2014年にプロテストに合格した永峰選手。同期には柏原明日架、堀琴音といった選手がいます。柏原、堀というスター選手たちが初優勝に手をかけながら果たせないなか、チャンスをものにして初優勝を遂げたのは立派の一言です。
圧倒的な飛距離があるわけではありませんが、プレーに穴がないオールラウンドプレーヤー。上田桃子選手、成田美寿々選手ら歴戦の猛者たちが最終日最終組でしのぎを削る中、ひとつ前の組でリズム良くプレーしていた姿が印象的でした。
優勝争いクライマックスの最終ホールでも、そのホールで3パットのボギーを叩いての菊地絵理香選手とのプレーオフでも、リズムが速くなることなく、同じテンポでスウィングできていました。
「同じテンポでスウィングする」。ゴルファーなら誰でもわかると思いますが、これが実に難しいんです。ましてや初優勝をかけた優勝争いのさなかとなれば、普通はリズムが早くなってしまうものです。プロは、練習場ではほとんどミスショットをしません。ミスをするのは、緊張などからくるリズムのズレが原因であることが多く、リズムを守ることはミスを防ぐことに直結します。この、大切なリズムのキープが、永峰選手はしっかりとできていました。
そんな、安定したリズムを生み出すことができていたのには、技術的な背景があります。具体的には、切り返すための予備動作(間)が、リズムを守る上で非常に効果的に作用していました。
セオリーでは、トップからの切り返しは下半身からと言われます。しかし永峰選手は、下半身から切り返すのではなく、まずヘッドが動いてから、下半身を動かしているんです。写真1左はトップの位置、右の画像は切り返し直後の写真ですが、下半身の形はほとんど変わっていないのにクラブヘッドの位置は上がっているのがわかると思います。この動きが、下半身を切り返すための予備動作(間)になっているんです。
変な言い方になりますが、この予備動作があることによって、トップの位置から“打ちにいけない”わけです。一旦ヘッドを振り出してから、ようやく下半身を動かして打つ体勢に入れる。この一瞬の“間”が、どうしても打ち気にはやる優勝争いの中で永峰選手のリズムを守っていたように思えました。また、この予備動作を行うことにより、下半身の動きとクラブが同調し、安定したドライバーショットを放つことにもつながっていました。
抜群のリズムで勝利を収めた永峰選手。今シーズン初の初優勝者となった彼女が今後ツアーの台風の目的存在になれるか、注目です。
写真/岡沢裕行