全米プロゴルフ選手権を単独2位でフィニッシュしたタイガー・ウッズ。復帰後の今シーズン、優勝争いをするシーンも多く見られたタイガー。「強いタイガーが戻ってきた!」と世界中のゴルフファンを興奮の渦の中に叩き込んでいるタイガーだが、スタッツ的には全盛期と比べてどうなのか。データ分析の専門家ゴウ・タナカがタイガーの現状を読み解いた!

タイガー・ウッズは「完全復活」と言えるのか?

全米プロゴルフ選手権を単独2位で終え、優勝まであと少しだったタイガー・ウッズ。その前のメジャー全英オープンでも結果こそ6位タイだったが最終日一時期首位に立つなど見せ場を作り、その輝きを取り戻してきたかのように思った人は多いのではないだろうか。それではスタッツ面では全盛期と比べてどうなっているのかを見ていく。

画像: ケプカに一歩及ばなかったものの、着実に完全復活に近づいているタイガー・ウッズ(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

ケプカに一歩及ばなかったものの、着実に完全復活に近づいているタイガー・ウッズ(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

今回の大会でのタイガーのフェアウェイキープ率は4日間平均で57.14%だった。6アンダーで回った最終日のフェアウェイキープ率が35.71%だったことを考えると悪くないように思える。ワールドランキングのポイントが20ポイントを超えていた(現在1位のDJが10.46)2006年のタイガーのフェアウェイキープ率は60.71%。もともとドライバーの精度が武器のプレイヤーではないので、フェアウェイキープ率は水準に戻ってきていると見てもいいのではないだろうか。

フェアウェイキープ率が35%台でパーオン率も66.67%と決して高くない中、6アンダーでまとめてくるところはタイガーらしいというか、さすがとしか言いようがない。ただ、4日目のティーショットはアイアンでさえフェアウェイキープができないショットがいくつかあったのは少し気になるところだ。

ちなみに全米プロの最終日に4アンダー以上の成績でまわったプレーヤーはタイガーを含めて8人いて、タイガー以外のプレーヤーのフェアウェイキープ率は最低でも64.29%で8人の平均は72.32%だ。タイガーは平均の半分以下のフェアウェイキープ率でその日のベストスコアをマークしたのだ。そのタイガーのリカバリー力が際立った最終日だったとも言える。

画像: 2006年のタイガーと比較して、フェアウェイキープ率は水準に戻りつつあるとゴウ・タナカ(写真は2006年のダンロップフェニックス)

2006年のタイガーと比較して、フェアウェイキープ率は水準に戻りつつあるとゴウ・タナカ(写真は2006年のダンロップフェニックス)

では、飛距離はどうだろう?

タイガーの4日間平均は306.0ヤード(全体27位)だったのに対し、優勝したブルックス・ケプカは324.1ヤード(全体2位)でその差は実に18.1ヤード。ほぼ20ヤードも差がついている。ただ、タイガー自体の平均飛距離は300ヤードを超えており、全盛期当時(306.4ヤード)と比べ遜色ない。

ただ、ツアー全体を相対的に見た場合、今大会のタイガーの飛距離は当時に比べ圧倒的に落ちたというしかないだろう。タイガーはかつて、20ヤードは他のプレイヤーをアウトドライブし、優位な立場に立っていた。今はそのタイガーの飛距離は以前のように他プレイヤーの驚異にはなっていない。

ティショットの雰囲気から見ても、ケプカがフィニッシュを決め、余力を残しバランスよく振っている感じに対し、タイガーはフィニッシュがばらつくほど目一杯振っているように見える。素振りも以前には見たことないほど大きなものになっている。そしてバランスよく振っているケプカは間違いなく更に上のギアを残しているだろう。

今大会際立ったタイガーのリカバリー力以外に、もう一つタイガーらしさを示す数値があった。それはパーオンしたときのパット数アベレージだ。4日間平均も全体4位と優秀だったが(ケプカは3位)、最終日の数値は1.33とずば抜けていた。決めるときに決めるというタイガーのスタイルを象徴するデータだ。

画像: パーオン時のパット数平均が1.33と、勝負強さを見せたタイガー(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

パーオン時のパット数平均が1.33と、勝負強さを見せたタイガー(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

それでは、私がもっとも重要視するパー5の数値だが、タイガーは4日間を通じてパー5で5つのバーディを取っている。平均スコアは4.375と高い水準と言える。ちなみに優勝したブルックス・ケプカのパー5平均スコアは4.25とタイガーを上回っている。タイガー全盛期の年間平均が4.43だったことを考えると4.375は悪くないように思えるが、優勝争いをした1大会という視点で考えると少しだけ物足りないようにも思える。

総評するとタイガーらしさが際立っていたが、らしくなさも露呈したという印象だ。タイガーらしくない、簡単なミスも少し出ており、スーパープレーもあったが、取りこぼしも目立った感じだ。そして以前のような、ほぼタイガーの独壇場にも思えた飛距離のアドバンテージは新時代ではタイガーだけの武器ではない。

以前のタイガーと同じように、パー5で飛距離を活かし、イーグル、バーディをどんどん取れるプレーヤーが増えている。全米プロで上位9人中(6位タイまで)タイガーよりも平均ボール初速が速く飛距離も出ていたプレーヤーが6人もいるのだ。昔のように世界ランキングを独走するといったことは厳しいだろう。

ただ、優勝したケプカには、スタッツ上、距離も、精度も、パーオン率も、パー5でのスコアリングも、アプローチも、パッティングも下回っていたが、バーディ数だけはケプカを1つ上回って全体2位、そして2打差まで彼を追い詰めた。このタイガーのスコアをまとめる力というのが今後世界ランキング1位に返り咲く鍵になると言えるだろう。レジェンドのメジャー優勝に大いに期待したい。

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