも意識していることは、なにが大事なのかということにそれぞれ優先順位をつけるということだ。なにが1番影響し、そしてその次はなにが影響しているのか? これらをはっきりとデータで裏付けることで効率的にそれぞれの上達に役立たせることができるからだ。
では、女子ツアーでもっともスコアに影響を与えている数字は何か? それは圧倒的に平均バーディ数である。これはほぼ賞金ランキングに直結しているといってもいいレベルの相関を見せている。平均バーディ数トップ10の内、実に9人が賞金ランキングでトップ10に入っている。そして外れた1人も賞金ランキングは12位でほぼトップ10と同等の結果を出している。
米女子ツアーでもほぼ同じことが言え、平均バーディ数トップ10の中の8人が賞金ランキングトップ10に入っている。この相関は他のどのデータよりも賞金ランキングに相関している。ゴルフにおいてもっとも大事なことはボギーを打たないことではなくバーディをより多くとることだとデータは示しているのだ。
賞金を多く稼ぐために重要なのは飛距離? パッティング? アプローチ?
おそらく多くの人が気になっているであろうドライバーの精度、パッティング、そしてアプローチと賞金との関係も見てみた。
ドライバーの精度(フェアウェイキープ率)のトップ10で賞金ランキング10位以内に入っている選手はなんと1人。パッティング(平均パット数)の5人、そしてアプローチ(リカバリー率)の5人に比べ、はるかに相関性が弱い。そして実は女子ツアーに限り平均バーディ数の次に高い相関を見せた数値がパーオン率でなんと9人がトップ10に入っているのだ。
ただ、平均バーディ数のほうが順位により相関が見られるので平均バーディ数のほうが重要。考えてみればバーディとパーオン率が強い相関を示すのは当たり前に思えるが、こうしてデータ化することによりフォーカスすべき順序が鮮明になることで効率の良い練習に取り組めるようになる。
以上のデータ分析を踏まえて言えることは、ゴルフにおいてもっとも重要なことは平均バーディ数を上げることであり、それを実現するにはパーオン率を上げることで、ドライバーの精度にこだわりすぎることではなくアイアンの精度にこだわることであるということだ。その後に鈴木愛選手のようにパッティングがついてくると、レベルの高いパフォーマンスを出すことができる。
これらを踏まえアマチュアが参考にできることはなんだろうか? やはり、ドライバーの飛距離と精度を追求するのではなく、パーオン率を上げる意識をすること。それぞれのレベルに合わせて自身にとってのパーを設定し、それに対してのパーオン率を高める意識をすることが大事といえるだろう。
たとえばパー4の場合、80台平均でプレーするゴルファーなら2オン、90台平均なら3オン、100台平均なら4オンがそれぞれ“パーオン”といった具合だ。これらの数値の設定だけでスコアは間違いなく以前よりも安定する。ドライバーも真っすぐ300ヤード飛ばすのを目指すのではなく、インプレーに意識をおいて多少のミスは受け入れていくべきだ。ドライバーを振り回す練習より、得意のアイアンを練習するほうがスコアメーキングの観点からは効果的だとデータは示している。
データがすべてだとは言わないが、優位性が見られる点においては参考にしていくのはより早い上達、そしてより良い結果を出すことに役に立つだろう。
R160メソッド<まとめ>
1.スウィングにおいてもっとも重要なことはインパクトの角度
2.スコアメーキングにおいてもっとも重要なことは平均バーディ数を上げること
写真/姉崎正、岡沢裕行