日本から最も近く、最もフィールドの厚いPGAツアー
今回のWGCはワールドランクトップ5中、4人が出場する厚いフィールドとなっています。今回の舞台となるシャーシャンインターナショナルGCはクラブハウスなどの施設から名門の雰囲気を感じるゴルフ場です。コースは全長7261ヤード、パー72で距離はありませんが、池も絡みプレッシャーがかかるレイアウトが印象的です。
中国ではゴルフ熱がそれほど高くないため、欧米のトップ選手が練習場で練習をしたり、ラウンドをしていてもそれほど注目を浴びません。上海在住5年のイギリス人コーチのサム・グリーンは「ローリー・マキロイの練習ラウンドに自分一人だけがついてまわって、そのうえ写真が撮れたよ!」と、興奮していました。WGCは世界的な大会ですが、まるでPGAツアーの平場(ひらば)の試合のように練習ラウンドを見ることができます。日本から約2時間半で行くことができる上海での試合はPGAツアーファンにとっては穴場かもしれません。
アマチュアこそマネしたいロジカルな練習
今回注目してチェックしたのは前年のPGAツアー年間王者で2017年のWGC上海ディフェンディングチャンピオンのジャスティン・ローズです。
年間王者をタイガーの優勝に完全にかき消されてしまいどこか存在感が薄いイメージのローズですが、その安定感と実力は際立っています。その強さの秘密は練習のロジカルさ。練習日にはドリルをメインにみっちり4時間練習を行っていました。
ドライビングレンジではスティックを3本差してターゲットライン、スウィングプレーン、体の動きを確認していました。コーチのショーン・フォーリーが前後左右から動画を取りながらチェックして、体の軸や足の動きをチェック。バックスウィングでの体重移動や体の傾きに関して細かく修正が入り、確認しながらスウィングを繰り返していました。
ローズはただ打つだけではなく左足を踏み込んだり、左足を一歩後ろに引いたりなどのドリルを行いながら課題を修正するために目的をもって練習をしていました。
アプローチエリアでは30ヤードの距離から基礎的なランニングアプローチとチップショットと行っていました。ここでもポールで方向性を確認しつつ、時々左手の片手打ちを入れながら基本的な技術の確認を行っていました。
周囲でジョン・ラームがランダムに場所を選んでロブショットを打っていたのは対照的な練習方法だと感じました。時にはラームのような状況に対処する練習も大事ですが、基礎技術を確認するローズのような練習はアマチュアこそ参考にしたいものです。
最後にパッティンググリーンで練習器具を使って基本的なストロークの確認を行っていました。ローズの採用するクロウグリップは右手の影響を少なくしストロークを安定させることが目的のため、左手の役割が重要になります。左手と体の動きを連動させるために左手一本でストロークを繰り返していました。
日本ツアーでも片山晋呉さんが練習器具などを使ってドリル系の練習をするのをよく目にします。ゴルファーを感覚派とロジカル派に分けるなら、ローズや片山さんはロジカル派と言えるでしょう。
昔、片山さんの合宿にお邪魔した際に「ただ球を打つのは運動だ。目的をもって行うのが練習だ」と教わりました。ローズの練習からは言葉がなくても目的や意味が伝わってきました。アマチュアの皆さんも練習場でついつい飛ばそうとドライバーばかり打ってしまうと思いますが、「運動」ではなく「練習」をするようにしたいものです。