ティショットではフェアウェイをキープし、そこからピンを狙って攻める。これは長らくゴルフのセオリーだった。しかし、近年のゴルフ界は急激な飛距離アップが進み、そのセオリーが崩壊しつつある。ゴルフの「飛距離至上主義」時代。その現状を、ゴルフデータ分析家のゴウ・タナカが、最新のデータから読み解く。

難コース、勝敗を分けたスタッツは!? そして久しぶりの連戦タイガーは?

パー5を制するものはゴルフを制する。スタッツ分析から見えてきた、私の思うゴルフの格言である。パー5にはゴルフのすべてが集約されており、パー5をいかに攻略するかがゴルフにおいてもっとも重要だ。

ザ・ホンダ・クラシックが開催されたPGAナショナルは7140ヤード、パー70と、とくに距離が長いというわけではなかったが、パー5がイン・アウトそれぞれ1つずつで、合計2つしかないのが大きな特徴のセッティング。4日間で8回しかパー5でスコアを伸ばすチャンスがなく、これは通常の半分だ。スコアが伸びないことが容易に想像される。案の定スコアはあまり伸びず優勝スコアは8アンダーだった。

このようなコースでは一体どのようなスタッツがポイントになるのか分析してみる。当然少ないパー5でいかにバーディを取ることができるか(パー5のバーディ率)というのがポイントになるが、ほかにも普通のトーナメントとは違ったスタッツが目立っていた。それはスクランブリング(アプローチ成功率)だ。普段のトーナメントではこの数値はあまり目立たないのだが、プレーオフを争ったジャスティン・トーマスとルーク・リストのスクランブリングは1位、2位だった。

この2人のパーオン率も65.28%と普通のトーナメント優勝者の数値より低く、グリーンをヒットするのが難しかったことを示している。パーオンが容易なパー5が2つも減り、その代わりにパー4が増えているのも大きく関係しているだろう。スコアを伸ばしにくい中、いかにボギーを叩かないかというのが非常に大事になってくるので、スクランブリングの数値が目立った結果となったのだろう。

こういったコースでは飛距離よりも小技、精度が重要と言われてきたが、データを見てみるとそうではない。上位に入った選手の平均飛距離は非常に高く1位、2位、そしてFWキープ率は60位、65位と高くない。

画像: ザ・ホンダ・クラシックを制したジャスティン・トーマス。大会を通じての平均飛距離は320.9ヤードだった

ザ・ホンダ・クラシックを制したジャスティン・トーマス。大会を通じての平均飛距離は320.9ヤードだった

これらのデータは何を意味しているのか?

非常に悲しいことだが、近代ゴルフは飛距離史上主義になったと言える。私は20年近くPGAツアーの選手のスウィングを分析してきたのだが、顕著な傾向が近代ゴルフには見て取れる。

データ上、パー5バーディ率がランキングに強く相関し、スクランブリングや、パッティングなど小技の指数の相関が弱い。パー5でバーディを取ると圧倒的有利になるのが今のPGAツアーなのだ。これに必要とされるのはパワーである。技巧派にはより多くの飛距離が求められ、パワー派にはそれをコントロールする精度が求められる。ヘッドスピードは容易には上がらないが、精度はクラブの進化でカバーしやすくなった。つまり、近代ゴルフでは技巧派よりもパワー派の方が恩恵をより多く受ける形と言えるだろう。

それにともない昔に比べて増えたのが、スウィングは理想的ではないが、圧倒的飛距離で勝負するパワータイプだ。

以前はゴルフクラブの性能が今に比べ低かったため、スウィングにはより理屈が求められた。つまり、飛距離のある選手でもスウィングの内容が悪いと生き残れなかったのだが(飛距離が出る分、曲がり幅も大きいため)、近代ゴルフではスウィングのエラーをゴルフクラブの性能がカバーできる範囲がかなり増え、スウィングは荒削りだが飛距離が出て、小技もそれなりという選手の生き残る可能性が上がったということである。今回のこの難しい設定のトーナメントスタッツもそれを顕著に表わしていた。

怪我の影響もあるが、あの飛距離で圧倒してきたタイガーが、自分よりも小さい選手にオーバードライブされるシーンも見られるようになった。今のアメリカツアーは普通の距離ではもうどうにもならないところまで来ている。

465ヤードのパー4を例に考えてみる。現代のトップ選手は当たり前のように320ヤード飛ばしてくる。465ヤードはアマチュアではパー5の距離である。にも関わらず、145ヤードしか残らないのだ。これは彼らのピッチングか9番アイアンだ。もはや2打目がフェアウェイからでなくとも楽々グリーンまで運べてしまう。FWキープ率がほとんどスコアと相関しない理由である。それよりもラフからのアイアンショットの精度、距離感を練習するほうがよほど大事なのだ。ゴルフのゲームはその形相を変えてしまった。

松山英樹選手以外の日本人プレーヤーが世界でなかなか活躍できない理由にしても、やはり「飛距離の格差」が占める割合が非常に高いと言える。

画像: ザ・ホンダ・クラシックを12位タイで終えたタイガー・ウッズ、復活優勝の時は近いのか?

ザ・ホンダ・クラシックを12位タイで終えたタイガー・ウッズ、復活優勝の時は近いのか?

最後に、久々に連戦したタイガーのスタッツから今後を占ってみる。以前の記事にタイガーの復帰の鍵はパー5のパフォーマンスと距離だと書いたが、そこの成績を見てみてみよう。

なんと、平均飛距離は3位と良い結果で想像以上だと言える。では、パー5のパフォーマンスはどうだろう? 8回あったパー5でのスコアは+1とはっきり言って相当悪い。プレーオフで勝ったトーマスは72ホールで5アンダー、プレーオフを入れると6アンダー、パー5バーディ率は66.67%だ。以前のタイガーは最低でも4アンダーは出してる。その差は実に5打差だ。このパー5でのスコアでも12位で終わったというのは素晴らしい。タイガーらしい粘りを感じる。ロングアイアン、FWらのショット精度が上がってくればタイガーの完全復活も近いのではないだろうか。

写真/姉崎正

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