持つだけならば誰でもできるが“上手く持つ”となると奥が深いのがゴルフのグリップ。プロゴルファー・増田哲仁はクラブを握っていることを忘れられるような一体感が得られればベストだというが……自身の著書「これでいいの?これだけで飛ぶの?」からグリップの握り方についてご紹介。

「両手を使う」のは思った以上に難しい

コップを持ったり、本のページをめくったり、日常生活の中で片手だけで行う動作はたくさんあります。しかし、それを両手で行うと、ぎこちなくなってしまったり、素早く動けなかったりしますよね。

どんな動きでも、利き手だけでするより、両手でするほうが難しい。だからこそ、ゴルフは難しく、両手で握るグリップにおいても、「中心感覚」をとることが必要になってくるのです。

画像: 両手で握るグリップも「中心感覚」をとることが必要になると増田プロはいう

両手で握るグリップも「中心感覚」をとることが必要になると増田プロはいう

人間は、バランスをとろうとすると、両腕を個別に動かすもの。電車で揺れたときも両手を広げて、互い違いに動かすことでバランスをとろうとします。

それなのに、ゴルフでは、両手でグリップして、しかも大きく動くわけですから、故意的にバランスを崩しているようなものです。そのとき、グリップの中心感覚があれば、始動する前段階にして、すでに気持ちいいスウィングができているということになります。

まずは両手を顔の前で合わせてみよう

グリップの中心感覚は、スウィングにおけるスタート地点。指の位置や手のかぶせ方に入る前の、基本中の基本です。

両手を顔の前で合わせて合掌し、体のセンターラインでちょうど両手が重なることを感じてください。とても簡単のように感じるかもしれませんが、スウィングとなると、動きが加わるので簡単ではなくなります。

中心感覚がとれていないと、スウィング中にたちまちバランスを失ってしまいます。それは、人間には誰しも利き手があって、そちらが仕事をしすぎてしまうからです。 バランスをとるためには、日頃から左手の動作を増やしたり、右手だけで済む動作を、わざと両手でやってみるなど、非日常の動きを多く取り入れることが必要です。

たとえば、グラスの水を両手を添えて飲んでみる。そして両手でグラスを左から右へ動かしてみる。このとき右手だけに力を入れてしまうのではなく、力を抜いて左右の手を一体化させるようにします。これを続けると、次第にいつでも両手が体のセンターラインにある感じがつかめてくるはずです。

画像: 両足を揃えた状態で、 体の前でグリップする。そのとき、合掌をするように握ると、体の中心を感じやすい。クラブを下ろし再度中心感覚を感じながら、左足、右足の順でスタンスし、アドレスする

両足を揃えた状態で、 体の前でグリップする。そのとき、合掌をするように握ると、体の中心を感じやすい。クラブを下ろし再度中心感覚を感じながら、左足、右足の順でスタンスし、アドレスする

器用な人ほど上達が早いといわれますが、器用な人ほど利き手が勝ってしまう傾向にあるので、実は不器用で運動センスがないといわれている人のほうが、 中心感覚をつかみやすい場合が多いのです。

緊張すると歩くときに右腕と右足、左腕と左足が一緒に動いてしまうという、極端な人がいますよね。そういう人は、両腕を同時に動かす非日常のゴルフスウィングにもすんなり馴染めます。

普通の人が戸惑う動作が、逆に自然にできてしまうわけです。だからこそ、 ゴルフは難しいけれども、誰でも楽しむことができる素晴らしいスポーツだといえるのです。

親指の付け根からグリップに添える

「クラブは力を入れて握らない」とよくいいますが、実際には力が入るグリップでなければ、飛距離を出すことはできません。

しかし、力は「入れる」ものではなく「入る」もの。「自然に力が入る部分」を使ってグリップすればいいのです。その部分はどこか。それは指先ではなく、手のひらの中心です。親指の付け根から小指の付け根にかけての、ふくらんだ部分「手のはら」がパワーの源。この部分を意識することが大切です。

画像: 手の「はら」で握ることで、力が出せる

手の「はら」で握ることで、力が出せる

腕立て伏せをするとき、指先ではやりませんよね。フォークとナイフを持つときだって、指で操っているように思えますが、硬い肉を切るときは、やはりフォークとナイフの柄に親指の付け根をのせます。

ゴルフでも、球を飛ばそうと思ったら、手のはらをつかわなければもったいない。ですから、クラブは指先から握らず、親指の付け根からグリップに添えて、あとから指をまわして握ります。これが力の入るグリップです。

このように握ると、自然にストロンググリップになっているはずです。強いボールが出るストロンググリップは、親指の位置がどこなのかが重要なのでは なく、手のはらが使えているかどうかが大切なのです。

画像: 手の「はら」で握ると、自然なストロンググリップになる

手の「はら」で握ると、自然なストロンググリップになる

この「力が入るグリップ」なら、ゆるゆるでグリップの中心感覚を維持しながら、それでいて豪快に飛んでいくボールが打てるはずです。

グリップにも遊び心を

グリップこそ、カタチ重視ではいけません。カタチを気にしすぎると力んでしまいます。力めば、そこに血液が集中し、意識も集中し、体のそこばかりが必要以上に機能して、体全体を使ってのスウィングができなくなります。手はなるべく無意識にしてインパクトを迎える。そして、足や体全体で球を飛ばす。それが理想です。

ですから、インターロッキングやテンフィンガー、その他の変則グリップの人がいても、矯正はしません。矯正するどころか、いろいろ試してみるのもいいでしょう。身長も、指の長さも人それぞれで、クラブは体に見合ったものを 選ぶのに、グリップだけが万人一緒である必要などないのです。

クラブを握っていることを忘れられるような一体感が得られればベスト。カタチにこだわらず、いろいろな握りで球を打ってみてください。ゴルフはゲームです。グリップにだって、遊び心があっていい。

「これでいいの?これだけで飛ぶの?」(ゴルフダイジェスト新書)より

撮影/小林司

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