重心の高さは最新と30年前で“ほぼ同じ”だった!?
2018年も続々とニュークラブが上市されているゴルフ界だが、進化のポイントとなるのはやはりヘッドの重心設計である。低重心、深重心、重心距離、重心角などなど、新しいクラブの紹介をするときに、“重心”という言葉を使わない日はないくらいである。
では、その“重心”、目で見ることはできるだろうか? 答えはノーである。クラブヘッドの“重心”は通常ウッドクラブならヘッドの内部に浮かぶように存在している。上下左右のつり合い(バランス)が最もとれた一点、それがヘッドの“重心点”だ。
浮かんでいる“重心点”とフェース面が直角に交わるポイントを“フェース面上の重心”などと呼んでいる。簡単にいえば、浮かんでいる“重心点”をフェースの上で見えるようにした状態である。こうすることで、重心高さが確認できるわけだ。
今回は、その“フェース面上の重心”を見ていただこうと思うが、下記の写真左が飛ぶドライバーの代名詞として根強いファンを獲得している初代グローレ(テーラーメイド/2012年発売)。右は1980年代初めに作られたパーシモン(木製)ヘッドドライバーだ。白いシールを付けたところが、測定器の上で平衡がとれた“フェース面上の重心”である。
どうだろう? メーカートークどおり、今どきドライバーは低重心になっているだろうか。こうして並べてみると、白いシールの高さはまったく同じ。どこが低いんだよ! って感じである。
それでもクラブが進化している「目に見える」理由
ここで大事なのは、まさに視点を変えること。床からではなく、ヘッドの天井(クラウン)から重心(白いシール)までの距離を見るのだ。そうしてみると、左の今どきドライバーの方がフェース上部にヒットエリアが広がっていることがわかるだろう。実はこれこそが目に見える進化なのだ。
ヘッドの天井は重たいため、フェースを大きく、天井を高くすればするほどフェース面上の重心は上に上がっていってしまう。さらにヘッド後部を重たくし、深重心にすると、それだけでもフェース面上の重心は上がってしまう。ヘッドを大型化すれば、必ずフェース面上の重心は上がってしまう。それが自然なのだ。
そこでもう一度、今どきドライバーとパーシモンの重心高さを見て欲しい。ほぼ同じである。これだけヘッドが巨大化したのに、高さが同じ。同じじゃないか! と思うところにこそ、実はものすごい開発努力があるのである。ちなみに初代グローレの場合は、第一にヘッド全体の形状で、次に天井部を薄くしたり、フェース面を薄くしたりして重量を軽くし、その重さをソールなどに持っていくことで重心を下げている。最新系のドライバーの多くがカーボンボディ、カーボンクラウンを採用しているのも、なるべく上を軽くし、重心高さをキープしたいからである。
このように普段は見えないクラブヘッドの重心を視覚的に確認してみると、クラブの進化を身近に感じることができる。フェース上部にヒットエリアが広がると安心感が増すだけでなく、そこでヒットすることでバックスピンが減少する効果がある。低重心と聞くと、どうしても床から重心までの距離を短くすることだと思ってしまうが、やっていることは重心と天井までのヒットエリアを拡大すること。言葉からイメージすることと、実際が違う。このへんがゴルフクラブの面白さであり、理解しにくいところでもあると思う。