マスターズ勝者に見られる共通点
ループターンとは、ダウンスウィングでバックスウィングの軌道よりもインサイドからクラブが下りてくる動きのこと。最近の世界ランキング、そしてマスターズにおいてループターンはかなり強い相関を示しているので詳しく紹介する。
マスターズで好成績を収めるにはドローヒッターが有利と言われ続けているが、ドローを打つ上でかなり効果的なのがこのループターンだ。現世界ランキングトップ20位のうち実に13人以上がこのループターンを使っており、最近のトーナメントでの優勝者、上位入賞者にもループターンの使い手が多く見られる。
ジム・フューリックはかなりわかりやすい例だが、ロリー・マキロイも比較的大きくループターンを使っており、タイガー・ウッズ、ダスティン・ジョンソン、ジョン・ラーム、ジョーダン・スピース、セルジオ・ガルシア、リッキー・ファウラー、ヘンリク・ステンソン、フィル・ミケルソンなどもそうだ。さらにここ4週の優勝者もすべてループターンを使っている。
ではマスターズ歴代チャンピオンはどうだろう。過去10年の勝者を調べてみる。2008年、2009年のトレバー・イメルマン、アンヘル・カブレラの2人を除き8人がループターンを使っておりその確率は実に80%で、ここ最近の8年に絞ると100%だ。
上にも書いたがジム・フューリックが分かりやすい例で先駆けでもあるが、PGAツアーではこのループターンは増え続けてきている。R160(インパクトで左腕とクラブの作る角度が160度以内になる)と超一流プレイヤーの相関(95%)ほどの強さはないが、このループターンという動きが一般ゴルファーの中では極めて稀な動きということを考慮すると、PGAツアーという舞台でレベルが上がれば上がるほど増えるループターンの有意性は、R160よりも強いとデータ的には言ってもいいレベルだ。
ループターンは飛距離、安定感ともに優秀
これほど一流に多く見られる共通する動きを無視することはできない。このループターンはかつてジャック・ニクラスが言っていた、ドローを打てることの重要性に関係してくる。ドローを安定して打つには基本的にはインパクトにむけてクラブをインサイドから入れる必要がある。
ドローを打てるということは右に打ち出し、球をつかまえるということだ。これはゴルフにおけるもっとも難しい技術の1つである。ほとんどのアマチュアゴルファーがそうであるように、フェード、スライスを打つのはドロー、フックに比べハードルが低い。なぜならカット軌道のほうが動作として簡単で、球もつかまえやすいからだ。これがほとんどのアマチュアゴルファーがカット軌道でスライス、引っかけを打っている理由である。ただ、世界のトップに残るには、これではデータ的にも理屈的にもかなり不利だということが言える。
ループターンはバックスウィングの軌道に対してダウンスウィングの軌道がインサイド、もしくはオンラインを通すことを意味する。そしてこのループターンを使うことによりインサイドからインパクトしやすくなり、力もインパクトに向けて内から外へと行きやすくなり、カット軌道になりにくくなる効果があるので、大ダメージを受けやすい引っかけも出にくくなるのだ。
このループターンは、ショットを安定させることにおいて間違いなくかなりプラスの効果をもたらすテクニックだと、私は強く推奨する。飛距離においても、安定感においても、データ、理屈の観点から、間違いなく有益なテクニックだと言える。私はゴルフのスウィングデータを取り続けて18年になるが「R160+ループターン」は近代ゴルフの1つの答えだ。
8年続くマスターズとループターンの関係、今年はどうなるだろうか。タイガー、マキロイ、バッバ・ワトソン、ミケルソン、スピース、ダスティン・ジョンソン、松山英樹、ジャスティン・トーマス、そして連覇のかかるガルシア……去年に比べチケットが高騰するほど盛り上がりを見せているマスターズを今年は誰が制するのだろうか。
写真/姉崎正