活躍選手を見抜くゲーリー・ギルクリストの眼
昨年、何人かのコーチに優勝者の予想を聞いた中で、唯一セルヒオ・ガルシアの優勝を言い当てたのがゲーリー・ギルクリストというコーチでした。ギルクリストは女子世界ランク1位のフォン・シャンシャンや、同8位のアリヤ・ジュタヌガンらを指導するトップコーチです。
それまでマスターズでの優勝がなかったガルシアを「勝っていないのが不思議なくらい。ショットは素晴らしい。ウィークポイントはパッティングだが、それも良い兆しが見えてきている」と絶賛していました。
落としどころがピンポイントに限られており、超高速で傾斜の強いガラスのグリーンを攻略するには、マスターズ直前のアイアンショットとパッティングの調子がカギになる事から、ガルシアの優勝を予想していたのです。
さらにギルクリストは昨年ブレイクしたジョン・ラームも優勝の可能性がある選手として名前を挙げていました。
「ガルシアが本命」とした上で、「ラームもとても楽しみな選手の一人。オーガスタはスピンではなく高い球でボールを止める必要があるが、ラームはそれができる選手だ。まだ若いが注目しているよ」と予想をしていました。
ラームはその時点でわずか1勝のルーキーにすぎませんでしたが、この年3勝を挙げる活躍を遂げています。
今年の本命は好調ワトソン
そんなギルクリストが今年の優勝候補に挙げたのがバッバ・ワトソン、ジョーダン・スピース、ルイ・ウーストヘイゼンの3人です。
「オーガスタはコースのレイアウトから『ドローヒッターが有利』と言われるが、一概にそうとは言えないだろう。ただドローヒッターの選手は構えたときに『嫌な感じ』はしないコースだ。レフティでフェードヒッターのワトソンもきっとそうだと思う」(ギルクリスト)
他の海外メジャーに比べて、飛距離がアドバンテージになりにくいマスターズ。ワトソンの強みは普段注目される飛距離ではなく高い球だといいます。
「速いグリーンにピンポイントに止めるには、高さを出して止めるしかない。スピンでは戻りすぎるリスクがあるからね。ワトソンは高さで止める事ができるし、さらに調整もうまくいっているようだ」(ギルクリスト)
2月にジェネシスオープンで復活優勝を果たし、直前のデルマッチプレーでも優勝をしたワトソンが調子を維持できれば、2年連続でギルクリストの予想が当たるかもしれません。
他に名前が挙がったスピースやウーストヘイゼンは、アイアンの正確性が非常に高い選手です。スピースは一昨年の大会、12番で2度池につかまる悲劇がありましたが、本来はフェース面のコントロールが抜群にうまいショットメーカーです。
ちなみに吉田の本命はダスティン・ジョンソン。昨年、万全の調整でオーガスタ入りをしながらも転倒事故を起こし、出場を取りやめた悔しさを晴らしてくれるのではないかと思っています。
ジョンソンは2015年の全米オープンで最終ホール3パットをして優勝を逃しましたが、翌年オークモントで行われた同大会では見事にリベンジを果たしました。年齢的にも円熟期を迎えつつある世界ランク1位にも注目です。
写真/姉崎正