PGAツアーの2018-2019年シーズンはここまで3試合に出場し、優勝、7位、10位タイ。欧州ツアーでも勝利を挙げ、世界ランキングも5位と絶好調の“ゴルフの科学者”ブライソン・デシャンボー。この好調の秘密はどこから来るのか? データ分析の専門家、ゴウ・タナカが、彼の言動、データからその好調の秘密を紐解く。

デシャンボーの好調の秘密はなにか? 昨シーズンと今シーズンのスウィングを比べてみたがこれといった目に見える変化はない。では、データ面ではどうだろう? まだ3試合のみのデータなので今シーズンのデータが昨シーズンを大きく上回ることが予想されるが、まず単純に比較してみる。

画像: 2019年シーズンのスタートダッシュに成功したデシャンボー。その好調の秘密は?(写真は2018年の全英オープン 撮影/姉崎正)

2019年シーズンのスタートダッシュに成功したデシャンボー。その好調の秘密は?(写真は2018年の全英オープン 撮影/姉崎正)

ドライビングディスタンスは300.1ヤードで、昨シーズンを5.6ヤード下回っている。その代わりフェアウェイキープ率は72.09%で9.86%上昇している。パーオン率は77.31%で昨年より7.66%良くなっている。バーディ率は5.43で昨シーズン平均より1日平均1.23個もバーディーをとれている。バーディ率を上げるにおいてもっとも重要なパー5でのバーディ以上をとる確率は63.89%と驚異的で、昨年の平均よりも9.96%も上がっている。パー4でのバーディ率も6.48%上昇している。

今シーズンより導入された新しいルールに対して言及しているデシャンボーだが、とくにグリーンでピンを差したままパットできるルールを、もっともしっかりと考え、感覚ではなく理屈から有益であるということをいち早く把握し、このルール変更をうまく使っている。

では、そのパターのデータは去年と比べてどうなのだろう。ストロークゲインドパッティング(パットのスコアに対する貢献度)のスコアは0.516で去年の0.346よりも良い。ただ3試合だけのデータでのこの差はあまり大きいとは言えず、パットが入ったから調子がいいというものではないだろう。

やはり、かなり高いパーオン率を支えるアイアンのショット精度、63.89%とほぼ3回に2回バーディー以上を記録しているパー5でのパフォーマンスが好調の1番の要因と言えるだろう。

去年、一昨年のパー5でのバーディ率1位だったトミー・フリートウッドが56%台だったことを考えると現在のデシャンボーのこのパフォーマンスがどれだけ凄いか分かるだろう。パー5でのパフォーマンスが高いレベルで安定しており、他の分野も安定しているので非の打ちどころが見当たらない。デシャンボーのようなアイアンショット、パー5でのパフォーマンスを真似するのは当然無理だが、先に述べたようにデシャンボーが積極的に取り入れているピンを差したままのパッティングでカップイン率を上げるという試みは簡単に真似できるのでやってみるのはいかがだろうか。

パッティングにデシャンボーの要素を取り入れてみよう

デシャンボーはピンを差したままのパッティングすることにおいてこうコメントしている。

「ピンのスティックが太すぎてボールが入るスペースがなかったり、ピンが傾いていてボールがカップインしないような状態でない限り、ピンを差したままパットすることはインの確率を確実に高める」

そしてもうひとつデシャンボーがパッティングにおいて何度も繰り返し練習していることが、ボールを後方から見たときにボールに引いた線をラインに合わせたあと、実際に構えたときに多々起こる違和感を取り外すことだ。これは景色が変わること、効き目があることにより脳が錯覚を起こすことが原因なのだが、デシャンボーは医師に相談して効き目を確かめその錯覚が起こらない、いやそれに慣れるようになるまで何度も何度も練習している。それにより、今ではだいぶその違和感が消え、より自信をもってパッティングできているという。

画像: ターゲットに対して引いた紐、ヘッドとボールの幅のティ、定規その他……デシャンボーのパット練習はさながら実験室だ(写真は2016年のブリヂストンオープン)

ターゲットに対して引いた紐、ヘッドとボールの幅のティ、定規その他……デシャンボーのパット練習はさながら実験室だ(写真は2016年のブリヂストンオープン)

ただ、この違和感に慣れるようになるまで練習するのはアマチュアゴルファーにとってそこまで現実的なことではないだろう。線を引いてパッティングをするゴルファーなら誰もが経験しているであろうこの問題だが、簡単に解決するには後ろから合わせた線に対してアドレスし、カップを見ることなくすぐ打つことだろう。これはデータ分析から出たパッティングの極意である「早いリズムで打つ」(編集注:セットアップから3.5秒以内にパッティングするのが、パット名手の共通点)ということともリンクするし、いい効果を発揮するはずだ。

距離感を心配する人もいるだろうが、距離感を心配する必要はない。後方から距離は確認しているのだから、その情報が脳に、身体にある程度入っていると信じて頭の中に仮想として残しているカップに、セットアップされた線に対して迷わずストロークするというのが良いだろう。

線をボールにひいているゴルファーはこの方法を是非試していただきたい。最初は不安かもしれないが、慣れたら大きな効果が期待できるはずだ。パッティングに悩んでいる人は特に試してみると良いだろう。

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