スニードの記録には「4人の試合」「18ホールの大会」も含まれている
ツアー選手権でタイガー・ウッズがマークした5年ぶりの優勝は間違いなく今年のゴルフ界のハイライトといえるだろう。
96年のプロデビュー以来積み重ねた勝ち星が『80』。サム・スニードが持つ最多勝利(82勝)まであと2勝と迫り「こういうゴルフをしていれば(スニードの記録を)抜けるかもしれない」と本人も自信をのぞかせた。
1年ちょっとで世界ランク1199位から13位へ。奇跡のカムバックを果たした42歳は来年『82』の壁を超えることができるのか? ジャック・ニクラウスの持つメジャー最多勝利(18勝/現在タイガーは14勝)に迫ることはできるか? そんな話題で持ちきりだが実は記録に関して興味深い見解をご紹介しよう。
米ゴルフワールド誌が先月「タイガーはすでにスニードの記録を抜いている」という説を発表した。
記事によると1980年代PGAツアーのコミッショナー、ディーン・ビーマン氏がスタッツ(記録)をゴルフ史の専門家に精査するよう指示したという。ところが1968年にPGAツアーとPGAオブアメリカが分裂した際、多くの資料が失われ正確な数字を割り出すことが困難に。
どこで記録の見直しはされなかったもののスニードの優勝回数に関しては疑問が呈されたという。たとえばスニードは18ホールのトーナメントで1勝、36ホールのトーナメントで3勝を挙げているが現在の規定では54ホールを消化しないと試合は成立しせずこれらの4勝は無効の可能性が。
また彼が5勝を挙げているパームビーチラウンドロビンでは出場人数が14人から15人。1946年のワールドチャンピオンシップ・オブ・ゴルフに至ってはフィールドがわずか4人。4人での試合の勝利が82勝のなかにカウントされているとしたら、その年のメジャー優勝者4人が激突するPGAグランドスラムで7勝を挙げているタイガーの勝利数は87勝になってしまう。
さらに1950年のビング・クロスビープロアマではスニードを含む4人がトップに並んだところで日没サスペンデッドに。だがプレーオフは行われず4人が揃って優勝するという珍事に相成った。
これらのデータを総合するとスニードは正式には74勝しか挙げていないことになる。
タイガーが74勝目を挙げたのは2012年のこと。ゴルフワールドの記事は「おめでとうタイガー! もう6年も前にキミはツアー記録を破っていたんだ」という言葉で締めくくられている。
ちなみにスニードが82勝目を挙げたのは53歳の誕生日の直前。今後タイガーはいったいどれくらい記録を伸ばすのか注目だ。
撮影/姉崎正