WGCメキシコ選手権では2日目終了時点で38位。完全に“圏外”の状況から3日目に「62」、最終日は「64」と2日続けて爆発(しかも最終ホールはパー4でイーグル!)し、プレーオフにこぎ着けたJT。初優勝を挙げた2016年以来、PGA(米男子)ツアーで早くも8勝と勝ちまくっている彼の強さは、その爆発力にあるのは間違いがない。
JTの一気にスコアを伸ばす爆発力はどこから生まれるのか?「ダイナミックなスウィングから放たれる大きな飛距離も魅力ですが、彼の素晴らしいところは、ゲームの流れに乗るうまさではないでしょうか」と、米ツアーに詳しいスウィングコンサルタントの吉田洋一郎は語る。
「JTは爆発的なスコアを出す選手です。今回も3日目に9アンダー、4日目7アンダーと2日続けて好スコアを出していますが、これは、ほんの些細なきっかけ、たとえばボギーになりそうなパットが入ってパーをセーブしたとか、外れたと思ったパットが入ってバーディを獲ったなどをきっかけにしている場合が多いんです。つまり、ゲームの流れをとらえてその波に乗るのが抜群にうまい選手だと言えます」
松山英樹と最終日最終組でプレーした全米プロでも、10番ホールでカップのふちで止まったバーディパットが実に12秒後にカップインするという珍しいシーンをきっかけに、13番ではチップインバーディを奪うなど、一気にスコアを伸ばしてゲームを決めたのが印象的だ。
いわゆるひとつの“持ってる”と言われるようなゲームの巧さ。誰もが些細なきっかけを大爆発につなげられるわけではないのにもかかわらず、JTがチャンスを逃さずつかんで波に乗れているのはなぜだろうか。吉田は「パットにキモがある」という。
「トーマスが爆発に至るきっかけをなぜつかめるのか、理由のひとつがパッティングコーチであるマット・キーリンと取り組んだパッティングの向上にあります。元からよかったショットに加え、パッティングのスタッツがよくなったことで『流れをつかむ』きっかけ自体が増えたと同時に、一度つかんだ流れを離さない・逃さないことにもつながっています。そもそも、タフなコンディションのコースで1日に7つも9つもバーディが獲れるのも、パットが入るようになった証拠とも言えます」(吉田)
一見ラッキーパットに見える、その実は技術的向上に裏打ちされたパットで流れをつかみ、平均310ヤードを超える飛距離でコースをねじ伏せる。そうしてゲームの波に乗ったら、最後まで乗り切る強さを持っている。結果、7バーディ、9バーディという圧倒的な数字が後から付いてくる。
世界ランクで現在JTの上にいるのはダスティン・ジョンソンのみ。“JT”が“DJ”を倒し、世界ランク1位になる……その可能性も、現実味を帯びてきたと言って過言ではないはずだ。
写真/姉崎正