クラブのチェンジでスウィングもシンプルに
来年のことを話すと鬼が笑うと言いますが、日本の賞金王がマスターズに出場を確定させたと聞けば、早くも来年の4月が楽しみなってしまうのは仕方がないこと。今から、宮里優作選手がオーガスタの緑の芝生の上を歩く日が、楽しみでならないのはなにも私だけではないでしょう。
宮里優作選手といえば、アマチュア時代からプロの試合で大活躍したことから、プロ入り後すぐにでも勝つだろうと言われながら勝てず、2003年のツアーデビューから10年、2013年の最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で劇的なチップインで初優勝を飾ると、2017年は4勝を挙げ、賞金王にまで登りつめました。
さて、そんな宮里選手は、マスターズで活躍することができるでしょうか? 結論から言えば、私は上位争いが十分に可能だと思います。
2017年の宮里選手の海外メジャーでのプレーを振り返れば「全米オープン」で60位タイ、「全英オープン」では予選落ちとふるいません。しかし、海外選手のセッティングや弾道を自分の目で見たことで、アイアンをそれまで使っていたコンパクトなサイズのモデルから、やや大きめのキャビティ形状の「i200」にスイッチするなど、普通はシーズン中に行わないような、大胆なギアチェンジを行いました。
そのことについて10月の「日本オープンゴルフ選手権」で直接話を聞いてみると、「他の選手の球の高さだったり風に対する強さだったりを踏まえて、クラブをスイッチしました。もう少し慣れは必要ですが、来シーズンを見据えてスイッチしたわりに、意外と早く対応できてます」という答えが返ってきました。
実際、クラブの大胆なチェンジ後の10月頭に「ホンマツアーワールドカップ」で史上初の4日間ノーボギー優勝の快挙を成し遂げると、最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」では6打差の圧勝と、むしろ成績を伸ばしています。海外志向で行ったギアチェンジが功を奏したことは、来年のマスターズに向けて好材料です。
スウィング面を見ても、もともと再現性が高く、ボールに対して入ってくるシャフトの角度とフォローで抜けていく角度が同じであることからもわかるように、効率的でしっかりとエネルギーがボールに伝わるスウィングをしています。技術面では、世界のトップレベルと遜色がありません。
さて、そんな宮里選手がマスターズで活躍できるかどうか、そのカギを握るのが練習ラウンドにあると思います。マスターズは体操の規定演技にたとえられ、どんな弾道でどこに落とすのか、攻め方のルートが決められているのが特徴のひとつ。そのため、コースを知ることが攻略に大きく影響するからです。
そこで頼りにしたいのが、宮里選手の東北福祉大学の後輩の「あの選手」。そう、アマチュア時代を含め過去6度マスターズに出場している松山英樹選手です。オーガスタをよく知り、マスターズに勝ちにくる松山選手と練習ラウンドを行うことで、コースの情報を収集することは、宮里選手にとって初出場のデメリットを減らす重要なファクターになると思うのです。
マスターズといえばガラスのグリーンと言われる高速グリーンも特徴ですが、それについてはあまり心配していません。圧勝した「日本シリーズ」は選手たちが口を揃えてグリーンが硬くて速いと言っていましたが、その中で宮里選手は3日目、4日目をノーボギーで65・62と素晴らしいスコアでプレーしています。
海外を見据えたクラブチェンジの成功、高速グリーンでも対応できるパッティング技術、もともと優れたショット力、そして心強い練習ラウンドでのパートナー……それらが揃っていることを考えると、上位で活躍してくれる姿が見られると思えるんです。
「宮里家の誇り」と妹・藍に言わしめた宮里優作選手。出場を確定させている松山英樹選手、同じ東北福祉大出身の池田勇太選手らとともに、マスターズで大活躍してくれることを、大いに期待したいと思います。