可変式ウェートの役割は、ヘッドの重心を動かすこと
今日はポピュラーなようでいて、あまり知られていないクラブの話をしてみたい。
現在、最新ドライバーの多くにいわゆる移動できるウェートが付いていて、ヒールのウェートを重たくすれば、「重心距離が短く」なってつかまりがやすく。後方のウェイトを重たくすれば「深重心」になって、ボールが上がりやすくなったりする、と言われていたりすることは周知のことだと思う。打てば確かに、そんな気もしてくるし、実際それで球筋が結構変わったりするものである。
メーカーが行う可変ウェートの説明にあるように、その目的はヘッドの重心を動かすことにある。では、実際にウェートを動かすと、どのくらい重心が動くのだろうか? 今回は、テーラーメイドの初代M1ドライバーで試してみることにした。
初代M1ドライバーのソールの前後に動くウェイトは、外して測ってみると9gだった。これを、「1.最もフェース側にした状態」、「2.最もソール後方にした状態」にセットし、それぞれの「フェース面上の重心」をとってみる。「フェース面上の重心」とはヘッドのバランスポイントを、フェース面に投影するように表したもの。先の尖った専用器具にフェースを下にしてヘッドを乗せ、手を離しても落ちずに保たれるバランスポイントを見つけてその位置をマーキングする。
さて、結果は次の写真のとおりである。フェース面にある、針先を当ててできた小さな2つのキズ。これがそれぞれのフェース面上の重心だ。「1.最もフェース側にした状態」の方がフェースの下めでバランスが取れる。つまり、「低重心」になったということだ。一時期、「前重心」にするとロースピンになると言われ、ドライバーの“フォワード(前)・ロー(低)・CG(重心)化”がブームになったが、これはこの1.のように「低重心」になれば、重心よりも上側で当てやすくなるため、そのぶんバックスピンが減る、ということなのだ。
その逆に「2.最もソール後方にした状態」のように、ヘッド後方を重たくすると、「重心は深く」なり、インパクトでフェースを上向きに当てやすくなる。これによって不足していた打ち出し角度を上げることで、キャリーを伸ばすことができるわけだ。
今、バックスピンを減らす目的で「前重心」を狙ったドライバーは激減した。それは「前重心」にすると、バックスピンは減るが、打ち出し角度が低くなるからだ。多くのゴルファーはドライバーショットで適正よりも低い角度で打ち出している。その上、さらに「前重心」にしてしまうと低いボールしか打てなくなる。これがわかっているのからこそ、メーカーでは“ロフト・アップ!いつもよりも1度以上大きなロフトを選んで!”とPRしたのだが……。12度、14度、16度といった馴染みの薄いロフトのモデルは手に取られることもなく……。いつもどおりのロフト(9度や10度)でいつもどおりに試された結果、「全然上がらない。難しいや」となって、一瞬で消え去ったわけだ。
ちなみに、「前重心」「深重心」と言葉で書けば真逆で、相当な違いがあるように感じるが、それによる重心位置の違いは写真の1と2のとおり、ほんのわずか、1ミリの範囲内だ。それでも、打てば打球は確実に変わり、すごく飛んだり、ドロップしたりするのだから、ゴルフは面白い。
ウェートによる重心の可変幅は1ミリだ。しかし、我々ゴルファーは何センチ打点ズレをしてしまうのだろうか。同じところで当てられてこその「重心可変効果」。そう考えるとゴルフは面白くも、難しいものである。