ツアー30勝のレジェンド・倉本昌弘は、パットのとき、ラインを読んで構えた後で「やっぱりもっと右なんじゃないか」と出てくる自分の“心”こそが曲者だと指摘する。どんなに無心になろうとしても必ず出てくる“心”とどう向き合えばいいのか。自身の著書「本番に強くなるゴルフ」からパッティングの極意を教えてもらおう。

たとえ結果が良くても「心」に負けた自分を肯定してはならない

「心」が出てきたらミスをする。「心」が出てきてはいけないということは、実は自分が一番よくわかっているはずなのです。しかし、みなさんの中には「心」が出てきたほうがいいんじゃないか、と思っている自分もいるのではないでしょうか。

たとえば、構えた後に狙いを変えてしまうケースです。ラインを読んだときには、「カップの左ふちを狙うスライスライン」と読んだのに、構えてみたらもっと曲がるような気がした。それで「カップよりもボール1個ぶん左」に狙いを変えて打った。このとき、カップの左を抜けてしまったら、「ああ、心が邪魔してミスをした」と気づいて、「次は心に邪魔されないようにしよう」と思います。でも、ときにそのパットがカップインしてしまうこともあるわけです。

すると、あなたは「やっぱり狙いを変えてよかった」と思ってしまう。「心」が出てきてそれに負けたのに、結果的に成功する。そういう経験をすると、心が出てきたほうがいいと感じてしまうのです。でも、それはものすごく危険なことです。ミスを呼ぶ「心」、脳の学習を妨げる「心」を肯定してしまうことになるわけですから。それが結果として、上達を遅らせ、将来のミスを呼んでしまう。

画像: 「心」に負けた自分を肯定してはいけない

「心」に負けた自分を肯定してはいけない

そういう「心」なんて、出てきても仕方ない。お前が出てくる余地はないんだ、というようにしたい。でも、不安になるとその「心」が出てきて、それに頼りたくなってしまう。それに頼れば失敗するから、頼っちゃいけないと思うのだけど、不安になるとまた頼ろうとしてしまう。それが人間なのかもしれません。

「心」に負けないためには、プレショットルーティンを済ませたら、速やかに打つという練習をして、本番では最初に思ったとおり、狙ったとおりに打てたかどうかを大切にする。そして、いい意味で妥協して開き直ることも大切だと思います。

覚えておいて欲しいのですが、読みが完璧でストロークも完璧で、狙ったラインに狙ったタッチで打ち出したって100パーセントカップインするとは限らないのです。

生きている芝の上をボールが転がっている限り、ちょっとした芝の葉によってラインが変わってしまうことだってある。逆にラインを読み間違えたからって絶対外れるわけではない。打ち間違えて偶然入ることだってあるのです。みなさんも狙ってないところに狙ってない強さで打ったのに、入ってしまったという経験があるはずです。

つまり、パッティングというのはそういうものなのです。だから、どこかで妥協する。いつまでも迷っていないで、どこかに線を引いて、決めたことを実行するのです。もちろん、完璧な読み、タッチ、ストロークを目指して、確率を上げていくことは大切です。

でも、いくらよりよいと感じるラインを見つけたいからといって、最初に決めたラインを途中で変えることは、決して得策ではありません。パッティングが上手くなりたいのなら、ライン、タッチ、を決めて、アドレスに入ったら心が迷う前に速やかに打つ。そういうクセをつけるようにしてください。

「本番に強くなるゴルフ」(ゴルフダイジェスト新書)より 

撮影/岩井基剛

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