松山英樹選手の悲願のメジャー初優勝はなるか、タイガー・ウッズの復活優勝はあるかなど、話題には事欠かない今年の全英オープン、そのティオフまで24時間を切りました。
優勝の行方はもちろんまだまったくわかりませんが、3日間コースを隅から隅まで歩き、様々な選手のプレーをチェックした今、ティショットをアイアンで打つか、ドライバーで打つかが鍵を握りそうな予感がしています。これは、ギアの進化、スウィングの進化などともリンクする話なので、少し詳しく説明したいと思います。
タイガー・ウッズが代表格ですが、全英ではティショットをアイアンで打つ戦略が有効です。カーヌスティには、バンカーにつかまらずセカンドも狙いやすい位置にボールを運べる「正解ルート」があります。そこを正確に通すため、2番アイアンなどでのライン出しショットを選択するというのが、過去から今に至る全英オープンの攻め方の基本です。
今回の全英では、この基本から逸脱した攻め方をするケースが見受けられたんです。たとえば12番ホールは500ヤードを超えるパー4ですが、松山選手、ラウンドをともにしていた宮里優作、谷原秀人両選手らは、右サイドのバンカーまで届かないように、アイアンを選択していました。セオリー通りの攻め方と言えます。
それに対し、ダスティン・ジョンソン、ジョン・ラーム、ブルックス・ケプカといった飛ばし屋たちはドライバーを選択していました。このショットが成功すると、刻んだ場合と比べ、70ヤードくらいの差がつきます。もちろん、彼らも2〜4番くらいのアイアンでのティショットを多く選択するとは思いますが、300ヤード先のバンカーをキャリーで越せるならば、ドライバーが有力な武器となるのは間違いありません。
カーヌスティのフェアウェイは広くなく、飛ばし屋がドライバーで打った場合、落としどころの幅は20ヤード程度しかありません。しかし、好天が続いたことでラフが思ったよりも密生していないこともあり、2打目をショートアイアン、あるいはウェッジで打てるのであれば、フェアウェイから5ヤード以内のラフならオッケーと割り切ることができる。そうすると、落としどころの幅は30ヤードになります。
キャリーで300ヤードを超えてくる彼らですが、幅が30ヤードあれば、そこを狙う戦略がありえます。バンカーをキャリーでクリアしてボールをグリーン近くまで寄せ、仮にラフからだとしてもそこから短いクラブで寄せる。そんな、過去の全英ではあまり見られなかった攻め方をするケースが出てきそうなのです。
このような攻め方が生まれる背景には、昨今のドライバーの低スピン化の影響があります。そして、ドライバーの低スピン化はヘッドスピードの速い選手ほど、恩恵を多く受けることができます。ヘッドスピードが速いほど、ミスしたときの曲がりの幅は大きくなりますが、ドライバーは、基本的にスピンが少なければ少ないほど、基本的には曲がり幅が少なくなるからです。
2000年頃、タイガー・ウッズが無敵だったのは、高ヘッドスピードでありながら、当時の今よりスピンが多く入るドライバーを使ってボールを自在にコントロールできる、その技術が抜きん出ていたから。その優位性は、ドライバーが曲がらなくなった今、当時に比べて薄まっています。
ラームのように20代前半の選手は、「叩いても曲がらない」ことを前提に、ゴルフを組み立てているように見えます。これは、「叩けば曲がる」ことが前提だった時代の選手とは、根底から考え方が違います。
タイガー的なボールをコントロールすることでコースを攻略する選手が勝つのか。ラーム的な曲がらないドライバーを用い、圧倒的な飛距離でコースをねじ伏せる選手が勝つのか。このあたりにも注目したいですね。