スピースとトーマスが唯一“かぶった”ギアがある
全米オープンの主役候補を考えたときに、ジョーダン・スピースとジャスティン・トーマスを選択肢から外す人はいないだろう。ジュニアゴルファー時代、お互いを親友として切磋琢磨したジョーダン・スピースとジャスティン・トーマスの関係は、ゴルフ史上最高のライバル物語となり得る。
2015年、スピースはマスターズと全米オープンを連覇。年間5勝を挙げてフェデックスカップ年間王者に輝き、世界ランク1位にまで上り詰める。プロ転向のタイミングが遅れたことでライバルの後塵を拝することになったトーマスは、しかしその年の11月にPGAツアー初優勝を挙げると、驚異的な追い上げをスタート。それから2年半の時が経った2018年6月現在、世界ランク1位の座はトーマスが占めている(記事執筆時)。
ここまで勝利数はスピースが11勝、トーマスは8勝と少ないが、2017年はスピース3勝に対しトーマスは5勝を挙げ、今年も1勝を追加している。メジャーはスピースがマスターズ、全米オープン、全英オープンのタイトルを持っているが、トーマスはスピースが唯一持っていない全米プロのタイトルを持っている。ともにアメリカの期待の若手(彼らは年齢的には十二分にまだ若手だ)である彼らにとって、ナショナルオープンのタイトルは特別なものであるのは間違いがない。
ドライバーを武器に攻めのゴルフを展開するトーマスと、絶対的な腕前を誇るパターが生命線のスピース。プレースタイルも大きく違う二人は、クラブセッティングも大きく異なる。
同じタイトリストの契約選手でありながら、ドライバーも、アイアンの大部分も、ウェッジまでもが微妙に違う。もちろん、自分にピッタリのものを選んだ結果なのだろうが、まるでライバル同士、同じ道具は使わないというポリシーをお互いに抱いているかのようだ。
そんな二人のもしかしたら唯一の共通点とも言えそうなものがある。それが、ボールだ。タイトリストのツアーボールといえば、「プロV1」と「プロV1x」で、どちらを選ぶかはプロを悩ませる大問題となっている。V1xの性能は抜群だが、V1には他には比較対象の存在しない絶妙の打感の良さがあるからだ。そして、スピースとトーマスが選んだのは「プロV1x」だ。
プロV1xを使用する理由を、スピースはこう説明する。
「ドライバーではスピンが少なく、真っすぐに飛んでくれる。そして、グリーン周りでは僕のウェッジにより多くのスピンを与えてくれる。プロV1xは、僕のパフォーマンスを良くしてくれるボールなんだ」(スピース)
「スピンを効かせたいときや力を抜いたショットを打ちたいとき、イメージ通りの結果になるとわかっている。飛びやスピン量など、すべてが正確なのはとても重要なことだよね」(トーマス)
スピースはボールに線は引かない派、トーマスは線を引く派で、細かいところは相変わらず違うものの、プロV1xへの信頼感という一点においては、なにかと食い違う二人の意見がピタリと一致している。
全米オープン最終日の最終ホール。シネコックヒルズのホールカップから勝利とともにピックアップされるのは、スピース、あるいはトーマスのプロV1xになる可能性は決して小さくない。
二人が最終日に使うボールナンバーは奇しくも同じ「1」だ。