残り距離だけでクラブを決めるのはNG
基本的にフェアウェイバンカーというのは、残り距離で番手を選ぶのではなく、状況に合わせて選ぶことが大切です。 たとえば、残り150ヤード。
いつもなら7番で打つような場合でも、球がアゴに近く、アゴにぶつかりそうだと思ったら番手を下げる必要があります。アゴが高ければ、自分がクリアできると思った番手よりさらに1番手下げて打つくらいの慎重さが欲しいのです。
逆に、残り110ヤードでいつもなら9番で打つような状況でも、グリーンの手前に池があってそれが気になるなら、多少ミスをしても確実に池を越える番手を持つか、池の手前に刻むことも考えなくてはいけません。
基本的に、池越えのショットというのは、 100パーセント池を避けられる自信と裏付けがなかったら、狙わない。もちろん、結果は別ですが、ライ、砂の硬さ、アゴの高さ、使う番手、自分の技量を考え合わせて、多少ミスをしても池に入らないという自信がないのなら、池を避けるルートを取るべきです。
また、砂が軟らかかったり、ボールがちょっと沈んでいたりするときには、いつもよりミスの許容範囲を広げることも忘れないでください。たとえば、残り130ヤード、フェアウェイから8番アイアンを打つとします。
このとき、ミスをしても左右15ヤード、手前15ヤードまでの範囲には抑えられる自信がある人でも、フェアウェイバンカーでライが悪かっ たら、左右20~25ヤード、手前30~50ヤードまでのミスまではOKというように考え、そのミスをしても、次のハザードにつかまらないような狙い方をするのです。
そして、もし、そのミスの範囲内に池があったら、手前に刻んだり、番手を上げたりすることを考える必要があるでしょう。
フェアウェイバンカーから実際に打つとき、注意しなくてはいけないのが、芝の上に比べると足元が不安定なので、フルスウィングはできないということです。
たとえば、練習場のゴムマットが濡れていたとします。そんなとき、底が平らな運動靴を履いてフルスウィングしようとしたら、足が滑って上手く打てません。だから、足元に細心の注意を払い、スピードを落としてコンパクトにスウィングするはずです。
フェアウェイバンカーも同じ。濡れたマットほど滑るわけではありませんが、自分の意識としては、濡れたマット同様に、足元が滑るのを抑えるため、いつもよりスピードを落とし、コンパクトに振る必要があるのです。
アドレスでは、足元の安定感が少し増す程度に両足を埋めて、クラブを短く持つようにします。深く埋めすぎると足が動かなくなるし、ボールが足元より高くなって打ちにくくなるので注意してください。
クラブを短く持ったぶん、ボールは体に近くなりますが、左右のボール位置は普段どおり。スウィングもいつもどおりが基本です。払うような軌道でボールを横から打つ。ボールの赤道の下に、リーディングエッジを入れていくイメージです。
どんな場所でもスウィングはひとつにしておきたい。そのためには、ボール位置も入射角度も、スタンス幅もスウィングもいつもどおりのほうがいい。実際、私はそうしているし、アマチュアの人も、そのほうがシンプルでやさしいはずです。
球が沈んでいたら、 9番以下で出すだけ
同じフェアウェイバンカーでも、球が沈んでいたり、ボールの手前の砂が盛り上がっていたら、プロでも普通には打てません。球が5分の1も埋まっていたら出すだけです。出すだけだと思ったら5番、6番は持ちません。そうかと言ってSWでは距離が出ない。 だから、プロであれば、8番くらいを使って脱出を最優先させながら距離を出していくと思います。アマチュアであれば、ヘッドスピードの速い人で8番以下、普通の人なら9番以下で脱出を優先させつつ距離を出していくのがいいでしょう。このとき、ダフリの怖い人だったら、なるべくフェアウェイが近いところを狙うようにしてください。
さらに沈んでいる場合は(ボール半分以上)目玉と同じですから、ボールの手前の砂ごと飛ばしていくしかありません。この場合、キャリーも出ませんから、横に出すことも考えてください。いずれにしても、フェアウェイバンカーからは1発で脱出することを最優先させるということだけは忘れないようにしたいものです。
「本番に強くなるゴルフ」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/岩井基剛