成果につながらない練習から脱却する
練習は、すればするほど上達するとは限りません。ルールや基礎を覚えた後、しばらくは上達していくものの、ある程度まで来ると頭打ちになります。こうしたことは、ゴルフ以外でも思い当たることがあるのではないでしょうか。
私自身、25歳のころにゴルフを始め、以降は30年以上続けても110前後のスコアを行ったり来たりしていました。振り返れば、それなりに練習自体を楽しんではいたものの、とくに目標はなく、練習の成果・発見を振り返ることもありませんでした。
一般的に、キャリアの長さと実力が比例しないことを「才能」で片づけることが多いでしょう。しかし30年以上110前後だった私が、還暦を迎えた後の半年間で一気に80を切ったという事実は、「才能」で片づけることはできません。そもそも上達につながる練習をしていなかったということに尽きます。
少なくとも、“100前後の壁”くらいであれば、とくに才能あふれる人でなくても、練習の仕方しだいで突破できるはずです。
「核となる課題」の見極めを繰り返す
では、「成果につながる練習」とは、どんな練習でしょうか。そのカギを握るのが、「核となる課題」です。つまり「今の自分にとってもっとも重要なポイント」を見極め、それをふまえて目標を設定することが、何よりも重要なのです。
ここで注意したいことがあります。重要なのは、「目標に集中して核となる課題を発見すること」であり、「目標をクリアすること」ではないということです。目先の結果に一喜一憂して、自分が設定した目標の意味を見失わないことが肝心です。
たとえば「正しいスウィングプレーンでショットするという目標」のため、「インサイドアウトを意識」して練習するうちに、いつのまにか「ドローボールが目標」にすり替わってしまわないように気をつけてください。

「今の自分にとって最も重要なポイント」を見極めることが大事
またビジネスでは、当初掲げた目標がクリアできていないと「社内的に都合が悪い」ケースが多いのですが、まずはそうした感覚から脱却しましょう。むしろ自分で立てた仮説を検証するような気持ちで、冷静に「核となる課題」の見極めを続けていくことが、練習の質を高め、上達へとつながっていきます。この「核となる課題」は簡単には特定できません。人によって異なるうえ、上達の度合いによっても変化していくためです。
だからこそ、「核となる課題」は永続的にチェックしていく必要があります。そのために最も有効な手段が、「フィードバック」です。
「ゴルフで覚えるドラッカー」(ゴルフダイジェスト社)より *一部改変
撮影/増田保雄