故障後初の2週連続参戦を無事に終えたタイガー・ウッズ。今週開幕するバルスパー選手権、アーノルド パーマー招待への2週連続の参戦も表明し、マスターズに向けて復活優勝の期待が高まるタイガーに残された「最後の課題」を、スイングコンサルタントの吉田洋一郎が分析する。

ヒッターからスウィンガー、そしてヒッターへ

1月のファーマーズ・インシュランス・オープンでの復帰以降、タイガーはさまざまなことを実戦の中でトライしている最中。そのため、試合ごとにスウィングに変化が見られます。なかでも、4日間を戦い抜いたザ・ホンダ・クラシックで見せたスウィングの変化は、とても大きなものでした。

2015年以前のタイガーは、ドライバーではボールに圧をかけるようにインパクトの形を作り、アイアンでは体の動きによって自在にフェースをコントロールして球を曲げる、「ヒッター」タイプのスウィングを武器に戦ってきた選手でした。

しかし「ヒッター」タイプのスウィングは、スウィングスピードが速く、出力のエネルギーが大きいと、体への負担が大きくなり故障を誘発するリスクが高くなります。かつてタイガーがひざや腰を故障したのも、そうした「ヒッター」特有の動きが原因だったと思います。

そこで復帰後は、体への負担を少なくするため、遠心力や地面の踏み込みの反動の力(地面反力)を使い、自分の体が出すエネルギー以外の「外力」を利用する動きを多く取り入れて、クラブの運動量を増やす「スウィンガー」タイプのスウィングへ大きな変更を行っていました。

そうすることで、40歳を超え、実戦から長く離れていたのにも関わらず、世界ランクの上位選手たちと比べても遜色のない飛距離を手にすることができたのです。

画像: 2015年までのタイガーはヒッター型のスウィングで飛ばしていた(写真:2015年全米オープン)

2015年までのタイガーはヒッター型のスウィングで飛ばしていた(写真:2015年全米オープン)

そんな大きな変化を見せる中、今回のザ・ホンダクラシックでのタイガーは再び「ヒッター」の要素を取り入れたスウィングをしていたのです。

開催コースのPGAナショナルは池が多く、スピン量の厳密なコントロールが要求されることもあり、みずからの体の動きでクラブをコントロールする「ノックダウンショット」を多用する場面が多く見られました。タイガーがここにきてノックダウンショットのようなヒッタータイプのスウィング要素を加えてきたことで、体・技術共に不安のない状態に仕上がってきていることがうかがえます。

最終日の12番ホールで見せた170ヤードを2メートルにつけたアイアンショットは、腕と体を同調させてフェース面の動きを抑えながら、方向性とスピン量がコントロールされた見事なショットでした。

ロングアイアンへの不安

「ヒッター」の動きはウッドのスウィングでも見られました。3日目の9番ホール、池越えのショットではスプーンで打ち出しを低くコントロールしたレーザビームのような力強い「スティンガー」を繰り出しています。

体の負担の少ない動きを取り入れつつ、ここぞの場面では全盛期のようなボールをコントロールするショットを見せたタイガーですが、唯一、ロングアイアンだけはまだ課題を残しているようです。

ミドルアイアンまではシャフトが短いため、体でクラブをコントロールする事ができますが、長くロフトの立っているロングアイアンは、さらに体の運動量を増やすかヘッドの運動量を増やす必要があります。ホンダクラシックではティーショットで何度かロングアイアンの明らかなミスショットが見られ、この点がオーガスタを攻略するうえでも一つのキーポイントになると思います。ロングアイアンのスウィングにおいてヒッター要素とスウィンガー要素のどちらを多くするのかが今後の課題になるでしょう。

画像: ザ・ホンダ・クラシックでは全盛期を思わせる「ヒッター」的動きが復活していた(写真:2018年ザ・ホンダクラシック)

ザ・ホンダ・クラシックでは全盛期を思わせる「ヒッター」的動きが復活していた(写真:2018年ザ・ホンダクラシック)

マスターズが開催されるオーガスタナショナルGCでは4番パー3と15番パー5のセカンドショットにおいて、長い番手のアイアンが必要となります。とくに15番はグリーンは横に長く、池も絡むので落としどころが限られるのでシビアなショットになります。530ヤードなのでドライバーがきちんと当たれば残りは200ヤードを切りますが、アゲンストだとロングアイアンの距離が残ります。

落とせないパー3と伸ばさなくてはならないパー5の攻略のため、ロングアイアンの精度アップがグリーンジャケット獲得の条件となるでしょう。新しいスウィング、戻ってきた切れ味のあるショット、そして戻りつつある試合勘。これがうまく合わされば、5本目のグリーンジャケットに袖を通すことは間違いないでしょう。

写真/岡沢裕行、姉崎正

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