2年に1度行われる「ライダーカップ」が今週の9月28日から開幕。米国と欧州の12人の選手たちが国の威信をかけて戦うゴルフの祭典で、賞金はないが、この大会に選ばれることがゴルファーの誇りと名誉になっている。毎回熱狂的なギャラリーの観戦ぶりが話題となるが、その規模は、サッカーのワールドカップ、オリンピックに次いでなんと世界で3番目に観戦人口が多いスポーツ大会なのだ。
今年は初のフランス開催となるが、戦いの舞台はパリ南西部のベルサイユ宮殿に近接する「ル・ゴルフ・ナショナル」。1990年にオープンし、欧州ツアーの「フレンチオープン」が毎年開催されるほか、2024年のパリオリンピックのゴルフ競技の会場としても決定している本格的チャンピオンシップコースだ。前回は米国ミネソタ州のヘイゼルティン・ナショナルで米国チームが4大会ぶりに勝利を収めたが、1985年以降は欧州選抜の強さが目立っており、特に2000年以降は欧州6勝、米国2勝と圧倒的に欧州がリードしている。
さて、今年の見どころといえば、まずは何と言ってもタイガー・ウッズの3大会ぶりの復活だろう。2012年大会以来の出場となる彼は、過去副キャプテンとして、戦術や知識、過去の経験などをチームの優勝のために駆使してきた。しかし、今年はようやくケガの痛みからも解放され、プレーぶりも全米プロで2位に入るなどかなりの復調を見せ、最終戦では見事優勝。
世界ランクも昨年末の1199位から13位と大躍進。キャプテン推薦で選手としても選ばれた。今年の年頭にジム・フューリックから「副キャプテンとして参加してほしい」と告げられ喜んでチーム入りを果たしたものの「今年の初めのボクの目標は、チーム入りを果たし、チームを作ることだった。でも本当は、プレーしたいと思っていた。だからジムには副キャプテンではなく、選手として出場したいと話し続けてきたんだ」と内心は満足していなかったのだ。
去年の今頃は、腰の手術のリハビリでクラブを振ることすらできなかったタイガーだが、自力でのメンバー入りはすんでのところで叶わなかったものの、たった1年で堂々とキャプテン推薦をもらえる位置まで上り詰めた彼のパフォーマンスは超人的。今の成績なら、タイガーの「選手」としての出場に首をかしげる人はいないはずだ。今のタイガーにジム・フューリックキャプテンが期待すること。それは、選手としての活躍はもちろんのこと、引き続き本来の副キャプテンとしての任務だ。
「彼は過去、デービス・ラブⅢ、スティーブ・ストリッカーらとともに副キャプテンとしていろいろやってきたからこそ、チームや戦術、ペアリングなど、あらゆる知識を持ち合わせている。そして最近の若手選手たちのこともよく知っているから、若手のことはタイガーに聞けばいいと思っている。こうして副キャプテンとしてだけでなく、選手としての彼がチームにいることのアドバンテージはとても大きいんだよ」
もともとタイガーは、マーク・オメーラやフレッド・カプルス、デービス・ラブⅢ、スティーブ・ストリッかーら、自分よりも年上の選手たちと一緒に行動をともにする傾向が強かった。だが、ここ最近では、自ら若手選手たちの中に身を置いて、一緒に練習ラウンドをしたり、飛行機での移動を共にしたりと「若手になじもう」とする彼の努力が伺える。ジャスティン・トーマスやブライソン・デシャンボーはその中の筆頭格だが、今年のライダーカップでは過去見られなかった「タイガー&若手」というフレッシュなコンビが誕生することは間違いない。
一方、欧州もトミー・フリートウッドら若手や、世界ランク1位のジャスティン・ローズ、全英オープンチャンピオンのフランチェスコ・モリナリ、ヘンリク・ステンソン、セルヒオ・ガルシアなどのベテランとの混在チームとなっており、勝敗の行方は予測がつきにくい。今週末の熱い戦いに注目しよう!
【米国選抜】
キャプテン:ジム・フューリック
選手:ブルックス・ケプカ
ダスティン・ジョンソン
ジャスティン・トーマス
パトリック・リード
バッバ・ワトソン
ジョーダン・スピース
リッキー・ファウラー
ウェブ・シンプソン
*ブライソン・デシャンボー
*タイガー・ウッズ
*フィル・ミケルソン
*トニー・フィナウ
*はキャプテン推薦
【欧州選抜】
キャプテン:トーマス・ビヨーン
選手:フランチェスコ・モリナリ
ジャスティン・ローズ
ティレル・ハットン
トミー・フリートウッド
ジョン・ラーム
ロリー・マキロイ
アレックス・ノーレン
トービヨン・オルセン
*イアン・ポールター
*ヘンリク・ステンソン
*ポール・ケイシー
*セルヒオ・ガルシア
*はキャプテン推薦